不動産投資を検討するうえで、不動産の収益性を示すキャップレートについてきちんと理解しておく必要があります。そこで本コラムでは、キャップレートとはなにか、表面利回り・実質利回りの違い、不動産投資におけるキャップレートの考え方を解説します。不動産投資を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
キャップレートとは
キャップレート(Capitalization Rate)とは、不動産投資をする際の不動産価格を算出する指標で「還元利回り」や「期待利回り」と呼ばれます。「不動産の資産価値は収益性にある」と考え、収益性を示す指標です。
キャップレートには「NOIベース」と「NCFベース」の2種類があり、一般的にはNOIキャップレートを使います。キャップレートは立地や不動産の種類(オフィスビル・ワンルームマンションなど)によって変わり、一般的な相場は賃貸用住宅で5〜8%、事業用不動産で7〜10%程度といわれます。中古よりも新築物件、地方よりも都心部になるほど低くなる傾向があります。
「NOIキャップレート」とは
NOIキャップレートとは「Net Operating Income」の略語で、収入(賃料)から経費のみを差し引いたものを不動産価格で割り返したものです。
計算式:NOIキャップレート = (年間の家賃収入-経費) ÷ 不動産価格
経費とは水道光熱費や税金(固定資産税等)、損害保険料や管理費用などの不動産の運営に関わる各費用であり、支払金利や減価償却費などの間接的な費用は含まれません。
例えば、「不動産価格2,000万円、収入96万円(家賃8万円/月)、支出12万円(経費1万円/月)」の場合、「(96万円-12万円)÷2,000万円」でNOIキャップレートは4.2%となります。
「NCFキャップレート」とは
NCFキャップレートとは「Net Cash Flow」の略語で、不動産投資におけるキャッシュフローに着目したキャップレートです。
計算式:NCFキャップレート = {(年間の家賃収入+礼金等)-(経費+修繕積立金等) }÷ 不動産価格
NOIベースとほぼ同じ計算方法ですが、収入に礼金等などの「その他の収入」を含め、支出に修繕積立金などの資本的な支出も含める点が異なります。例えば、同じ条件に礼金等と修繕積立金を加えて計算してみます。「不動産価格2,000万円、収入104万円(家賃8万円/月、礼金8万円)、支出24万円(経費1万円/月、修繕など1万円/月)」の場合、「{(104万円+8万円)-(12万円+12万円)}÷2,000万円」でNCFキャップレートは4.0%となります。
修繕費は、現状回復費の負担分や15~20年に1回程度の大規模修繕なども含んで計算するかは投資家の判断になります。また、礼金においてもいくらに金額を設定するかによって計算結果は異なります。必ず発生する費用や経費のみを考慮する場合はNOIキャップレートを用いて計算しますが、より詳細な収益性を判断するにはNCFキャップレートを用います。
キャップレートと表面利回り・実質利回りの違い
「表面利回り」は不動産の総収入に対する収益性を表した指標で、「実質利回り」は実際の運営コストや空室率を考慮した収益性を表した指標です。キャップレートは物件価値を評価する指標ですが、表面利回りや実質利回りはより実態に即した収益性に着目している点で異なります。
- 表面利回り = 年間の満室での家賃収入 ÷ 不動産価格
- 実質利回り = (家賃収入 - 諸経費) ÷ (不動産価格 + 購入時諸費用)
なお、表面利回りは運営費用や空室損失などが考慮されていない点に注意が必要ですが、簡易的に計算できるため一般的に物件購入時の資料には表面利回りが記載されています。以下のコラムで不動産における利回りの種類や目安などについて詳しく解説しています。
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キャップレートは高い方がいいわけではない
キャップレートは前述のように物件の収益性を示す指標ですが、キャップレートは高い方がいいわけというではありません。ここではその理由を5つ紹介します。
- 理由①:キャップレートが低くても安定している場合がある
- 理由②:家賃が高く賃借人が変わると期待収益を得られなくなる場合がある
