昨年(2021年)に大きな話題になったのは、銀行が紙の通帳の発行に対して、手数料を徴収するようになったというニュースです。
当初はみずほ銀行や三井住友銀行などの、一部のメガバンクに限られておりましたが、同様の制度を導入する地方銀行が出てきました。
また2022年4月からは三菱UFJ銀行が紙の通帳の発行に対して、手数料を徴収する予定なので、3大メガバンクの足並みが揃ったのです。
今のところ手数料が徴収されるのは、この制度が導入された後に、新規に口座を開設した場合などに限られます。
しかし今後は手数料の制度を導入する銀行が増えるだけでなく、手数料を徴収する対象を、拡大していく可能性があるのです。
その他に一定期間(例えば2年)以上、預け入れや払い戻しがない口座に対して、手数料を徴収する銀行もあります。
一方で預金残高が一定額以上あるなどの、所定の要件を満たす場合については、ATMの利用手数料や振込手数料を、数回だけ無料にする銀行もあります。
こういった状況から考えると、2022年以降は利用する銀行を、いくつかに絞った方が良いと思うのです。
実際に利用する銀行を絞ると、資産運用のために利用できる金融商品の選択肢が、狭まってしまう可能性があります。
ただ全国のどこの銀行でも買いやすい、一般的な金融商品の中にも、良いものはあるのです。
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2022年以降は日本でもインフレが起きる可能性がある
新型コロナウイルス感染症によって景気が低迷したため、世界各国の中央銀行は次のような金融緩和を実施しました。
・ 政策金利(中央銀行が誘導目標とする金利)の引き下げ
・ 量的緩和(国債などの買い取りによる市中への資金供給)
これによって景気は回復したのですが、最近はインフレ(物価が継続的に上昇する現象)などの、マイナスの影響が問題になってきたのです。
そこで世界各国の中央銀行は、テーパリング(量的緩和の段階的な縮小)や、政策金利の引き上げを決定しました。
一方で日本においては中央銀行である日銀が、前年比で2%の物価上昇を目標にして、2013年から大規模な金融緩和を実施しておりますが、この目標を一度も達成しておりません。
そのため日本はインフレで苦しむ他の国と、状況が違うように見えたのですが、2021年11月の企業物価指数(企業間で売買される商品の価格変動を示す指標)が41年ぶりに、前年同月比で9%も上昇したのです。
企業はこの物価上昇を価格転嫁しないと、収益の減少などを招くので、日本でもインフレが起きる可能性が出てきたのです。
こういった事情があるため、2022年以降に資産運用する際には、インフレに強い金融商品を選んだ方が良いと思います。
デフレでもメリットがある変動10の個人向け国債
全国のどこの銀行でも買いやすく、インフレに強い金融商品は何であるかを考えた時に、最初に思い浮かんだのは個人向け国債です。
この個人向け国債とは個人投資家だけが購入できる、日本の国債(資金調達のために国が発行する債券)になるため、満期時の元本の支払いや、半年毎の利子の支払いを、国が責任をもって実施します。
また個人向け国債は変動10(変動金利型10年満期)、固定5(固定金利型5年満期)、固定10(固定金利型10年満期)の3種類があるのですが、変動10を選んだ方が良いのです。
その理由として変動10は実勢金利の動きに応じて、半年毎に適用利率が見直しされるため、日銀がインフレを抑えるために、政策金利の引き上げを実施したとしても、ある程度は対応できるからです。
一方でインフレが起きず、今までと同じようにデフレ(物価が継続的に下落する現象)が続いた場合にも、変動10にはメリットがあります。
その理由として変動10には、年0.05%(税引き前)という最低金利保証があるため、デフレから脱却するために日銀が、大規模な金融緩和を継続したとしても、これ以上は金利が下がらないからです。
なお変動10の満期は10年になりますが、発行から1年が経過すれば、いつでも現金に変えられるため、満期まで待たなくても良いのです。
ただ中途で現金に変えた場合には、直近2回分の各利子(税引き前)相当額×0.79685が差し引かれる点に、注意する必要があります。
外貨建ての金融商品は円安によるインフレ対策になる
日本でも新型コロナウイルス感染症が問題になり始めた2020年3月頃、「1米ドル=101円」くらいの円高を迎えました。
しかし2021年が始まった頃から円安が進み、現在は「1米ドル=115円」くらいになっております。
そのため2020年3月頃に、101円を支払えば購入できた輸入品を、今再び購入する場合、115円を支払う必要があります。
こういった円安による輸入品の値上げが、日本で物価上昇が起きている要因のひとつと考えられます。
また従来よりも円安が進んで、円の価値が低くなっているということは、外貨高(例えば米ドル高)が進んでいるのです。
そうなると外貨建ての金融商品を保有していれば、この価値が上がっているため、売却して現金化すれば、食品などの値上げによる負担増をカバーできます。
このような理由があるため、資産の一部として外貨建ての金融商品を保有することは、円安によるインフレ対策になるのです。
つみたてNISAを通じて外貨建ての金融商品を保有する
銀行で購入できる外貨建ての金融商品というと、外貨預金や外貨建て保険などを、思い浮かべる方がいるかもしれません。
これらの金融商品は全国のどこの銀行でも買いやすいのですが、手数料が高いなどの問題点があります。
そこで全国のどこの銀行でも利用しやすい、つみたてNISAを通じて、日本を除く世界各国の株式が組み入れられた、次のような投資信託を積立するのです。
・eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
・野村つみたて外国株投信
・三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド
・eMAXIS 全世界株式インデックス
もし普段利用している銀行で取り扱いがなかったら、日本を含めた世界各国の株式が組み入れられた投資信託でも構いませんが、「為替ヘッジあり」のタイプは除きます。
これらのいずれかを積立すると、米ドル建ての株式、ユーロ建ての株式、英ポンド建ての株式、加ドル建ての株式、豪ドル建ての株式など、複数の外貨建ての株式を保有することになります。
そのため外貨建ての金融商品を保有できるだけでなく、通貨と投資対象を幅広く分散できるのです。
つみたてNISAを通じて、これらの投資信託を積立すると、投資から生じた利益に対して課税されないという、大きな税制優遇があります。
またつみたてNISAを通じて積立ができるのは、金融庁が定めた基準をクリアしている、手数料の低い投資信託に限られるため、税金や手数料の面でも優れているのです。
一方でつみたてNISAには元本保証がないうえに、世界各国の中央銀行が実施するテーパリングや政策金利の引き上げによって、株価が下落する可能性があります。
これらの点に不安を感じる方は、変動10の個人向け国債に対して、多くの資金を配分し、つみたてNISAに対する資金の配分は、少なくした方が良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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