3. 新製品の開発、既存製品の機能強化、ビジネスパートナーとの連携
既存顧客の深耕(リピート受注)と新規顧客の開拓強化に向けて、新製品の市場投入や既存製品の機能強化を継続的に積極推進している。基幹業務パッケージソフト「アラジンオフィス・シリーズ」は、機能追加によるバージョンアップを継続的に実施している。また様々な分野のビジネスパートナーと連携するアライアンス戦略も推進している。
複数ECサイト一元管理ソフト「CROSS MALL」は、2016年3月テモナ<3985>のショッピングカート付き通販システム「たまごリピート」と受注・在庫データを自動連携、2016年8月(株)キャッチボールのコンビニ後払い決済サービス「後払い.com」と連携、2017年10月法人・個人事業主向け購買専用サイト「Amazon Business」に対応、2017年11月三井不動産<8801>のECモール「Mitsui Shopping Park & mall」に対応、2018年4月ファッションECモール「ZOZOTOWN」(ZOZO<3092>)取り寄せ商品在庫に対応、2019年6月Amazon(アマゾン・ドット・コム
人材派遣会社向けスタッフ管理クラウドシステム「CROSS STAFF」は2016年3月マネーフォワード<3994>のWeb給与明細サービス「MFクラウド給与」と連携した。またBtoB EC・Web受発注システム「アラジンEC」は、2018年10月ヤマトクレジットファイナンス(株)の「クロネコ掛け払い」と連携し、Web上での企業間取引において与信管理から代金回収業務までの一括代行が可能になった。
また2017年6月には、クラウドサービス事業における差別化・業務拡大を推進するため、シビラと資本業務提携(出資比率5.5%)した。シビラの独自開発ブロックチェーン技術「Broof」を活用して、クラウドサービスのセキュリティ向上、在庫データのオープン化、企業・店舗・サービスを横断したオープンなプラットフォームの企画・開発・販売に共同で取り組む。そして2017年8月には業務管理クラウドサービス「CROSSシリーズ」にて、シビラが独自開発したブロックチェーン技術「Broof」の運用を開始した。
4. CROSS-OVERシナジー戦略
顧客に対する提案をより効果的に進めるとともに、強力なシナジー効果を生み出すため、リアル(システムソリューション事業)とWeb(Webソリューション事業)の両面から、顧客ニーズに合わせた複合提案を行い、中堅・中小企業の経営力アップを支援するCROSS-OVERシナジー戦略を特徴としている。業務効率化を支援するシステムソリューション事業の基幹業務システムと、販売力強化を支援するWebソリューション事業のサービスを有機的に結合させて「オール・ワンストップ」サービスを実現し、強力なシナジー効果を生み出すことを狙った戦略である。
5. 優位性・強み・特徴
同社の優位性・強み・特徴としては、(1)独立系企業、(2)中小企業市場への特化、(3)リアルとWebの両方への対応力と高シェア、(4)特化業種深耕戦略とパートナー戦略、(5)自社製品・サービス比率の高さ、(6)トータルソリューションを実現する商品生態系戦略、(7)高水準のコールセンター応答率、(8)社員の7割が技術職の体制などが挙げられる。
(1) 独立系企業
ソフトウェア企業の大まかな分類としては、メーカー系・ユーザー系・独立系、元請け・中間下請け・最終下請けなどに分けられるが、同社は創業以来独立資本による企業経営を行っているため、特定のメーカーやプラットフォームに限定されることなく、様々な分野のビジネスパートナーと連携することで、顧客にとって最適なソリューションサービスを提供できる強みがある。
(2) 中小企業市場への特化
会社創業以来、中小企業市場に特化して独自サービスを提供してきた。顧客企業数に占める割合は年商50億円未満の中小企業が約9割である。それらの取り組みが評価されて、2011年には経済産業省「中小企業IT経営力大賞2011」において、特別賞(商務情報政策局長賞)を受賞している。また経済産業省が推進する「サービス等生産性向上IT導入支援事業」の「IT導入支援事業者」に2年連続で認定されている。認定サービスは「アラジンオフィス」「アラジンEC」「CROSS MALL」「CROSS POINT」「CROSS STAFF」である。
(3) リアルとWebの両方への対応力と高シェア
市場競合優位性として、中堅・中小企業に特化してリアルとWebの両方を独自開発・提供できるという点が挙げられる。販売・在庫管理ソフトにおける市場占有率((株)富士キメラ総研調べ)で、リアルとWebとも10%超の市場シェアを獲得しているのは同社のみである。
(4) 特化業種深耕戦略とパートナー戦略
卸売業・小売業や製造業の中でも特に中小企業の多い業種に絞り込んだ特化業種深耕戦略も強みである。業種特化型システム開発や業種別専門チーム体制などサービス力・営業力で負けない体制を形成し、新規顧客獲得力アップにつなげている。具体的にはアパレル・ファッション業界、食品業界、医療機器業界、ねじ・金属部品業界、鉄鋼・非鉄業界を主力5業種と位置付けて、業種特化型パッケージソフト「アラジンオフィス・シリーズ」などによる市場深耕を推進している。
また新規案件紹介元・営業協力会社であるパートナー(銀行、SIer、IT機器メーカー、コンサル、会計事務所など)からの高い信頼も特徴である。システムソリューション事業の新規受注(金額ベース)のうち、パートナー紹介の割合は4割強、そして特化業種パッケージの割合は5割強となっている。
(5) 自社製品・サービス比率の高さ
価格変動に左右されやすいハードウェアなど他社製品の売上高に依存しない収益構造構築を経営方針の重要事項として、自社製品・サービスを中心とする拡販を推進している。その結果、売上高に占める自社製品・サービス(ソフトウェア・運用・保守・会費など)の比率は約7割と高水準である。
(6) トータルソリューションを実現する商品生態系戦略
複数の商品群からなる商品生態系戦略も強みだ。ネットショップ構築・運営支援サービスのインターネット領域、店頭での売上管理やバックヤードの在庫管理のリアル店舗・本部領域、さらにリアルとWebの在庫やポイントを一元管理するリアル・ネット融合領域をすべてカバーし、自社製品・サービスを開発している。そして様々な商品を組み合わせることで複合的な提案を可能にし、顧客へのトータルソリューションを実現している。
(7) 高水準のコールセンター応答率
システム操作方法などの問い合わせ窓口としてコールセンターを設け、迅速な対応による解決に取り組んでいる。顧客管理システムを活用し、問い合わせ窓口の一本化による迅速な対応と解決力、顧客情報の社内共有の徹底による安定したサポート対応などで、システムソリューション事業におけるコールセンター応答率は2019年7月期実績で業界最高水準の99.05%(放棄率は0.95%、一般的に放棄率5~10%を目標とする企業が多い)に達している。
(8) 社員の7割が技術職の体制
社員構成比は技術部門が7割、営業部門が2割、スタッフ部門が1割である。社員の7割が技術職の体制で、システム提供後のサポートも重視している。今後も技術部門の人員強化を継続するが、一方では労働集約型の生産体制から脱却するための環境整備や商品開発も推進する方針だ。
このようにリアルとWebを1社で提案できる優位性や強みの結果、攻めの力も守りの力も強く顧客企業数は増加基調である。また新規競合商談勝率やユーザーリピート率も高水準(2019年7月期のユーザーリピート率は98.2%)である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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