- 理由③:不動産自体の価格が安い場合もキャップレートは高くなる
- 理由④:キャップレートが低くてもキャピタルゲインが期待できる
- 理由⑤:魅力的な物件はキャップレートが低くなりやすい
キャップレートが高い場合はその理由を把握したうえで、その地域のニーズや周辺物件との関係性など総合的に考慮しましょう。
理由①:キャップレートが低くても安定している場合がある
キャップレートは不動産価格で収益力を割り返した指標であるため、不動産価格が高い場合や家賃(収入)が低い場合には低い値となります。そのため、単純にキャップレートの高低のみに着目してしまうと、駅近など不動産価格が高くても空室率が低く安定した物件を見逃してしまうことになります。
理由②:家賃が高く賃借人が変わると期待収益を得られなくなる場合がある
キャップレートは家賃が高い場合に高くなるため、相場よりも高い家賃設定となっている場合、賃借人が入れ替わり新しい賃借人が相場賃料で入居すると想定していた期待収益を得られないことがあります。また、逆に相場よりも低い家賃設定となっている場合には、賃借人が入れ替わればより高い賃料に設定できる可能性もありますが、安価な家賃設定だと入居者の入れ替わりは発生しづらくなる可能性もあります。家賃設定が適切な水準であるかを事前に確認しましょう。
理由③:不動産購入価格が安い場合もキャップレートは高くなる
郊外の物件や築古物件などは不動産価格自体が比較的安いため、キャップレートが高くなる傾向にあります。築古物件では、一般的に使われるNOIキャップレートに含まれない修繕費が他の物件に比べて余計に発生してしまい収益性が低くなります。また、郊外の物件は都心と比較すると空室発生や家賃下落のリスクが高くなります。
理由④:キャップレートが低くてもキャピタルゲインが期待できる
不動産投資ではインカムゲインとキャピタルゲインを考えることが重要です。インカムゲインは投資物件から得られる家賃収入等の定期的に得られる収入を指し、キャピタルゲインは投資物件を売却する際に得られる収入を指します。
不動産価格が高いほどキャップレートは低くなるので、実際に郊外よりも都心部の人気の高いエリアの物件はキャップレートが低くなる傾向にあります。そのため、キャップレートが低くてもニーズの高い物件であるために高額売却によるキャピタルゲインを期待できることがあります。
理由⑤:魅力的な物件はキャップレートが低くなりやすい
築年数が浅い物件や好立地の物件のような魅力的な物件は市場での競争も激しくなるので、物件価格が高くなります。そのため前述のようにキャップレートが低くなることがありますが、空室率が少ない安定的な収益を生み出し、売却時のキャピタルゲインも期待できる場合があります。
キャップレートの調べ方
キャップレートを調べる方法は主に次の3つの方法があります。
- 不動産の収入・支出明細から計算
- 類似物件から計算
- キャップレートの公開サイトを活用して計算
不動産の収入・支出明細から計算
キャップレートは不動産の家賃収入と支出の金額が事前に分かれば計算できます。日本最大規模の不動産鑑定・コンサルティング機関である一般財団法人日本不動産研究所の不動産投資家調査では、各地域のキャップレートの相場が公開されているため、計算結果と相場感を比較することもできます。また、不動産鑑定士に依頼することで算出をしてもらうことも可能です。
類似物件から計算
購入物件の家賃収入や支出の金額がわからない場合は、条件が近い類似物件の取引価格と家賃を調べて自身で計算することもできます。具体的な調べ方として、物件の取引価格は国土交通省のWEBサイト「不動産情報ライブラリ」、家賃は賃貸物件検索サイトから調べることができます。なお類似物件を選ぶ際は、立地や築年数、駅までの距離、間取り等できるだけ近い条件で計算し、あくまで参考程度として考えましょう。
キャップレートの公開サイトを活用して計算
キャップレートを公表しているサイトからその場所のキャップレートを調べることが可能です。たとえば「CaprateMap」というサイトでは、マップ上で賃料やキャップレート等、過去からの推移を確認できます。しかし、検討している物件とまったく同一の条件で運用されたわけではないので、地域環境の変化や時期に応じた補正が必要です。
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