TKP Research Memo(7):ポートフォリオ改革のほか、DX推進や高付加価値化に向けても方向性を打ち出す
1. 事業戦略とその進捗
ティーケーピー<3479>は、ポストコロナを見据え、以下の3つの戦略に取り組んでいる。
(1) ポートフォリオ改革
1) 社会経済活動の正常化を見据えた新規出店の推進に加え、2) 日本リージャスのサブフランチャイズ展開の始動により、ポートフォリオ改革を推進していく方針である。すなわち、規模の拡大とともに、質の向上にも取り組む戦略と言える。特に1) については、仕入れ環境が追い風となっているなかで出店を強化するとともに、好条件施設(百貨店等利便性を備えた遊休不動産や優良中古ビル中心)へのリプレイス(ポートフォリオの入れ替え)も検討し、投資効率を高めていく考えだ。2023年2月期上期までの実績としては、既述のとおり、TKP事業で2施設※1、日本リージャスで3施設※2の新規出店を行った。また、2023年7月オープンに向けて、同社史上最大となる複合施設「TKP東京ベイ幕張ホール」(4,101坪)の運営も決定している。
※1 2022年4月にレクトーレ神戸(関西初となる5,766坪の大型宿泊研修施設)、6月には名鉄名古屋駅CC(766坪の大型施設)をオープンした。
※2 日本初上陸となる高級ブランド「Signature」(六本木ヒルズ)のほか、「Regus」ブランドによる地方への出店(金沢、山形)の合計3施設。
一方、2) については、日本リージャスがカバーしきれていない東京郊外や地方都市を対象とし、サブフランチャイジー(ビルオーナーや事業法人、不動産投資会社等)とのネットワーク構築により、年当たり15~20施設の出店を計画しているようだ。これまでの直営施設に関わる初期投資が不要であるうえ、運営ノウハウや各種支援と引き換えにロイヤリティ収入が獲得できるため、投資効率の向上やリスクの軽減が図られるとともに、出店スピードの加速にも期待が持てる。2022年8月には既存施設をFC運営に転換する形でFC運営第1号店(福島県郡山市)を開始、10月には新規FC施設(静岡県浜松市)がオープンした。
(2) リアル×オンラインによる案件単価の向上
コロナ禍の下、リアル開催イベントを自粛する動きが見られたなか、同社は主流となったオンラインでのイベントやセミナー開催の需要に柔軟に対応してきた。具体的には、ウェビナー案件などの増加に対して、企画から事務、収録、会場施工、動画制作、配信まで一括して対応することにより、業績の落ち込みをカバーするだけでなく、顧客との接点の確保やノウハウの蓄積にも注力してきた。今後コロナ禍が収束し、リアル開催イベントの需要が回復しても、リアルとオンラインのハイブリッド型を含めたオンライン需要は継続する可能性が高く、この実績やノウハウは大きな武器になるものと考えられる。実際、2023年2月期上期では、ハイブリッド形式の開催により案件単価がコロナ禍前の2.5倍に拡大したケースもあるようだ。
(3) 事業提携による高付加価値化
同社は、これまでもスペース(ハード)と周辺サービス(ソフト)の組み合わせにより様々な需要を取り込み、総合的な空間サービスを提供してきたが、今後はスペースにコンテンツサービス(運営オペレーションやシステム、研修パッケージ等)を付与したソリューションの提供を通じて、既存スペースの稼働向上や「坪あたり売上高」の引き上げにつなげていく方向性を強く打ち出している。コロナ禍で主流となったオンライン需要への対応やBPO案件の受託のほか、変革の余地が大きい試験会場利用向けについても、試験のDX化に対応するためのCBTテストセンター※の設置や、試験実施の申し込みから運営、合否通知までを完全サポートする試験運営管理システム「AOT(オート)」の提供も開始しており、これらの動きもコンテンツサービス充実の一環として捉えることができる。また、2022年8月からは、日本航空<9201>の客室乗務員が実際に講師を務める研修プラン(JALビジネスキャリアサポート)の提供を同社手配にて開始した。既存の接遇マナーやホスピタリティ研修のプログラムに加え、2023年春の人事研修需要を見据えた3つのプログラムで構成されている。
※CBTとは、Computer Based Testingの略。言語、情報、医療、簿記等多くの試験でCBTが実施されており、今後も積極的な活用が継続される見込みである。同社では、会場やパソコン、スタッフなどもセットしたパッケージプランを提供している。
2. DX推進に向けた取り組み
今後の持続的な成長に向けて、DX戦略「TKPイノベーションロードマップ」を策定した。(1) 案件管理システム・会議室予約システム刷新(2022年~2023年)、(2) 顧客ポータルシステム開発(2023年~)、(3) 収支分析の高度化(2024年~)の3つのフェーズに分かれており、現在は(1) のフェーズにある。これらを通じて、貸会議室の案件管理システムが刷新・整備され、顧客ポータルが提供可能になることで、これまでコールセンターやTKPのスタッフが行ってきた会議室の検索・予約、及び案件管理を顧客自身で実施することが可能となり、オンデマンドな会議室利用がより一層便利になる(同社にとっても効率化やリソースの最適化が図れる)。また、最終的にはデータの蓄積・活用により、コンサルティング営業の強化や市況に応じた価格戦略にも結び付けていく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NS>
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