不動産投資を考えている際に「不動産担保ローン」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。不動産担保ローンとは、その名称の通り不動産を担保にして融資を受けることができるローンであり、不動産投資ローンもこの一種です。
そこで本コラムでは、不動産担保ローンのメリットとデメリット、活用するケース、審査基準や利用の流れを解説します。不動産投資を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
不動産担保ローンとは
不動産担保ローンとは土地、住宅、自動車等の不動産を担保にして資金を借りるローンです。所有する不動産が金融機関の担保とされ、融資を返済できない場合には金融機関は担保となった不動産を差し押さえて債務を回収します。担保にする不動産は自分名義以外にも家族名義または法人名義でも可能な場合もあります。
なお、住宅ローンや不動産投資ローンは不動産担保ローンの一種です。不動産投資ローンについては以下のコラムで詳しく解説しています。
【関連記事】不動産投資ローンとは|組む理由と注意点、融資で重視される項目を解説
不動産担保ローンのメリット4選
ここでは、不動産担保ローンを利用するメリットを解説します。
- 高額の借り入れがしやすい
- 資金使途が自由
- 金利を低く抑えられる
- 借入期間が長い
高額の借り入れがしやすい
不動産担保ローンは融資限度額が高くなるケースが多いです。不動産の評価額や個人の属性(借入状況や延滞履歴等)によって異なりますが、物件価格の7割程度が一般的な融資限度額です。例えば3,000万円の価値がある不動産の融資限度額は2,100万円程度と高額な借り入れができることになります。
なお、カードローンや個人向けビジネスローンなどの無担保ローンでは借入限度額は1,000万円程度で設定されているところが多いですが、実際には個人の属性を考慮して設定するため10~500万円程度が一般的です。また、不動産投資では基本的に利用できないローンです。
資金使途が自由
不動産担保ローンは資金をどのような目的で利用するかを金融機関に詳細に報告する必要はなく、資金使途が自由なことが多いです。不動産の購入のみを目的としたローンではなく、不動産の購入や改築、あるいは急な医療費などさまざまな目的に利用することができます。必要な資金を手軽に自由に活用することができるため、経済的な余裕を持って計画を立てることができます。
金利を低く抑えられる
不動産担保ローンは不動産を担保として提供するため、金利が比較的低い水準で設定されることが一般的です。不動産は他の資産と比較して価値が比較的安定しているといわれており、金融機関はリスクを最小限に抑えることができるためです。金利を低く抑えることで返済額を少なくすることができ、長期的な負担を最小限に抑えながら、資金を有効活用することができます。
借入期間が長い
借入期間が長く設定されることが多いことも不動産担保ローンのメリットです。無担保ローンでは一般的に7~10年程度に設定されますが、不動産担保ローンでは担保物件の耐用年数に合わせて数年から数十年に及ぶ場合が一般的です。
借入期間が長くなることで月々の返済額を抑えることができるため、次の不動産購入や急な支払いにも対応する余裕を生むことができます。さらに、金融機関としても借入期間が長いとリスクを長期間にわたって分散することができるため、より有利な融資条件を引き出しやすくなることがあります。
不動産担保ローンのデメリット3選
不動産担保ローンを利用するメリットを解説しました。次に、不動産担保ローンを利用する場合のデメリットを解説します。
- 担保を失うリスクがある
- 借り入れまでに時間がかかる
- 手数料がかかる
担保を失うリスクがある
不動産担保ローンでは返済を滞納したり、契約条件に違反したりした場合にその不動産は差し押さえられ、競売等で売却されてしまう可能性があります。投資用不動産や自宅を担保にしていた場合、その損失は膨大なものになる可能性があります。そのため、不動産担保ローンを利用する際には、返済計画を十分に立て、ローン契約条件を遵守することが重要です。
借り入れまでに時間がかかる
不動産担保ローンは高額の借り入れができるため、申請から融資を受けるまでには時間がかかるケースが多いです。融資を受ける際には審査や担保物件の査定など複数の審査があり、特に担保となる不動産の評価や法的手続きは時間を要し、場合によっては数週間かかることもあります。そのため、急な出費に対応する場合には不動産担保ローンは不利となるため、時間的な余裕を持って計画を立てて借り入れすることが重要です。
手数料がかかる
不動産担保ローンは事務手数料や不動産調査費用、登記費用などの費用がかかり、融資金額の1~3%の追加費用がかかることが一般的です。例えば借入金額が1,000万円の場合では10~30万円程度かかります。そのため、低金利の借り入れができたとしても結果的に支払総額が大きくなってしまうこともあります。
