クイック Research Memo(3):主力の人材サービス事業が好調に推移したほか、全セグメントで増収増益(1)
1. 2022年3月期第2四半期の業績動向
クイック<4318>の2022年3月期第2四半期の業績は、売上高12,202百万円(前年同期比18.5%増)、営業利益2,656百万円(同39.3%増)、経常利益2,685百万円(同32.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,889百万円(同32.7%増)と好調に推移した。コロナ禍が長期化するなか、国内でのワクチン接種の進展や欧米諸国を中心とした海外経済の回復等を背景に持ち直しの兆しが見られた。しかし、夏場にかけての感染拡大第5波の影響により緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が延長されたことにより、国内経済は不透明な状況が続いた。一方で、国内の雇用情勢は9月の有効求人倍率(季節調整値)が1.16倍、完全失業率(季節調整値)が2.8%と、引き続き緩やかな回復が進んでいる。このような事業環境のなか同社は、人材の不足感が強く、採用難易度の高い特定領域の人材紹介・人材派遣の強化のほか、新たな注力分野の開拓やグループ内での連携強化等により、人材に関する顧客企業の課題解決をサポートし、他社との差別化や顧客満足度向上に取り組んだ。また、リモート体制の早期整備など営業体制の再構築や、人材の採用強化・研修による育成等による事業基盤の強化を推進した。これらの結果、売上高が好調に推移したことに加え、限界利益率が高い構造であることから利益は売上高を上回って伸長した。計画比では売上高で744百万円、営業利益で369百万円、経常利益で390百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で305百万円の超過達成となり、売上高・利益ともに第2四半期では過去最高を更新した。
事業別の業績としては、主力の人材サービス事業が売上高8,829百万円(前年同期比16.7%増)、営業利益2,631百万円(同13.3%増)、リクルーティング事業が売上高1,167百万円(同42.4%増)、営業利益88百万円(前年同期は140百万円の損失)、情報出版事業が売上高1,028百万円(同17.7%増)、営業利益95百万円(同239.8%増)、IT・ネット関連事業が売上高742百万円(同12.7%増)、営業利益234百万円(同58.8%増)、海外事業が売上高434百万円(同13.3%増)、営業利益10百万円(前年同期は53百万円の損失)となった。
人材サービス事業は人材紹介・人材派遣ともに引き続き順調に推移し、計画を超過して着地した。人材紹介では、自動車業界で半導体不足や東南アジアからの部品供給の遅れに伴う減産の影響により採用ニーズがやや鈍化したが、建設や電機・機械等、その他の分野では企業の採用活動が活発化してきていることに加え、看護師の採用ニーズも引き続き高い水準で推移した。こうした事業環境を背景に、注力分野の絞り込みや求人企業及び転職希望者との面談強化などきめ細かな対応等に取り組んだ結果、建設関連職種や製薬関連職種、各種エンジニア等を対象とした特定領域の人材紹介、看護師紹介が順調に拡大した。人材派遣では、医療・福祉分野で看護師ニーズが依然として高い水準で推移するなか、コロナワクチン接種に関するスタッフの派遣ニーズも発生したことで、看護師派遣の業績が順調に推移した。また、保育士派遣については、堅調な派遣ニーズを背景に業績が拡大した。
リクルーティング事業では、新卒採用領域において顧客企業の新卒採用ニーズが回復するなか、2022年3月卒業予定の大学生を対象とした新卒採用サイト及び2023年3月卒業予定の大学生を対象としたインターンシップサイトへの広告取り扱いが堅調に推移した。中途採用領域では、飲食業やサービス業等の一部を除き採用ニーズが回復しており、顧客開拓や営業強化に取り組んだ「Indeed」の取り扱いが大きく伸長し業績回復をけん引したことに加え、正社員及びアルバイト・パート募集のための求人広告の取り扱いが順調に推移した。また、緊急事態宣言解除後に備えてこれまで求人広告の出稿を抑制していた派遣会社の出稿ニーズが上向きとなり、派遣登録スタッフ募集向けの求人広告の取り扱いも改善した。さらに、ジャンプによる新卒採用戦略構築のためのコンサルティングやオンラインインターンシップの企画提案、採用担当者向け研修等が拡大した。
情報出版事業は売上高、営業利益ともコロナ禍前水準を超えるまでに回復し、中でも利益率の高いコンシェルジュサービスの業績拡大により営業利益は計画を大幅に超過した。2021年8月に石川県及び富山県にまん延防止等重点措置が適用された影響により顧客の販促マインドに陰りが見られたものの、顧客の採用ニーズの回復や創刊35周年を記念した「金沢情報」特大号の成功等により主力の生活情報誌が底堅く推移したほか、「Indeed」も引き続き好調に推移した。また、生活情報誌とともに各家庭に配布する折り込みチラシ等のポスティングは、既存顧客からの安定した販促ニーズを受けて好調に推移した。「ココカラ。」ブランドで展開するコンシェルジュサービスでは、転職領域が好調だったほか、新築注文住宅に関する住宅ローン減税への駆け込み需要が発生した住宅領域など全領域で増収となった。
IT・ネット関連事業は「日本の人事部」及びシステム開発事業が好調に推移し、計画を超過して着地した。「日本の人事部」関連サービスでは、コロナ禍による企業の業務効率化や省力化への関心の高まりや、人材採用及び人材育成関連企業の業況回復を背景に、「日本の人事部」の広告収入が大きく伸長した。さらに、2021年5月に開催したオンライン人事イベント「HRカンファレンス2021-春-」では、出展社数及び参加者数に加え売上高が過去最高を更新した。システム開発は、企業のシステム投資が徐々に回復し、開発エンジニアの獲得競争が激化するなか、細かなニーズを含め積極的な案件受注により顧客企業の裾野拡大を図るとともに、ラーニング事業からのエンジニアの異動等により開発リソースを確保したことで順調に拡大した。
海外事業は海外各国の人材紹介が順調に拡大し、業績をけん引したほか、上海の人事労務コンサルティングが好調に推移した結果、増収及び黒字転換となった。なお、海外各社に対しては、同社のグローバル事業本部が営業支援を行っており、国際間の転職支援(クロスボーダーリクルートメント)や現地での転職希望登録者獲得のためのサポート等に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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