キャスター Research Memo(1):2025年8月期中間期は増収ながら損失幅が拡大
キャスターはフルリモートワークを通じて中小企業にサービスを提供する人材プラットフォームを展開している。2023年に東証グロース市場に上場し、リモートワークと独自技術で高成長を実現。2025年8月期中間期では売上が増加したが、一時的な人的投資により損失が拡大。年間予測では売上13.4%増、営業利益の黒字転換を見込む。今後はAIとの融合で新たなワークプロバイダ市場を開拓し、特に経理領域での専門性を活かした成長を狙う。
キャスター<9331>は、「リモートワークを当たり前にする」というミッションの下、人手不足に悩む中小企業とリモートワーカーをつなぐプラットフォームを軸とする人材サービスを提供している。2023年10月4日に東証グロース市場に上場した。フルリモートワークの駆使と独自システムの開発により、小ロット・月額で人的リソースを提供する使い勝手の良いサービスを実現し、中小企業向けに高成長を継続してきた。いわゆるマッチング型クラウドソーシングやBPOとは一線を画した特異なポジションにより新たな市場を開拓し先取りしている。累計利用社数はスタートアップ及び中小企業を中心に5,500社を超える。従業員数は高い採用力を背景に約850名を確保し、2014年創業以来、フルリモートワークによる組織運営を実践してきた。日本の労働人口減という問題に対してリモートワークのメリットを最大限活用した有効な解決策を提示することで、労働バイアスを解消し事業の拡張と社会への貢献を果たす考えだ。また、足元では高単価が期待できる経理領域の深掘りやAI技術の活用など、今後の事業拡大に向けた具体的な動きが活発化してきた。
1. 2025年8月期中間期の業績概要
2025年8月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比4.4%増の2,290百万円、営業損失が273百万円(前年同期は8百万円の損失)と増収ながら損失幅が拡大した。BPaaS事業において大型案件の解約による影響を受けたものの、低ロットサービスの需要拡大に伴う稼働社数の増加に加え、グラムス(株)の連結効果やAIエージェント関連の収益化などにより増収を確保し、過去最高売上高(中間期ベース)を更新した。一方、損失幅が拡大したのは、大型案件の解約やARPU低下による影響のほか、マネーフォワード<3994>との連携強化を見据えた積極的な人材投資に伴う一時的な負担増が理由である。活動面では、マネーフォワードとの協業(AI活用を含む経理専門商材の開発や人材確保等)やAIエージェント関連サービスの提供開始などで一定の前進を見せた。
2. 2025年8月期の業績予想
2025年8月期の連結業績予想については、期初予想を据え置き、売上高を前期比13.4%増の5,037百万円、営業利益を10百万円(前期は151百万円の損失)と増収及び営業利益の黒字転換を見込んでいる。下期については、既存顧客のクロスセル・アップセルによるARPU改善が業績の伸びをけん引するとともに、アライアンスによる新規案件獲得を強化する方針である。損益面でも、新規顧客獲得に向けた広告費配分の調整や受注動向に合わせた稼働率の維持によりコスト最適化を図る考えであり、通期での営業利益の黒字転換を目指す。
3. 成長戦略の方向性
同社は、既存事業の強化とセグメントの拡大の両輪で売上成長を加速させる戦略を進めてきた。その方向性そのものに変化はないが、新たに公表された経営方針では、AI活用を強く打ち出しており、人とAIの融合による次世代型ワークフォースプロバイダという新境地を切り開く考えだ。特に専門性が高く人材不足が顕著である経理領域についてはAI活用の余地も大きく、まずは他社に先駆けて新しい商材の開発と拡販に取り組む。同社では、この方針に基づく中期経営計画を1年以内に発表予定としており、どのような方向性や戦略が打ち出されるかを待ちたい。
■Key Points
・フルリモートワークを駆使した独自の人材プラットフォームを展開し、中小企業向けに高収益を実現
・2025年8月期中間期は増収ながら今後を見据えた人的投資などにより損失幅が拡大
・2025年8月期の期初予想を据え置き、ARPU改善やコスト最適化により営業利益の黒字転換を見込む
・今後は人とAIの融合による次世代型ワークフォースプロバイダという新境地を切り開き、新たな価値創出と成長加速を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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