エルテス Research Memo(1):2022年2月期上期は大幅な増収、第2四半期(四半期ベース)で営業黒字に転換
エルテス<3967>は、「次々と現れる新たなデジタルリスクに立ち向かい、デジタルリスクを解決すること」をミッションに掲げ、リスク検知に特化したビッグデータ解析技術を基に、企業を中心としたあらゆる組織が晒されるリスクを解決するためのソリューションを提供している。主力の「ソーシャルリスクサービス」は、SNSやブログ、検索サイトなどWeb上の様々なメディアに起因するリスクに対するソリューションを提供するものである。インターネットの普及やデジタルデバイスの進化により、利便性の向上と引き換えに様々なリスク(従業員による不適切投稿等に伴う風評被害やネット炎上等)が顕在化するなか、ソーシャルメディアの監視から緊急対応、その後の対応まで、顧客のリスクマネジメントをワンストップで支援する独自のポジショニングにより成長を実現してきた。最近では、社内のログデータを対象として情報漏えいなどを検知する「内部脅威検知サービス」も着実に伸びている。
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)を契機とする新たな事業機会の出現やデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)化の動きが加速するなかで、創業来の主力である「デジタルリスク事業」に加え、「AIセキュリティ事業」及び「DX推進事業」を新たな事業セグメントとして立ち上げた。今後は3つの事業による変革を進め、デジタル技術を軸とするユニークな事業基盤を確立していく方針である。
1. 2022年2月期上期決算の概要
2022年2月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比39.6%増の1,259百万円、営業損失が62百万円(前年同期は148百万円の損失)と、大幅な増収により先行投資を継続しながらも第2四半期(四半期ベース)で営業黒字に転換した。(株)And Security(旧 (株)アサヒ安全業務社)の連結効果により「AIセキュリティ事業」が大きく伸長したことに加え、主力の「デジタルリスク事業」についてもコロナ禍前(2020年2月期上期)の水準まで回復し、売上高は過去最高水準(上期ベース)を達成した。一方、「DX推進事業」は金融機関向け実証実験案件(スポット売上)の剥落により減収となったものの、自治体とのDXプロジェクトが順調に進捗している。損益面では、今後の事業拡大に向けた先行投資(人材採用やマーケティング投資等)の継続により営業損失の状態が続いているが、増収による収益の押し上げのほか、「デジタルリスク事業」の収益性向上、間接コストの見直し(オフィス縮小等)などにより、損失幅は大きく改善した。特に、第2四半期(四半期ベース)が営業黒字化したことは、今後に向けて好材料と言える。
2. 2022年2月期の業績見通し
2022年2月期の連結業績について同社は、期初予想を据え置き、売上高を前期比50.8%増の3,000百万円、営業利益を100百万円(前期は333百万円の損失)と大幅な増収により黒字転換を見込んでいる。「デジタルリスク事業」「AIセキュリティ事業」「DX推進事業」の3つの事業がすべて順調に伸びる見通しである。特に、And Securityの連結効果により「AIセキュリティ事業」が大きく伸びるほか、「デジタルリスク事業」についても、「ソーシャルリスクサービス」の伸びと「内部脅威検知サービス」の成長継続により大幅な回復を見込む。また、「DX推進事業」については、自治体との連携などにより電子政府(以下、デジタルガバメント)関連が増収に寄与する見通しである。損益面では、引き続き研究開発費の増加を見込むものの、増収による収益の押し上げや費用の低減により大幅な増益を実現し、通期で営業黒字転換を図る想定となっている。また、保有株式の売却による株式売却益の計上(特別利益)も予定している。
3. 成長戦略
2022年2月期より同社は、新たな中期経営計画「The Road To 2024」をスタートさせた。コロナ禍をきっかけにDX化への動きが加速するなかで、新たな事業機会を取り込むために、「AIセキュリティ事業」及び「DX推進事業」を創設し、事業構造の変革を進めていくことが最大のテーマとなっている。これまで主戦場としてきたSNS炎上対策というニッチな成長領域に加え、「デジタルガバメント関連」や「警備業界」など、成長率が高い領域、もしくは市場規模が大きい領域へ展開し、ユニークな事業基盤を構築する方向性である。3年×3期による9年の中長期を視野に入れており、1期目の3年間は「変革と基盤構築」に取り組み、2期目以降での「加速度的な成長サイクルの実現」を目指している。
■Key Points
・2022年2月期上期は「デジタルリスク事業」の回復や「AIセキュリティ事業」の拡大により大幅な増収を実現し、第2四半期(四半期ベース)で営業黒字に転換
・特に、筋肉質な収益体質への転換により、第2四半期(四半期ベース)での営業黒字化を達成。新規プロダクトのリリースや自治体とのDXプロジェクトでも一定の成果
・2022年2月期は期初計画を据え置き、増収及び黒字転換を見込む。また、株式売却益の計上(特別利益)を計画
・新たな中期経営計画をスタート。成長加速に向けて事業構造と基盤構築に取り組む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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