住宅ローンを借りるあれば、検討するのが「住宅ローン控除」です。
国土交通省の発表によると、新築物件では9割近くの方が利用しています。
現在は年末借入残高の1%を所得税、住民税から控除する仕組みですが、近い将来に利子補給の形式に(最大1%まで)となりそうです。
現在のシステムは、
・ 1%住宅ローン金利 → 1%控除 = 金利負担なし
・ 1.5%住宅ローン金利 → 1%控除 = 0.5%自己負担
・ 0.4%住宅ローン金利 → 1%控除 = 0.6%収入
今後は以下のようになります。
現在は1%以下の住宅ローンを契約しても1%の控除が受けられましたが、今後は実際に支払った住宅ローンの利息が上限となります。
いわゆる「逆さや」はできなくなります。
時期は不明ですが、近い将来変更になると思われます。
条件が変わる中でどのような住宅ローンがおすすめか、考察します。
控除率改正の経緯
住宅ローン控除は、住宅産業の活性化を通して経済の浮揚効果をはかるための政策です。
住宅産業は国内最大の産業であり、裾が広く経済効果が期待できます。
住宅購入のハードルを下げることにより、購入者の増加を目的としていました。
会計検査院の平成30年度決算検査報告では、以下の3点が指摘されています。
(1) 全体の78.1%が1%以下で住宅ローンを借りている
(2) 住宅ローンを借りる必要がないのに、控除目的のため借入を行っている
(3) 住宅ローン控除が終わるまで繰り上げ返済をしない
会計検査院は、住宅取得を後押しする政策として、控除利用者に対して過剰に優遇的な制度になっていると指摘しているようです。
それらを踏まえ、自民党と公明党が連名で発表した令和3年度税制改正大綱があります。
上記の指摘を踏まえ、1%を上限に支払利息額の控除額を設定することなどを、令和4年度税制改正において見直すとされています。
もし0.4%の住宅ローン金利を選択したら、控除率も0.4%となります。
今後は各金融機関から、金利1%の商品が横並びしそうです。
今後の住宅ローンの選び方
利子補給に近い形態に移行した場合、
が、選択の基準になります。
住宅ローン控除が13年(消費税増税前は10年)なので、その期間を1%の利息に固定すると思われます。
金融機関にとって住宅ローンの宣伝戦略は、いかに利息を低く見せるかでした。
住宅ローンの宣伝広告を見ると、冒頭に低い利息を大きく掲載し、小さく保証料等を乗せる戦略です。
今後は、今まで副次的に見せてきた条件や諸サービスを、大きく宣伝するようになるでしょう。
筆者が想定するサービス5つを紹介します。
現在の住宅ローンに付随するサービスもあれば、筆者が実務の現場から想定するサービスもあります。
(1) 2段階優遇金利型
13年(10年)の期間固定が終了した後、金利の再設定が行われます。
その際に店頭金利に優遇金利を除して実効金利が設定されます。
この優遇金利を、さらに厚遇するサービスです。
10年後に再度、10年の期間固定で厚遇金利だと、合計20年より金利優遇を利用できます。
(2) 団体信用生命保険(団信)の優遇
通常の団信は契約者の死亡や高度障害状態時に、借入金全額を返済する保険です。
ここに特約を付加することが考えられます。
がん、傷病、3大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)、7大疾病(左記に高血圧性疾患、糖尿病、肝硬変、慢性腎不全を追加)に罹患した際にも、保険が返済するサービスです。
(3) 事務手数料や保証料の免除
住宅ローン契約に対する費用に当たる、事務手数料や保証料を免除や減免するサービスです。
(4) 繰り上げ返済手数料等の免除
繰り上げ返済手数料や、ローン残高表発行等の事務手数料の免除、関連業務の相談(建物に対する保険や修理など)を無料で利用できるサービスです。
(5) 登記を司法書士に依頼する際の手数料の負担
金融機関によっては、住宅ローンの契約や実行の際に必要な登記について(登記権利者)、金融機関提携の司法書士へ委託を義務付ける場合があります。
この費用を免除するサービスです。
家族のライフプランや加入中の保険と照らし合わせて選ぶ
上記のサービスは、金融機関の熾烈な顧客獲得競争から生まれてきたものです。
これらが「付加価値」として提案されてくると思われます。
これらのサービスを適切に利用するためには、家族のライフプランの確認が必要です。
不必要なサービス、すでに加入している保険と2重加入では、意味がありません。
例えば、
・ 全期間固定金利を選びたいのであれば、2段階優遇金利はいらない
・ 将来繰り上げ返済をせず、投資資金に充てるのであれば、繰り上げ手数料の必要はない
等です。
今後は、金利よりこれらサービスを選ぶことになります。(執筆者:金 弘碩)