雪国まいたけ---「プレミアムきのこ」のトップシェアメーカー、今後はマッシュルーム生産や代替肉展開に期待
ベース事業では、品質志向ニーズを着実に捉えて高収益化とシェア拡大の同時達成を目指している。同社は卸売会社を通さず販売先との直接取引を実施しており、直接取引の構成比が8割強を占め、卸売会社を通した市場流通は20%程度と、流通量の変動や価格コントロールを実行しやすくなっている。バリューチェーン全体を支える長年培った高い研究開発力を保持しつつ、プレミアムきのこの安定的な生産・供給体制を実現させ、地域別・ターゲット顧客層ごとにカスタマイズされたマーケティングを複合的かつ多面的に展開しており、上流から下流まで自社で目の届く体制を確立している。
同社のまいたけは味や香り、食感を最も引き出せる袋栽培を採用しており、天然同様のサイズに成長させている。また、歯ごたえ、弾力性が強い「茎」が大きく、1株も約900gと大きいため、ユーザーの需給に合った多様な容量の商品を展開できる。まいたけは2023年総生産量約5.5万トンのうちシェアを51.6%、エリンギは同約3.6万トンのうちシェアを27.5%、ぶなしめじは同11.7万トンのうちシェア14.3%を占める。競合の一角としてはホクト<1379>が挙げられるが、まいたけ市場は同社、ホクト含めて3社の寡占状態となっているため、参入障壁が非常に高くなっている。また、マッシュルームは2020年総生産量約7,000トンのうちシェア33.4%、本しめじやはたけしめじは生産量が少ないものの99%のシェアを有する。
25年3月期第1四半期の収益は10,172百万円(前年同期比22.9%増)、税引前損益は90百万円の赤字(前年同期413百万円の赤字)で赤字幅を縮小して着地した。外部環境では、きのこ市況全体として量と単価の落ち着いた状況が継続し、一部の葉菜類で価格上昇がみられて野菜相場全体に追い風となった。このような環境下で、複数SKU(アイテム数)を活かしてニーズに合った商品提案を行い、前年同期・計画ともに上回る単価水準を実現させたほか、小売り側と連携した売場拡大によって売上の拡大を図ったようだ。きのこは国内の需要が秋・冬に偏っているため、春・夏となる1Q、2Qは売上高が少ない季節性を有している。通期業績予想は、収益で49,990百万円(前期比5.3%増)、税引前利益は2,370百万円(同5.8%増)を見込む。
今後は、希少性の高いアイテムを拡充し、新規事業領域も本格的に拡大することで、新たな成長ドライバーを構築していく。ベース事業を主軸としつつ、ニッチ・プレミアム事業と海外の2つのセグメントの拡大により、28年3月期に売上収益420億円(24年3月期は334.4億円)超えを目指す。既成のプレミアムポジショニングを強化し他産地との差別化を進め、消費者の品質志向ニーズを着実に捉えて、国内事業の更なる強化を図っていく。また、全社横断的なBPRによる事業プロセスの改善での省人化や省エネ化の推進を図りつつ、同社のノウハウを生かして、取得した海外企業の更なる業績拡大を目指すようで、国内の事業強化の進展や地政学的リスクを考慮して、追加買収の可能性も追求している。
注目したい点は、ニッチ・プレミアム事業のマッシュルームの成長と代替肉の可能性である。マッシュルームは国内生産量が少ないため、まいたけより更に販売単価が高く、マーケット自体の成長余地も大きい。また、マッシュルームは西洋料理に使われることが多く1年中需要が発生している。そのため鍋需要が落ち着き売上が落ち込む春・夏における生産・販売により、業績に対する季節性をカバーすることができる。さらに、2023年6月にきのこを主原料として代替肉の開発に成功し、2025年3月期に上市を予定している。国内外で代替肉のニーズで注目されている原料は大豆だったが、大豆は穀物相場が上がるなか、作り続けることが課題で、国内は輸入に頼っている。大豆ミートの価格は高く、味や食感に改善の余地があるほか、糖質が高くなってしまうことがあるなど、健康面でも課題が残る。一方、きのこは同社のような主要メーカーが工場で生産でき、異常気象も問題なく年間で生産できる。コストコントロール可能で、健康面でも高い健康機能性があり、食物繊維・うまみもある。開発成功後から既に小売り、メーカーから問い合わせが多数あるようで、今後は国内だけでなく、海外からも引き合いが増加する可能性がある。総じて、マッシュルームの成長と代替肉としての立ち位置は中長期的に同社の業績にポジティブな影響をもたらす可能性が高い。各きのこの市場単価が上がりきのこ類全体の市場規模は回復傾向にあるなか、業績の底堅い成長が続くか注目しておきたい。
<AK>
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