病気やケガで仕事を休まざるを得ない時に、助かる傷病手当金。
この傷病手当金が今年の1月1日からもらいやすくなりました。
治療と仕事の両立の観点から、より柔軟な所得の保障ができるよう「健康保険法」が改正されたのです。
この改正により、傷病手当金の支給期間が通算されるようになりました。
期間の通算化についてご紹介します。
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傷病手当金とは
仕事中や通勤途上のケガや病気は、労災保険の対象となりますが、それ以外の理由によって仕事を休んだ場合は、健康保険の傷病手当金の対象となります。
ただし、仕事を休んだ日から起算して3日を経過した日から(実質休んだ日から4日目)傷病手当金が健康保険から支給されます。
この3日間は待機期間と呼ばれ、土日も日数に数えられますが、連続していることが条件です。
傷病手当金は、同一の病気やケガに関して最長1年6か月を超えない期間支給されます。
ここで、注意してほしいのは、同一です。
違う病気やけがであれば、新たにカウントされるのです。
傷病手当金の支給額は、1日につき直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額です。
この金額が休業した日単位で支給されます。
標準報酬月額とは、毎月の社会保険料を計算するときの金額でほぼお給料と同じになります。
計算例)標準報酬月額(お給料約30万円) 30万円
30万円 × 1/30 = 1万円 1万円 × 2/3 =約6,666円
傷病手当金には、税金はかかりませんので、そのままの金額を受給できます。
傷病手当金の継続給付について
会社を退職したら、加入していた健康保険の資格を喪失します。
ただし、退職後も今まで加入していた健康保険の継続を申し出ることで、任意継続被保険者として最長2年間利用することができます。
任意継続被保険者になった場合は、いくら病気やケガをしても傷病手当金の対象とはなりません。
しかし、退職前から仕事を休職していて傷病手当金を受給していた時は、任意継続被保険者として健康保険を継続することで、退職後も傷病手当金を受け続けることができます。
ただし、今までは会社が健康保険に対して傷病手当金の申請をしていましたが、自分で行うことになりますし、保険料の会社負担がなくなるので、全額自己負担となります。
令和4年1月1日からの傷病手当金
法律が改正されて大きく変わったことは、傷病手当金の支給期間です。
今までは、支給開始から1年6か月たつと支給が停止されました。
ところが、今回の改正で、傷病手当金の支給期間が支給開始日から通算して1年6か月に達する日までが対象となりました。
令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます。
下記の図が今回改正となった傷病手当金の支給期間の考え方の図となります。
≪画像元:厚生労働省(pdf)≫
今までは、傷病手当金の支給開始日から途中で仕事に復帰しても1年6か月たつと不支給となりました。
ずっと休んでいれば1年6か月分の傷病手当金がもらえますが、途中で復帰するとその期間も含めて支給期間が計算されてしまうのです。
そこで、支給期間中に途中で仕事に復帰するなど支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して、1年6か月を超えても、繰り越して支給可能になりました。
つまり、丸々1年6か月が支給対象となるのです。
近年は、ガンや精神疾患等治療が長くかかる病気も多くなり、体調によっては短期間での休職を繰り返すことになります。
一般的にいろいろな病気にかかるよりも同一の病気で治療を続ける可能性のほうが高いので、今回の改正は、時流にあった改正内容と言えるでしょう。
現在、傷病手当金を受給している場合は
それでは、今現在傷病手当金を受給している場合は、この改正の対象となるのでしょうか。
令和3年12月31日の時点で支給開始日から起算して1年6か月を経過していない傷病手当金(令和2年7月2日以降に支給が開始された傷病手当金)が対象となります。
休職期間と就業規則
私傷病による会社の休職期間は、あらかじめ就業規則で決められています。
3か月とか半年とか会社によって異なります。
この休職期間を過ぎると、会社を辞めたくなくても辞めざるを得ず、これを自然退職と言います。
この休職期間の定めがあるため、いつまでも会社を休むわけにはいかないのが、現状です。
だから休職期間満了前に職場に復帰し、少し働いてまた休むということを繰り返しているわけです。
この就業規則の休職期間ですが、現在多くの会社が通算する内容にしていますので、何回も職場復帰した場合、通算されて休職期間満了になってしまい退職になりますので、注意をしてください。
まとめ
病気やけがで働けなくなると給与がもらえずに生活が大変です。
その期間の社会保障として健康保険の傷病手当金があります。
今回の改正で、丸々1年6か月分が支給させることになりましたので、治療に時間がかかる病気やケガをした場合は、とても助かることでしょう。
ただし、「傷病手当金受給中=休職中」ですので、会社の就業規則の休業規程を確認してどれだけ休んだら自然退職となるのか、休職と復帰を繰り返した場合の通算規程はどうなっているのか、きちんと覚えておきましょう。執筆者:特定社会保険労務士、1級FP技能士 菅田 芳恵)
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