マイホームの購入は多額の資金を要するため最も大きなライフイベントといえます。
住宅取得に必要な自己資金や住宅ローンなどによるお金の調達のほか、戸建てかマンションかの選択も重要となります。
ここでは、分譲マンションを選ぶ場合に、知っておきたいルールや入居後に負担すべき管理費・修繕積立金などのコストについても述べてみます。
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共同住宅のルール
マンションなどの共同住宅は一つの敷地と建物に多くの世帯が独立して生活することになります。
暮らしやすく快適な生活を営むためには住民が守らなければならないルールが存在します。
そのルールは幾つかあります。
民法上の区分所有法のなかで区分所有建物の定義、管理組合の設立や復旧・建替えなどの手続き、および標準管理規約(国土交通省が定めた)に則って作成する管理規約(使用細則含む)などを定めた規則があります。
管理規約は、国土交通省の調べで、全国のマンションの約98%以上が備えています。
専有部分と共用部分の区分け
マンションなどの区分所有建物には、各居住者が単独で所有し、使用できるスペースの専有部分と住民が共同で使用するスペースの共用部分がありますが、土地やこの共用部分は、区分所有者が共有(物件等を共同で所有)できますが、その区分は明確に決められています。
専有部分
建物の構造を支える骨組みの柱や梁などの躯体部分(くたいぶぶん)を除く、天井、床、壁に囲まれている室内スペースを指します。
玄関扉(但し、錠や内側の塗装部分だけは専有部分)、窓枠や窓ガラス、窓枠の外側にあるルーバーなどは専有部分に含まれません。
マンション所有者の部屋に面しているバルコニー、屋上テラス、一階に面する庭などのスペース(以下バルコニー等)は、共用部分となります。
このスペースは独占的に使用できる権利(専用使用権)を有しますが、バルコニー以外は管理組合に専用使用料を払わなければなりません
共用部分
上記部分のほか、バルコニー等、エントランス、廊下、階段、ゴミ置き場、駐車場、駐輪場、宅配ロッカー、エレベーター、庭などのほか、ゲストルーム・キッズルーム・ラウンジ・フィットネススタジオ・コンビニなどの共用施設が該当します。
専有部分・共用部分の使用に関する注意点
マンションにおいては、住人が専有部分や共用部分を使用する際に守らなければならないいくつかのルールが明確になっています。
このルールは、主に入居前に配布される管理規約などによって詳細に定められています。
順守すべきルールの主な具体例
【専有部分】
例えば、部屋の間仕切り工事、風呂場やキッチン等のリフォームなどは事前に管理組合に承認申請が必要になりますので、専有部分とはいえ勝手にリフォームすることはできません。
【専用使用部分】
・バルコニー等には、エアコン室外機以外の構築物の設置、物品などの格納や放置することが禁じられています。
例えば、緊急避難時に移動が不可能な規模の花壇や植木の設置、物置の設置、および土砂・水等の搬入、多量の水を流す、バーベキューや花火などの火気の使用、喫煙など
・バルコニー等の手摺および窓枠などに洗濯物や布団等を干さない、等
【共用部分】
・廊下などの共用スペースにエアコン室外機以外の構築物の設置、物品などの格納や放置することが禁じられています
例えば、傘や傘立て、長靴・スニーカーや下駄箱、自転車、子供の三輪車、玩具、等、たとえエアコンの室外機の上であっても物品を置くことはできません
・自動車や自転車などを指定場所以外に駐車・駐輪または保管することはできません
毎月負担が発生するコスト
マンション入居後(マンションの引渡し後)は管理費・修繕積立金・駐車場代・駐輪場代などのコストが毎月掛かってきます。
これらの経費は、区分所有者が毎月管理組合に支払います。
特に、管理費や修繕積立金については、すべての入居者(区分所有者)が負担します。その算出方法については、専有部分の床面積割合に応じた額が一般的です。
管理費
管理費に含まれる経費項目は、管理人などの人件費、エレベーター、消防設備、排水管などの共用設備の定期的な保守や点検等の保守維持費・運転費、管理組合の活動資金となる運営費、ごみ処理、清掃、消毒、植木の剪定等に関わる費用、共用スペースの水道光熱費など、共用部分に関わる費用ですが、多くの経費項目は管理会社に業務を委託している部分です。
修繕積立金
これは、マンションの共用部分の修繕・維持管理を通して物件の資産価値を維持するために区分所有者が毎月一定額を積立てます。
このうち、規模の大きな修繕工事の主なものは、外壁や鉄製の箇所の塗装工事、屋根上や床の防水工事などが、一般的に10~15年毎に実施されます。
また、耐震基準に満たない中古マンションの場合は、耐震改修工事が行われます。
大規模な修繕には、一度に多額の費用がかかるため、ほとんどの管理組合が長期修繕計画(計画期間は30年以上、見直し時期は5年毎が最も多い)を作成しています。
マンションの建替え
築年数の古い老朽化したマンションの建替えについては、修繕積立金からの充当は原則として認められてないので、その費用は各区分所有者の負担になります。
築30年以上の中古マンションを購入する場合は、この事も考慮しておく必要があります。
その一方では、上記工事の他、配管設備などの修繕や保守管理を適切かつ計画的に実施していれば、100年以上は建替えの必要がないとも言われています。
建替えは区分所有者全員で組織した管理組合が集会を開催し、特別決議を行います。
この決議項目においては、区分所有者(2室所有しても1人)および議決権(区分所有者が保有する専有部分の床面積割合に応じて持つ権利)の各5分4以上の賛成による決議が必要です。
共用部分の利用や改良工事、規約の設定・変更・廃止、建物の復旧などの決議項目は、その重要度に応じて決議の基準が異なります。
マンション購入後に負担するコスト
マンション特有のコストについて触れてみます。
国土交通省(平成30年)による管理費と修繕積立金に関する調査によると、管理費の月額平均は約1万5,900円(駐車場使用料等からの充当額(約5,000円)を含む)でした。
一方、修繕積立金の月額平均は約1万2,200円(駐車場使用料等からの充当額(約1,000円)を含む)でした。
長期修繕計画に基づいた積立は、完成年次の新しいマンションほど段階増額方式が採用されており、そのタイミングも5年毎を目処に定期的に見直されます。
この費用は、段階的に増えていくのが一般的です。
その他の費用については、マンションの立地・規模・専有面積・共用設備の豪華さやサービスの充実度合などの条件によっても異なるので、あくまでも目安ですが、
・ 駐車場代:都市部:月額2 ~ 5万円、地方:月額2,000円~5,000円
・ 駐輪場代:月額100円 ~ 500円
・ 固定資産税・都市計画税:年額15万円前後
・ 火災保険:戸建て(木造)のおよそ半額の年額3,000円~1万円
・ インターネット使用料:月額1,000円前後
などですが、住宅ローンを組んでマンションを購入する場合、特に管理費と修繕積立金は、ローンの一部と捉え資金計画を立てて、その額を見込んでおくことも必要でしょう。
マンションは、一般的に鉄筋コンクリート造りのため、耐震性、断熱性、耐火性、防音性などの点で優れているだけでなく、防災設備やセキュリティの完備、冬の時期の暖かさ(部屋の位置によって多少異なる)などの利点も多くあります。
その反面、管理規約という細かなルールの順守が求められる他、すべての区分所有者が管理組合の役員(輪番制が多い)を務めることなど、生活面での自由度という点においては、一戸建てに劣る部分もあることを知っておいた方が良さそうです。(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)