デリカフHD Research Memo(3):2021年3月期は経常損失計上も収益改善施策により損益分岐点は低減(1)
1. 2021年3月期業績の概要
デリカフーズホールディングス<3392>の2021年3月期の連結業績は、売上高で前期比21.5%減の31,725百万円、営業損失で1,467百万円(前期は571百万円の利益)、経常損失で1,031百万円(同641百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失で953百万円(同360百万円の利益)となった。コロナ禍による政府の緊急事態宣言が2020年4~5月に発出されたことを受け、主要顧客となる外食店舗の休業や営業時間短縮が相次ぎ、2021年3月期第1四半期の売上高が前年同四半期比45.0%減と過去最大の落ち込みとなったことが響いた。緊急事態宣言が解除された6月以降は徐々に売上も回復し、収益改善施策に取り組んだ効果もあって、第3四半期には経常利益で232百万円を計上するまでに回復を見せたが、2021年1~3月に2回目の緊急事態宣言が10都府県で発出されたことを受け、同社の売上も再度落ち込み、経常利益も損失に転じる格好となった。
なお、今回の収益悪化局面において同社は雇用を維持しており、営業外で雇用調整助成金397百万円を計上している。期末時点における従業員数は前期末比65名増加の601名、臨時雇用者数は同222名増加の1,805名となっている。
(1) 収益改善施策と月次業績
同社は収益回復に向けた施策として、グループ工場における作業工程の組み換えや人員配置の最適化(パート職員の勤務時間・日数の調整)を進めたほか、物流面では運行日を1週間7日体制から5日体制に切り替えるなどしてコストの削減を図った。そのほか、在庫管理の徹底や商品の廃棄ロスの撲滅、経費の削減等、徹底した効率化をグループ全社で取り組み、損益分岐点の引き下げに取り組んだ。こうした結果、月次ベースの経常利益を見ると、9月以降に単月ベースで黒字化するまでに回復し、年明け1~2月に再度赤字に転じたものの、3月は黒字転換を果たしている。3月の売上高は前年同月比で10.2%の増加となる一方で、損益分岐点は同8.7%下回っており、こうしたコスト削減施策の効果が出ているものと評価される。特に、工場の人員配置については従来、グループ工場の裁量に任せていたが、今回、本社主導で徹底的に見直しを行ったことで標準化が図られ、今後の需要変動局面においても柔軟に対応できる仕組みが構築できた点は大きいと言える。同様に、在庫管理についても受注が急減するなかで適正在庫をどうするかなど、多くの経験を得られたことは、今後の事業運営においてプラスになったものと評価される。
(2) 部門別売上高
部門別売上高を見ると、ホール野菜は前期比28.9%減の12,807百万円、カット野菜(真空加熱野菜含む)は同14.1%減の14,935百万円となり、初めてカット野菜の売上高がホール野菜を上回った。外食業界において、手間のかからないカット野菜を利用する外食企業が増えているほか、大手スーパーの総菜売り場向けにカット野菜の採用が進んだことや、コンビニエンスストア向けにカットフルーツの採用が決まるなど、品質の高さを強みにカット野菜で新規顧客の開拓が進んだことも、ホール野菜よりも減少率が小さかった要因となっている。その他については日配品の落ち込みにより、同20.3%減の3,982百万円となった。
(3) 業界別売上高
同社が開示している業界別売上高構成比を基に業界別の売上高増減率を試算すると、外食業界向けが前期比30.5%減の234億円、中食業界向けが同8.0%減の21億円、量販・小売店向けが同35.7%増の44億円、給食事業者向けが同4.7%増の11億円となり、そのほかコンビニエンスストア向けが1億円、BtoC/DtoC事業が3億円となる。外食業界向けについては、特に居酒屋業態の落ち込みが厳しく、ファミリーレストランについても2ケタ減少となった。ファストフード向けはコロナ禍の影響が軽微だったことに加えて、新規顧客の獲得が進んだことで増収になったと見られる。また、量販・小売店向けについては、営業を強化した効果もあり2ケタ増収となった。給食事業者向けについても、下期に大手給食事業者との取引開始によって増収となっている。
同社では市場環境の逆風が続くなか、新規顧客の獲得と既存顧客の売上深耕に積極的に注力し、2021年3月期はこれらで約43億円の売上を獲得した。前期実績が約18億円だったので大きく伸ばすことに成功している。特に、新規顧客の獲得では、ファストフードや回転ずし、給食事業者などで大手企業との取引を開始したほか、スーパーやコンビニエンスストアなどで販路を創ることに成功している。
(4) 生産・物流体制
生産面においては2020年4月に福岡FSセンターの稼働を開始した。同センターではカット野菜製造ラインに異物除去装置を開発・導入したほか、野菜ごみの完全リサイクルシステムや、フードテロ対策として最新のセキュリティシステムを導入するなど最新鋭の工場となる。ただ、有力顧客先の工場監査がコロナ禍の影響で2020年度下期へずれ込んだことにより稼働率が低迷し、結果、九州事業所の業績は売上高で1,629百万円、経常損失で289百万円となった。しかし、3月以降は新規顧客向けにカット野菜の出荷が順調に増えており、2022年3月期は売上高で25億円、経常利益で黒字転換が見込まれている。
九州事業所については従来、年間売上規模で約20億円程度であったが、今回のFSセンター稼働により将来的に40億円規模まで対応可能となる。また、物流面でも関西との幹線便を整備したことで、九州産の野菜を今まで以上に多く東名阪エリアに供給していくことが可能となっている。
そのほか、デリカフーズ北海道でも生産能力増強と効率的な事業運営を目的に本社を移転し、2020年10月より新工場でカット野菜の生産を開始した。従来、デリカフーズ北海道の売上規模は年間6億円強程度でカット野菜も外部から調達していたが、今後はカット野菜を自社で量産していくことで20億円規模まで拡大していくことを目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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