不動産担保ローンを活用するケース
不動産担保ローンを活用するケースは以下のような場合です。
- 無担保での融資が受けられない場合
- 毎月の返済負担が重いが、無担保での長期ローンへの借り換えができない場合
- 住宅ローンが組めない場合
- 不動産を購入したいが、年収制限や借入枠などで銀行の条件に合わない場合
- 不動産売却までのつなぎ資金が欲しい場合
不動産担保ローンは不動産購入時以外でも利用が可能です。そのため、不動産購入以外のタイミングで資金が必要な場合や各種ローンを借りられない場合に検討することが一般的です。なお、すでにローンなどの担保として抵当権が設定されている不動産については「一番抵当権」が設定されているため、新たに担保設定して不動産担保ローンの借り入れはできないことが多い点には注意が必要です。
不動産担保ローンの審査基準、利用の流れや書類
ここまで不動産担保ローンのメリットやデメリットを解説しました。ここでは、実際に不動産担保ローンを利用する際の審査基準や流れを解説します。
不動産担保ローンの審査基準
不動産担保ローンの審査は物件の属性と個人の属性から総合的に判断されます。まずは担保となる不動産の市場価値や将来的な収益性が慎重に査定されます。次に個人の属性を審査され、収入や過去の返済状況、申込人の年齢、ほかの金融機関からの借入状況などから信用力が査定されます。
不動産担保ローンの利用の流れ
不動産担保ローンを利用するときの基本的な流れは、以下の通りです。
- 【申込者→金融機関】相談・仮申込を実施
- 【金融機関】仮審査を実施
- 【金融機関→申込者】仮審査通過の連絡
- 【申込者→金融機関】本申込(書類等の提出)
- 【金融機関】本審査を実施
- 【金融機関→申込者】審査結果・条件の連絡
- 【申込者→金融機関】契約手続き
- 【金融機関】融資の実行
まずは、金融機関のwebサイトなどから仮審査を申し込みます。仮審査は数日間かかる場合が多く、仮審査に通過したら申込書に必要書類を添えて本申込を行います。本審査では勤務状況の確認、担保物件の現地調査等が行われるため数週間は見ておきましょう。本審査通過後は契約手続きを行い、融資実行という流れです。
不動産担保ローンの申込に必要な書類
前述の仮審査時点ではwebサイト上での簡易な方法での申し込みによるものが多く、本申込では各種書類が必要となります。必要な種類は主に以下の通りです。
- 申込書・同意書
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、在留カード等)
- 住民票の写し
- 印鑑証明書
- 収入* 納税状況を示す書類
- 金融資産を確認できるもの(預貯金、有価証券、生命保険等)
- 担保にする不動産の関係書類
- ほかの借り入れの状況が分かる書類 等
必要書類は金融機関等によって異なり、追加で書類提出を依頼される場合もあります。
不動産投資ローンや住宅ローンも不動産担保ローンに含まれる
不動産担保ローンは所有している家や土地を担保にして、不動産購入に限らず資金を借り入れるものです。そのため、同じように不動産を担保とする不動産投資ローンや住宅ローンとの違いが気になっている人も多いのでしょうか。ここでは、不動産担保ローンと不動産投資ローン、住宅ローンとの違いを解説します。
不動産担保ローンと不動産投資ローンの違い
不動産投資ローンも不動産を担保にする有担保ローンですが、資金用途は投資用不動産の購入に限定されます。購入する不動産が担保になります。
投資用不動産を購入する際に不動産投資ローンではなく不動産担保ローンを利用するケースは以下のような場合です。
- 賃貸用不動産のリフォーム資金を借りる場合
- 不動産投資ローンの審査に落ちてしまった場合
不動産担保ローンは原則として生活資金や事業資金等にも自由に利用できます。購入予定の物件以外の不動産を担保とすることで不動産投資ローンの融資限度額以上の物件を購入する際にも活用できる場合があります。
不動産担保ローンと住宅ローンの違い
住宅ローンも不動産を担保にする有担保ローンですが、資金用途は居住用の不動産購入に限定されます。購入する自宅不動産を担保に借り入れを行うローンです。
一般的には住宅を購入する際は住宅ローンで購入することが多く、不動産担保ローンを利用するケースはほとんどありません。しかし、以下のような場合で不動産担保ローンを活用することがあります。
- 相続税の支払いなど住宅購入以外で大きな出費が発生した場合
- 住宅ローンの審査で落ちてしまった場合
不動産担保ローンは自由に使途を決めて借りることができるために急な出費等で活用ができます。また、購入予定の物件以外の不動産を担保とすることで住宅ローンの審査で落ちてしまっても借りられる場合があります。
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