不動産投資ローンを組む場合、借入先にはどのような種類があり、それぞれの金利相場はどれぐらいなのかといったことをあらかじめ知っておくことが大切です。そこで本コラムでは、借入先別の金利相場を紹介するとともに、固定金利・変動金利についてメリット・デメリットも含めて詳しく解説します。低金利で不動産投資ローンを組むコツにも触れていくので、不動産投資でローンを組むことを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
【借入先別】不動産投資ローンの金利相場を紹介
不動産投資ローンの主な借入先として、都市銀行(メガバンク)、地方銀行、信用金庫、ノンバンク、日本政策金融公庫があります。金利相場は借入先によって異なるので、それぞれの借入先の金利相場を紹介します。ただし、金融環境や国の政策によって金利は変動するという前提で、現在の数値を解説します。
都市銀行(メガバンク)
都市銀行(メガバンク)の金利相場は1%前後です。代表的な都市銀行には三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行が含まれます。
都市銀行では、低金利で借入をすることができ、返済期間も長く設定される傾向にあるため、安定した返済計画を立てることができることがメリットです。また、これらの銀行は日本全国に支店があり、遠方に投資物件がある場合でも借入をすることができます。一方で、融資の審査基準は非常に厳しく、高い年収や安定した勤務先が求められることが多いことがデメリットです。
地方銀行
地方銀行の金利相場は幅広く、1.5〜5%に及びます。銀行によって不動産投資に対する融資姿勢が異なり、都市部に近く不動産投資に積極的な銀行では、1〜3%前後の金利が一般的です。一方、地方で不動産投資が少ない地域の銀行では4〜5%になることもあります。
地方銀行では都市銀行とは異なり、投資物件がその地方銀行の本店がある地域のみ融資をするケースもあります。
信用金庫・信用組合
信用金庫や信用組合の金利相場は約2%半ばです。信用金庫・信用組合が営業できるエリアは、信用金庫法によって金融庁で定められているため、その地域に投資物件がなければ融資をしてくれないことがデメリットです。
しかし、地域に根ざして活動しているため、地域にとって有益な不動産投資の場合には、積極的に相談に乗ってくれることもあります。
ノンバンク
ノンバンクの金利相場は2.5〜4.5%ほどです。ノンバンクは預金業務を行わず、貸付のみを行う金融機関のことで、三井住友トラスト・ローン&ファイナンスなどが代表的です。
金利は一般的に高めですが、融資の審査基準が比較的柔軟で、融資期間も長いことが特徴です。そのため、都市銀行や地方銀行で融資が難しい場合に活用されることが多いです。ただし、金利が高いため、資金計画をしっかり立てる必要があります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の金利相場は固定金利で1.2〜2%です。日本政策金融公庫は財務省所轄の公的金融機関であり、融資期間は10年から15年と比較的短いですが、低金利で融資を受けられる点が魅力です。
地域密着型の融資が特徴であり、他の金融機関では難しい物件や条件でも融資を受けられる可能性があります。また、高齢者や女性でも融資が受けやすい優遇処置もあります。
ただし、他の金融機関では自己資金を1〜2割程度準備するのが一般的ですが、日本政策金融公庫では金利が低い分、50〜70%の自己資金を準備する必要があります。
不動産投資ローンの金利の種類
不動産投資ローンの金利の種類には「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。
固定金利は、借入期間中の金利が一定で変わらない金利タイプで、借入全期間を通じて金利が固定されるタイプと、5年や10年など一定期間のみ金利を固定し、その後に金利を見直せるタイプがあります。ただし、不動産投資ローンにおいて、固定金利を選択できる金融機関は極めて少ないのが現状です。
一方で、変動金利は、半年ごとなど一定期間で金利が見直される金利タイプです。景気や政府の方針に基づいて金利が変動するため、一般的に固定金利よりも利率が低く設定されています。
固定金利のメリット・デメリット
ここでは、固定金利のメリット・デメリットを紹介します。ただし、前述の通り、固定金利のローンを提供している金融機関は極めて少ないということを把握しておきましょう。
固定金利のメリット
・金利変動リスクがない
・返済計画が立てやすい
固定金利のデメリット
・金利が高めに設定される
