rakumo Research Memo(3):Google及びSalesforceを機能拡張するSaaSツールが収益源
1. 事業概要
rakumo<4060>はITビジネスソリューション事業の単一セグメントで構成されている。なかでも、サブスクリプション型のビジネスモデルであり、継続性成長率の高いSaaSサービスが2022年12月期売上高の87.6%を占める主力プロダクトである。世界的なクラウドプレイヤーであるGoogle及びSalesforceとのパートナーシップを有し、両社のクラウド上で「Google Workspace版rakumo」「Salesforce版rakumo」を提供している。クライアントはベンチャー企業から大企業まで業種、規模を問わず展開、2022年12月末時点での利用クライアント社数は2,334社と着実に増加している。
「Google Workspace版rakumo」ではGoogle社が提供するグループウェア「Google Workspace(旧G Suite)」と連携し、機能拡張したアドオンツールとして提供している。もともとG Suiteが一般ユーザー向けに提供が開始されたこともあり、「rakumo」では企業がG Suiteを利用する際に不足する機能の補完や、より使いやすい画面の設計、より便利に利用できる機能を有しており、具体的には、共有スケジューラ―「rakumoカレンダー」、共有アドレス帳「rakumoコンタクト」、電子稟議システム「rakumoワークフロー」、電子掲示板「rakumoボード」、経費精算システム「rakumoケイヒ」、勤怠管理システム「rakumoキンタイ」6つのサービスに分類される。一方、「Salesforce版rakumo」では共有カレンダー「rakumoソーシャルスケジューラー」及びカレンダー同期サービス「rakumo Sync」を提供している。
「rakumo」のサービス価格はプロダクトごとに細分化されており、「rakumoカレンダー」では1つのIDにつき月額100円、「rakumoコンタクト」では50円、「rakumoワークフロー」では300円、「rakumoボード」では150円、「rakumoケイヒ」では300円、「rakumoキンタイ」では300円などとなっている。また、複数のプロダクトをまとめて購入するパッケージプロダクトも取り揃えており、「rakumoカレンダー」「rakumoコンタクト」「rakumoワークフロー」「rakumoボード」の4つの機能が利用できる「rakumo Basicパック」は390円と、単品購入合計の600円から割引された価格で購入が可能となっている。同様に全機能が利用できる「rakumo Suiteパック」も用意されている。昨今、SaaSサービスを手掛ける事業者においても値上げを実施する企業が増えているが、同社は「中小企業にも高品質なITサービスを届けたい」という方針に基づき、現時点では値上げを実施していないが、今後、円安ドル高に伴うサーバーコストの増加などを背景として値上げを実施する余地は残されているとみられる。
2. 「rakumo」サービスの特長
同社はGoogle及びSalesforceと強固なパートナーシップを有しており、これが「rakumo」事業の大きな土台部分となっている。良好な関係を築くと同時に、彼らの仕様に合わせた製品開発およびメンテナンスが重要となるが、同社のサービスラインナップはカバー範囲やクライアント数が一定規模に達しており、これが参入障壁となることで先行者利益を享受している。同社が提供するGoogle向けSaaSサービスは、Google Workspace上で提供される業務支援ツールだが、カレンダーや経費精算などプロダクトのカバー範囲も広く、多種多様なクライアントのニーズに対応することも可能となっている。また、製品間のシステム連携により、重複入力や重複対応がなくなり、効率性の向上や作業ミスの低減を実現している。
3. ビジネスモデル
「rakumo」の収益構造は、サービス料金をクライアント企業の使用期間およびユーザー数に応じて定期定額契約(サブスクリプション)として課金することで、継続的な収益(リカーリングレベニュー)を得ることができる「サブスクリプション型リカーリングレベニューモデル」となっている。切り売り型ではなく、継続的なサービス提供が前提である。継続的な収益が積み上がっていくストック型ビジネスとしての安定性がありながら、新規契約数の増加に伴う高い成長も目指すことができるビジネスモデルである。年間契約や複数月契約が主体であり、契約金額を一括前払いで回収しているため、キャッシュ・フロー安定性が高いことも特長として挙げられる。
また、販売代理店(販売パートナー)との連携を密にし、効果的なマーケティング施策によるクライアントからのネット経由でのアプローチ(インバウンド)を主体とした直接販売チャネルにより、効率的に販売促進が可能な仕組みを構築している。なお、販売パートナーへの卸値が同社の売上高計上額となるため、販売パートナーへのマージンが営業費用として計上されず、SaaSサービスの追加売上高の多くがそのまま粗利として計上される。
SaaS企業は事業の特性上、バランスシート上の資産をあまり必要としないため、総資産に対する手元流動性比率が高くなる傾向がある。ただし、M&Aを積極的に行いながら業容拡大を進めているSaaS企業は、のれんの比重が高くなることがある。サブスクリプション型で月額料金にてサービスを提供している場合、契約期間にわたって毎月一定額を売上計上するが、売上計上より前に回収することで多額の前受金が計上される場合もある。また、SaaS企業の多くがソフトウェア開発に多額の投資を行っているが、バランスシート上でソフトウェアを資産計上していないか、資産計上していても少額であることが多い。これは、(1)開発の成果としてプロダクトが完成してもしばらくの期間は損失計上が続くことが多く、資産性の説明が難しい、(2)SaaS企業の価値評価においては目先の会計上の利益よりも売上成長率やキャッシュ・フローが重視されることが多いため、ソフトウェアを資産計上する意義が小さい、などが背景である。
これらの観点から同社の2023年12月期上期の財務状況をみると、(1)総資産2,510百万円に対する現金及び預金の構成比は86%(2,158百万円)、(2)gambaの買収後の総資産に対するのれんの構成比は5%(80百万円)に留まる、(3)無形固定資産のうちソフトウェアは62百万円、ソフトウェア仮勘定は11百万円と少額に留まる、(4)負債のうち短期有利子負債はなく、長期有利子負債は10百万円、2023年5月に実施した資金調達により転換社債型新株予約権付社債は500百万円と財務レバレッジは従前より上昇、(5)前受金に当たる契約負債は574百万円、 (6)自己資本比率は50.3%と高い、などの特長があるが、大半が一般的なSaaS企業と共通しており違和感はない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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