リソー教育 Research Memo(5):感染防止策が評価され「TOMAS」「伸芽会」は生徒数が増加し、増収を確保
2. セグメント別動向
(1) 学習塾事業
学習塾事業の売上高は前期比0.3%増の13,613百万円、営業利益は同87.5%減の143百万円となった。売上高はコロナ禍の影響で2020年4月に完全休校を2週間実施した影響により、2021年2月期第2四半期までは低迷したものの、徹底した感染防止策が評価され、第3四半期以降は生徒数回復により増収に転じており、通期でも若干ながら増収を確保した。利益面では、感染防止策費用や講師への特別手当支給等による人件費増加、2021年春に新規開設・移転リニューアルした新校舎に係る準備費用を先行的に計上したことなどが減益要因となった。
2021年2月期における新規出校は「インターTOMAS」1校(2020年3月桜新町校)のみで、生徒数増加に伴う移転または増床リニューアルを「TOMAS」で2校(8月藤沢校、11月成増校)実施した。また、期末時点における生徒数は前期末比2%増となった。
(2) 家庭教師派遣教育事業
家庭教師派遣教育事業の売上高は前期比7.7%減の4,753百万円、営業利益は同36.8%減の358百万円となった。コロナ禍の影響で「名門会」「TOMEIKAI」ともに2020年4月に教室での指導を約2週間休止したこともあり、生徒数が減少し減収要因となった。また、利益面では減収に伴う利益減に加えて、感染防止策費用等を計上したことも減益要因となった。生徒数の回復については「TOMAS」よりもやや遅れ、期末ベースでようやく前期末比横ばい水準まで戻った状況となっている。
2021年2月期の新規出校は、「TOMEIKAI」で2校(2020年5月名古屋御器所校、2021年2月四条烏丸校)となり、「名門会」では移転リニューアルを1校(4月藤沢駅前校)実施した。また、既存の対面授業に加えて双方向型のオンライン授業も新たに開始しているが、オンライン授業に関しては通塾を希望しない生徒や距離的な問題で通塾できない生徒に向けたサービスとなる。
(3) 幼児教育事業
幼児教育事業の売上高は前期比0.9%増の4,843百万円、営業利益は同4.4%減の738百万円となった。2020年4月から5月の約1ヶ月間にかけて「伸芽会」で完全休校した影響があったものの、例年業績のピークとなる2021年2月期第2四半期には生徒数がいち早く回復したこと、「伸芽’Sクラブ」の生徒数はコロナ禍においても増加基調が続いたことなどが増収要因となった。ただ感染防止策費用の計上等により、利益面では減益となった。
2021年2月期における新規出校はなく、生徒数の増加に伴い「伸芽’Sクラブ(学童)」の移転リニューアルを1校(2020年7月藤沢校)実施した。「伸芽会」「伸芽’Sクラブ学童・託児」を合わせた期末生徒数は前期末比12%増と拡大基調が続いている。
(4) 学校内個別指導事業
学校内個別指導事業の売上高は前期比10.3%減の1,344百万円、営業損失は272百万円(前期は82百万円の利益)となった。2020年3月から5月にかけて学校が休校となったことに伴い「スクールTOMAS」も休校となったことが減収要因となった。また利益面では減収に加えて、オンライン英会話事業の外注化により海外子会社の事業閉鎖関連費用を計上したことが減益及び損失計上の要因となった。
契約校数については、前期末の65校から70校と着実に増加している。また、コロナ禍において政府が推進するGIGAスクール構想の実現に向けた取り組みが活発化するなかで、オンライン授業や個別最適化授業等のノウハウを持つ同社への問い合わせ件数も増加しているもようで、契約校数のさらなる拡大が見込まれている。
(5) 人格情操合宿教育事業
人格情操合宿教育事業の売上高は前期比61.9%減の635百万円、営業損失は144百万円(前期は79百万円の利益)となった。コロナ禍により情操分野を育む体験型ツアーを一定期間自粛したほか、「TOMAS体操スクール」「TOMASサッカースクール」をそれぞれ2020年4月から5月の2ヶ月間にかけて完全休校としたことが収益悪化要因となった。
2021年2月期の新規開校スクールは、「TOMASサッカースクール」を3校(2020年4月東陽町校、水道橋校、9月立川校)、「TOMAS体操スクール」を1校(7月二子玉川校)新規開校している。
無借金経営で財務の健全性は高い
3. 財務状況
2021年2月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比725百万円増加の13,940百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では現金及び預金が873百万円減少した一方で、営業未収入金が1,320百万円増加した。また固定資産では投資有価証券が124百万円、新規校舎開設に係る敷金及び保証金が141百万円それぞれ増加した。
負債合計は前期末比308百万円増加の7,365百万円となった。流動負債では未払法人税等が100百万円減少した一方で、将来の売上につながる前受金が150百万円増加したほか、未払金が108百万円増加し、固定負債では退職給付に係る負債が181百万円増加した。純資産は前期末比417百万円増加の6,575百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益555百万円の計上と配当金440百万円の支出により、利益剰余金が114百万円増加したほか自己株式の処分により資本剰余金が282百万円増加した。
経営指標を見ると、2017年2月期以降は配当や自社株取得など株主還元を積極的に実施してきたため、自己資本比率が低下傾向にあったが、2021年2月期は減配した影響もあって前期末の45.9%から46.7%となり、5期ぶりの上昇に転じた。収益悪化により営業キャッシュ・フローが2020年2月期から大きく減少し損失計上となり、現金及び預金の水準は4期ぶりに減少したものの、40億円近い水準を維持し無借金経営を継続していることもあり財務内容は良好と判断される。収益性について見れば、営業利益率で4.0%、ROA、ROEで各8.8%と前期から低下したものの、感染防止策費用の計上や海外子会社の事業閉鎖関連費用などの一時的な費用増が主因で、事業そのものの収益力が低下しているわけではないと弊社では考えており、コロナ禍の影響が一巡する2022年2月期以降は収益性も上昇に転じるものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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