デリカフHD Research Memo(4):2021年3月期第2四半期累計業績は損失計上も、2020年9月は黒字化
1. 2021年3月期第2四半期累計業績の概要
デリカフーズホールディングス<3392>の2021年3月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比31.3%減の14,042百万円、営業損失で1,354百万円(前年同期は342百万円の利益)、経常損失で1,015百万円(同373百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失で776百万円(同233百万円の利益)となった。コロナ禍による政府の緊急事態宣言が2020年4月に発出されたことを受け、主要顧客となる外食店舗の休業や営業時間短縮が相次ぎ、2021年3月期第1四半期の売上高が前年同四半期比45.0%減と過去最大の落込みとなったことが主因だ。6月以降は売上高も徐々に回復に向かったものの、販売先の閉店等の影響をカバーできず、第2四半期の売上高も同18.2%減と回復は限定的となった。なお、今回の収益悪化局面において同社は雇用を維持しており、営業外で雇用調整助成金325百万円を計上している。
(1) 収益改善施策と月次業績
同社は収益回復に向けた施策として、グループ工場の人員配置の最適化(パート職員の勤務時間・日数の調整)を進めたほか、物流面では水曜日の配送休止や、夜間の受注対応業務の前倒し要請等を実施した。そのほか、経費面でも徹底的な削減に取り組み、筋肉質な収益体質に変えていった。また、調達面では2020年9月において台風等の自然災害が殆どなく好天に恵まれたことで、野菜の市況が安定し仕入率も改善した。こうした結果、月次ベースの経常利益を見ると、9月に単月で黒字化を達成したほか、前年同月比でも増益に転じるなど、足元は急速に収益が回復している。9月の売上高が前年同月比13.8%減、金額で468百万円の減収だったことから、月間の損益分岐点は5億円ほど下がったものと見られる。特に、工場の人員配置については従来、グループ工場の裁量に任せていたが、今回、本社主導で徹底的に見直しを行ったことで標準化が図られ、今後の需要変動局面においても柔軟に対応できる仕組みが構築できた点は大きいと言える。同様に、在庫管理についても受注が急減するなかで適正在庫をどうするかなど、多くの経験を得られたことは、今後の事業運営においてプラスになったものと評価される。
なお、11月以降は新型コロナウイルスの感染症が全国に再び広がっており、市場動向を注意深く見ておく必要はあるものの、外食業界で規模の大きい新規顧客の獲得や既存顧客との取引深耕が進んだことに加え、BtoC市場やDtoC市場への本格展開も開始する。再び緊急事態宣言が発出されるようなことが無ければ、2021年3月期第1四半期のような厳しい状況に陥るリスクは低いと弊社では考えている。
(2) 部門別売上高
部門別売上高を見ると、ホール野菜は前年同期比36.5%減の5,861百万円、カット野菜(真空加熱野菜含む)が同25.0%減の6,520百万円となり、初めてカット野菜の売上高がホール野菜を上回ったことになる。外食業界において、手間のかからないカット野菜を利用する外食企業が増えているほか、BtoC企業の取り込みを図るなかで、大手スーパーの総菜売り場向けにカット野菜の採用が進んだことや、コンビニエンスストア向けにカットフルーツの採用が決まったことなども、ホール野菜よりも減少率が小さかった要因と一因となっている。その他については日配品の落ち込みにより、同33.7%減の1,661百万円となった。
(3) 業態別売上高
同社が開示している青果物事業の業態別売上構成比を基に業態別の売上高増減率を試算すると、外食業界向けが前年同期比37.3%減の106億円、中食業界向けが同4.8%減の33億円、BtoC向けが0.3億円程度だったと見られる。日本フードサービス協会が発表している外食チェーンの月次売上高増減率の単純平均値では合計で同23.1%減となっており、同統計値との比較だと落ち込みが大きいが、総務省が発表している「産業サービス動向調査」における同期間における飲食店売上増減率は同39.0%減となっており、ほぼ同様の落込みとなっている。
外食チェーンの主な業態別前年同期比増減率との比較で見ると、ファミリーレストラン向けは業界全体が33.7%減だったのに対して、同社は40.4%減と落ち込みが大きくなっている。これは主要取引先において大量閉店や事業売却などの動きがあったことが影響しているものと見られる。一方で、ファストフード向けは業界全体が8.0%減だったのに対して、同社が8.6%増となった。これは新規大手顧客を開拓したことや、既存顧客での売上深耕が図られたことが要因となっている。また、居酒屋・パブ業態でも業界全体が67.0%減とコロナ禍の影響も最も強く受けるなかで、同社も55.8%減と大幅減となっている。業界全体よりも落ち込み少なかったのは、既存顧客との取引深耕が進んだためと考えられる。一方、中食業界向けのうち、弁当・総菜向けは22.8%減、給食向けは14.3%減とそれぞれ取引先の販売低調により減少したが、食品メーカー・問屋向けは新規顧客の開拓が進んだことで10.0%増となった。
同社では新規顧客の開拓と既存顧客の取引深耕を売上拡大戦略として取り組んでいるが、2021年3月期第2四半期累計期間においても、大手顧客の獲得並びに既存顧客の取引深耕が進んでおり、年換算では約12億円の売上獲得に成功している。新規開拓した大手顧客に関しては一部エリアから取引を開始しており、今後エリア拡大による取引深耕が期待される。
(4) 生産・物流体制
生産面においては2020年4月に福岡FSセンターが稼働を開始している。カット野菜や真空加熱野菜を量産していくことで今後の売上増加が見込まれる。同センターではカット野菜製造ラインに異物除去装置を開発・導入したほか、野菜ごみの完全リサイクルシステムや、フードテロ対策として最新のセキュリティシステムを導入するなど最新鋭の工場となる。九州エリアは従来、年間規模で約20億円程度であったが、今回のFSセンター稼働によりカット野菜などの売上が伸長し、将来的には40億円程度まで売上を拡大することが可能となる。また、物流面でも関西との幹線便を整備したことで、今後は九州産の野菜をより多く東名阪に供給していく予定にしている。
そのほか、デリカフーズ北海道(株)では生産能力増強と効率的な事業運営を目的に本社を移転し、2020年10月より新工場でカット野菜の生産も開始した。従来、デリカフーズ北海道の売上規模は年間6億円強程度でカット野菜も外部から調達していたが、今後はカット野菜を自社で量産していくことで20億円規模まで拡大していくことを目指している(最大能力は30億円)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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