・金利低下の恩恵を受けられない
固定金利のメリット
固定金利の最大のメリットは、借入時に金利が確定しており、返済期間中に金利が変動しないことです。返済額が変動しないため、返済計画が立てやすくなります。特に長期のローンでは、金利の変動がないことは安心材料となります。
変動金利と異なり、固定金利はインフレの影響を受けることがなく、変わらず安定したままであるため、返済額が急増することがありません。
このように固定金利では、金利の変動に左右されることなく、着実に返済を進めることができるため、計画的な資金運用が可能となります。
固定金利のデメリット
変動金利に比べて、固定金利の利率は高く設定される傾向があります。そのため、借入当初から高い利息を支払う必要があるというデメリットが挙げられます。また、国の金利が低下した場合でも、固定金利では借入時の金利のままなので、その恩恵を受けることができません。
さらに、固定金利のローンは返済期間が長くなるほど金利が高くなる傾向があります。長期ローンでは金利が上乗せされることがあるため、総返済額が増加する可能性があり、返済計画を考える際には注意すべき点となります。
変動金利のメリット・デメリット
続いて変動金利のメリット・デメリットについて紹介します。不動産投資の多くは、固定金利ではなく変動金利が採用されているため、よく理解しておきましょう。
変動金利のメリット
・低金利で借りられる
・金利が低い期間に借りれば総返済額が少ない
変動金利のデメリット
・金利上昇による返済額増加のリスク
・返済計画が立てにくい
変動金利のメリット
変動金利の最大のメリットは、固定金利よりも低い金利でローンを借りられる点です。そのため、返済額を抑えることができます。ただし、変動金利には金利の変動リスクが伴います。金融環境や政策によって金利が変わる可能性があり、その影響を受けることになります。
特に、2024年3月18日と19日に開催された金融政策決定会合で、日銀がマイナス金利政策の解除を決定しました。この決定により、変動金利が引き上げられる可能性もあります。そのため、変動金利を選択する際には、将来の金利環境や返済能力を十分に考慮して検討することが重要です。
変動金利のデメリット
変動金利のデメリットは、金利が上昇した場合に支払利息が増加する可能性があることです。そのため、固定金利と比較すると金利の変動により支払額が不安定になり、収支管理や返済計画を立てることが困難になることも考えられます。
このように変動金利では、将来の金利動向を読み違えると返済負担が増える可能性があるため、選択する際にはリスク管理や十分な返済計画の立案が不可欠です。
固定金利が適している人やシーン
固定金利と変動金利にはそれぞれメリット・デメリットがあると紹介しましたが、どちらを選択するかはそれぞれの状況によって異なります。ここでは、固定金利が適している人やシーンについて解説します。
- ライフイベントが控えており将来の支出の増加を避けたい方
- 長期の不動産投資を考えている場合
ライフイベントが控えており将来の支出の増加を避けたい方
固定金利は金利変動のリスクがないため、金利変動による将来の支出増加を避けたい方に適しています。特に結婚や子供の教育費、老後の生活費などのライフイベントで大きな支出が控えている場合、返済額を固定することで家計の安定を図れます。
長期の不動産投資を考えている場合
物件を長期保有するつもりであれば、将来の金利上昇リスクを避けるためにも固定金利が適しています。不動産投資は長期的な視野が重要であり、長いスパンで投資計画を立てて安定した運用を目指す場合に向いています。
変動金利が適している人やシーン
ここでは変動金利が適している人やシーンについて紹介します。
- 短期間で不動産を売却する可能性のある場合
- 手元資金に余裕のある方
短期間で不動産を売却する可能性のある場合
物件を短期間で売却する予定がある場合、変動金利が有利です。短期のローンを組む際は、低金利の変動金利を活用して返済負担を軽減することができるためです。
また、固定金利で長期ローンを組んだ場合、短期間で収益物件を売却すると、途中解約が必要になり、多額の違約金が課せられる可能性があります。解約条件について事前に確認し、売却時に問題が生じる可能性がある場合は、変動金利を検討することが適切です。
手元資金に余裕のある方
手元に余裕資金がある方は、金利上昇にも対応できるため、変動金利が適しています。資金に余裕があれば、金利が上昇して返済額が増えても、返済を続けることができます。また、低金利のうちに融資を受け、余剰資金を他の投資に回すことで運用益を得ることも可能です。
低金利で不動産投資ローンを組むには?
