ウェーブロックHD Research Memo(8):2027年3月期に売上高295億円、営業利益13億円を目指す
ウェーブロックホールディングスは、2025年3月期から始まる3ヶ年の中期経営計画を発表し、2027年3月期に売上高295億円、営業利益13億円を目指しています。計画のテーマは「安定的かつ継続的な成長を基にした長期利益の獲得」で、成熟分野の再構築と成長分野の拡大に注力し、グループシナジーの最大化を図ります。特に、アドバンストテクノロジー部門における金属調加飾フィルムの成長が期待され、自動車業界向けの売上が3年で2倍に拡大する見込みです。この計画では、マテリアルソリューション事業の収益改善や新商品の開発、地中熱ビジネスとの連携強化が戦略的な焦点となっています。これらの施策を通じて、収益基盤を強化し、外部環境の変化に柔軟に対応することを目指しています。
2. 中期経営計画の概要
ウェーブロックホールディングス<7940>は2025年3月期から3ヶ年の中期経営計画をスタートしている。テーマとして「安定的かつ継続的な成長を前提とした長期利益の獲得による従業員・株主への持続的な還元を実行する」を掲げ、事業戦略として(1)成熟分野における稼ぐ力の再構築、(2)成長分野の拡大、(3)グループシナジーの最大化とさらなる関係深化の3点に着手している。また、グループにおける経営施策として、従業員のエンゲージメント向上への取り組みも推進している。
最終年度となる2027年3月期の業績目標は、売上高で29,500百万円、営業利益で1,300百万円、ROEで6.3%を設定した。売上高と営業利益は、インテリア事業売却後の2022年3月期以降で過去最高を更新する見通しだ。3年間の年平均成長率は売上高で7.8%、営業利益で49.6%となり、収益力の回復に力点を置いていることがうかがえる。事業セグメント別では、マテリアルソリューション事業が売上高で20,800百万円、営業利益で1,350百万円となり、営業利益率は6.5%と2024年3月期実績から0.8ポイントの上昇を見込んでいる。また、アドバンストテクノロジー事業は売上高で8,700百万円、営業利益で700百万円となり、営業利益率は8.0%と同7.3ポイントの上昇を目指す。同事業の利益率は仕入販売品の売上動向によっても変動するが、注力分野の金属調加飾フィルムの売上が順調に成長すれば、金額ベースで達成可能な水準と見られる。
金属調加飾フィルムの売上規模が自動車向けを中心に3年で2倍に拡大し、収益けん引役となる見通し
3. 事業戦略
(1) 成熟分野における稼ぐ力の再構築
a) 低成長・低収益分野の構造改革と生産の最適化による収益改善
マテリアルソリューション事業では多くの製品を販売しており、低成長・低収益分野に属する製品については生産の最適化によるコストダウンや価格改定交渉を行うことで収益性の改善に取り組んでいる。それでも収益改善が見込めない分野については整理・統合し、成長や高収益が期待できる分野へ経営資源を重点的に投入することで収益力を強化していく。こうした戦略の一環として、従来品との差別化が可能で付加価値の高い新製品の開発に取り組んでおり、いくつか注目される新商品も出てきている。
前述した「ダイオネオシェード清冷」は酷暑が続くなかでビニルハウス向けだけでなく、一般消費者用への需要拡大が期待される。また、防災・減災対策品として2023年9月に発売した車両浸水防止カバー「ウォーターセーフ」は、豪雨災害時の車両浸水を防止することを目的とした防水シートとなるが、運送会社からのニーズに応えて開発した商品で、「防災・減災×サステナブル大賞2024」で優秀賞を受賞した。認知度がまだ低いため潜在需要のある運送会社向けでの販促を強化し、家庭向けとしてカーポートタイプも発売する。
そのほか、災害時に少ない人数で簡単に広げることが可能な防災シート「SAT!開く防災シート※」も2024年夏に開催されたホームセンター業界最大の総合展示会「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2024」の新商品コンテストで、最高位となる経済産業大臣賞を受賞するなど注目を浴びている。同製品は従来品と同等以上の強度を維持しながら素材を変えることで従来品比約15%の軽量化も実現している。簡単に広げられる仕組みや畳み方についての特許も取得しており、高付加価値品として自治体や学校、事業会社などの災害備蓄用としての需要拡大が期待される。製造プロセスの折り畳み工程については中国工場で手作業にて行っているため、今後は量産化に向けて自動化を進めていく考えで、「ウォーターセーフ」と「SAT!開く防災シート」あわせた3年後の売上高は15億円を目指す。こうした高付加価値製品を今後も積極的に開発し市場に投入していくことができれば、外部環境の変化にも対応できる強固な収益基盤の構築が可能になると弊社では見ている。
※ サイズは3.6×5.4m、7.2×9m、10×10mの3種類。
b) 地中熱と既存分野の連携強化
マテリアルソリューション事業の収益力強化施策の1つとして、SDGsの観点(脱炭素社会の実現、働く環境の改善)から、今後の需要拡大が期待される地中熱ビジネスと既存分野の連携強化を進める。地中熱ビジネスは、販売ターゲットとして施設園芸、工場・倉庫などの2分野に重点的に注力する方針である。施設園芸向けには農業資材(遮熱・遮光網、防虫網、ビニルハウスなど)との組み合わせ、工場・倉庫向けでは産業資材(間仕切りシート、仮設、テントなど)との組み合わせにより、より付加価値の高いソリューション提案が可能となり、受注獲得の機会が広がるとともに、農業資材や産業資材の売上拡大にもつながると期待される。
営業活動については、直販だけでなく卸商社との連携を進めるほか、Webマーケティングによって潜在需要を掘り起こしていく。また、省エネ性能の向上に向けた技術開発(計測・制御、熱交換・循環分野)を継続し競争力の維持向上を図るほか、施工面でも子会社のエイゼンコーポレーションとの連携だけでなく、パートナー企業との協業体制を確立することで営業エリアを拡大する考えだ。地中熱を活用した省エネシステムは、政府や自治体の補助金制度を活用できるケースもあるため※、導入メリットの認知度が広がれば売上規模も一段と拡大する見通しだ。
※ 2023年1月に自社工場(ダイオ袋井工場)に投資額1億円強で導入した。うち半分は補助金を活用している。年間の光熱費の削減効果は14百万円程度と試算しており、補助金を活用することで投資額を約4年で回収できる計算となる。システムは15年程度利用できるため、通算すると1.5億円のコスト削減効果が期待できるほか、CO2の排出量削減に貢献することになる。また、働く環境が良くなることで従業員の生産性が向上する効果も期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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