室町ケミカル Research Memo(5):自己資本比率は40%台を維持
室町ケミカルは2025年5月期中間期末での自己資本比率を42.2%に維持していますが、中期経営計画の目標である35%以上は達成できる見込みです。有利子負債比率は79.9%と上昇しましたが、問題はないと見られています。2025年5月期の業績見通しでは、売上高6,700百万円、営業利益450百万円を過去最高と見込んでいます。医薬品事業の売上は新規取扱品目の増加による効果が期待されています。健康食品事業では、大型OEM製品の販売が寄与し、売上高の大幅増が見込まれます。化学品事業はイオン交換樹脂の販売が好調で、売上増と黒字化が期待されています。
3. 財務状況
2025年5月期中間期末の資産合計は前期末比445百万円増加の5,504百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では売掛金が216百万円減少した一方で、棚卸資産が449百万円、現金及び預金が278百万円増加した。固定資産では有形固定資産が36百万円増加した。
負債合計は前期末比393百万円増加の3,181百万円となった。運転資金などを目的に有利子負債が423百万円増加したほか買掛金が281百万円増加し、その他の負債が減少した。純資産合計は同51百万円増加の2,322百万円となった。中間純利益120百万円の計上と配当金87百万円の支出により、利益剰余金が33百万円増加したほか、譲渡制限付き株式報酬としての自己株式処分により、資本剰余金が7百万円増加し自己株式が7百万円減少(増加要因)した。
経営指標を見ると、経営の安全性を占める自己資本比率は前期末の44.9%から42.2%と若干低下した。同社は中期経営計画(2023年5月期~2025年5月期)において35%以上を目標に設定しており、期末においても同目標は達成できる見込みだ。また、有利子負債比率は借入金の増加により前期末の63.1%から79.9%と上昇したものの、問題の無い水準と弊社では見ている。
■今後の見通し
2025年5月期の業績は売上高、営業利益、経常利益で過去最高を目指す
1. 2025年5月期の業績見通し
2025年5月期の業績は売上高で前期比5.2%増の6,700百万円、営業利益で同6.7%増の450百万円、経常利益で同0.4%増の430百万円、当期純利益で同9.1%減の300百万円と期初計画を据え置いた。売上高、営業利益、経常利益は過去最高を更新し、当期純利益は前期に特別利益として計上した保険解約返戻金32百万円などが無くなることで減益を見込んでいる。
中間期までの進捗率は売上高で44.3%、営業利益で34.3%と低くなっているが、2025年5月期は新規受注も含めて顧客への納品タイミングが下期に偏重していることが要因であり、3事業ともにおおむね計画どおりに推移すると同社は見ている。また、中間期で営業利益が計画を上回ったが、既述のとおり期ずれに伴う在庫増や設備投資計画の後ずれにより減価償却費が計画を下回ったためで、少なくとも在庫増に関連した上振れ分については下期に相殺される。このため、営業利益に関しても通期ではおおむね計画どおりに推移する見通しだ。
営業利益率は前期の6.6%から6.7%に上昇する見通しとなっている。賃金改定(平均6.5%の昇給を実施)により人件費が増加するほか、減価償却費が前期比66百万円増の202百万円となるものの、増収効果や工場の稼動率向上、販売価格の見直しなどで吸収する。EBITDA(償却費控除前営業利益)に関しては、前期比16.8%増の652百万円となる見込みだ。
事業セグメント別の売上高は、医薬品事業で前期比1.3%増の3,300百万円、健康食品事業で同19.9%増の1,000百万円、化学品事業で同5.4%増の2,400百万円を計画している。
医薬品事業については、大手後発医薬品メーカー向けの胃腸薬用原薬(ピーク時売上見込:1億円/年)など新規取扱品目の増加による輸入原薬の売上伸張や、新規合成案件の立ち上げによる自社製造品の増収を見込んでいる。ただ、抗てんかん薬用原薬の動向次第で売上高は若干下振れする可能性がある。一方、営業利益は人件費や減価償却費を含む開発部門経費の増加により減益となる見通しだ。
健康食品事業は前第3四半期より販売開始した大型OEM製品が寄与し、売上高で5期ぶりに10億円台の大台に回復する見通しだ。また、工場の稼働率向上やフレキシブルな生産体制への見直し、歩留まりの改善などにより、営業利益も3期ぶりの黒字転換が見込まれる。同社では協力会社とのコラボレーションにより、錠剤・カプセルなど様々な剤型に対応できる体制を構築し、顧客の多様なニーズに応えることでさらなる売上の伸張を目指している。また、会社HPの特設サイトをリニューアルし、見込み顧客の獲得を推進している。
化学品事業は、引き続きイオン交換樹脂の販売が堅調に推移し、過去最高売上を連続更新する見通し。2023年に初めて受注を獲得した火力発電所向け「高架橋度イオン交換樹脂※」について、新たに2つの発電所(電力会社2社)で採用が決定し売上貢献する。電力会社向けは、信頼性や実績が重視されるため新規参入が容易ではないが、品質面での基準をクリアしたほか価格面でのメリットをアピールすることで受注に成功した。同社はこれら採用実績をもとに他の火力発電所向けにも拡販すべく商社と共同で営業活動を進めており、さらなる売上増を目指している(ピーク時売上目標:4億円/年)。利益面では、開発費用や新規顧客開拓のための営業費用など先行投資を実施してきたことで、ここ数年は損失計上を続けてきたが、増収効果や生産体制見直しによる原価率改善効果もあって、2025年5月期は黒字化を見込んでいる。
※ 標準的なイオン交換樹脂と比較して溶出する不純物量が少ないため、長期間使用しても劣化が進行しにくい特徴がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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