不動産投資でローンを組むならできるだけ低金利で組みたいと考える方も多いと思います。ここでは低金利で不動産投資ローンを組むためのポイントを解説します。
- 複数の金融機関を検討する
- 属性を見直す
- 資産価値が高い物件を選ぶ
- 事業計画書を作成する
- 自己資本金を準備しておく
複数の金融機関を検討する
低金利で不動産投資ローンを組むためには、複数の金融機関を検討することが重要です。複数の金融機関に相談し、それぞれの融資条件を確認しましょう。各金融機関は独自の融資条件や利率を設定しており、金利や返済期間、返済方法などを比較することで、どの金融機関が最も低金利で融資を提供しているかを把握できます。
また、金融機関によっては特別なキャンペーンや割引を行っている場合もあります。定期的に金融市場や金融機関の情報をチェックし、最新の情報を取得することも大切です。
属性を見直す
融資審査における属性は、年齢、年収、勤務先、勤続年数、資産状況、そして他の借入金の状況などを指します。勤続年数を伸ばし、年収がある程度増収してからローン検討するなど自身の属性を見直すことで金融機関からの評価が高まり、融資を受けやすくなります。
また、使用していないクレジットカードを解約したり、限度額を引き下げたりすることも有効です。クレジットカードの限度額や年会金は借入額として扱われることもあるため、高い限度額を持つクレジットカードがあると、融資額が制限される可能性があるからです。
資産価値が高い物件を選ぶ
金融機関は融資審査の際、借り手の属性だけでなく、購入しようとする物件の価値も重要視します。特に資産価値の高い物件は、金融機関からの評価が高まり、低金利での融資を受けやすくなります。
例えば、鉄筋コンクリート造のマンションは、長期間にわたり価値を保ちやすく、賃貸需要も安定していることが多いです。そのため、金融機関はマンションを担保とすることで、貸し倒れのリスクが低いと判断しやすくなります。逆に、木造や軽量鉄骨のアパートは、築年数が経つにつれて劣化が進みやすく、資産価値が下がるリスクが高いため、融資条件が厳しくなる傾向があります。
このように、資産価値の高い物件を選ぶことで、金融機関から低金利での融資を受ける可能性が高まります。購入前に物件の価値をしっかりと評価し、長期的に安定した収益が見込める物件を選ぶことが、不動産投資成功の鍵となります。
事業計画書を作成する
不動産投資ローンを低金利で組むためには、しっかりとした事業計画書を作成することが不可欠です。事業計画書には、購入予定の物件の詳細情報、予想される利益や経費、事業の収益性などを具体的に記載します。この計画書を通じて、金融機関は投資がどの程度リスクの少ないものであるか、返済能力がどの程度あるかを評価します。
このように、詳細で現実的な事業計画書を作成することで、金融機関に対して投資の安全性や収益性に対して説得力を持って示すことができ、結果的に低金利での融資を受けやすくなります。事業計画書の質が融資条件に大きく影響するため、時間をかけて丁寧に作成することが重要です。
自己資本金を準備しておく
自己資本金を多く準備することは、低金利で不動産投資ローンを組むためには必要です。金融機関にとって、自己資本金の多さは借り手の信用度を示す一つの指標となります。自己資本金が多いと、金融機関はその借り手をリスクが低いと判断し、より有利な条件で融資を提供する可能性が高まります。
自己資本金を準備するためには、計画的な資金管理が必要です。日頃からの貯蓄や、投資による資産運用などを通じて資本金を増やしていくことが重要です。また、不動産投資を始める前に、自己資金を確保するための具体的な目標を設定し、その達成に向けて計画的に取り組むことが求められます。
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