Shinwa Research Memo(4):18年5月期上期は太陽光発電販売が遅れるも、オークション事業は復調の兆し
1. 過去の業績推移
Shinwa Wise Holdings<2437>の上場後の業績推移を振り返ると、2006年5月期をピークとして2014年5月までは伸び悩みを続けてきた。特に2009年5月期はリーマンショックに伴う景気後退の影響を受けたことから取扱高及び売上高ともに大きく落ち込み、2期連続の営業赤字につながった。2011年5月期に黒字に転じたものの、その後も長引くデフレ経済の影響で、主力の近代美術オークションにおける平均落札単価が低迷し続けたことから、業績は停滞感のなかで推移してきた。
ただ、2014年5月期にデフレ脱却に向けた政策の影響などで近代美術オークション市場が緩やかながら回復基調に入ると、同社のオークション事業の業績にも一旦回復の兆しが見られ始めた。また、2014年5月期からは、新たな収益の柱として参入したエネルギー関連事業が連結化されると、2015年5月期以降、大幅な事業拡大により同社の業績の伸びをけん引している。2017年5月期も、オークション関連事業には伸び悩みがみられるものの、太陽光発電施設の販売拡大により過去最高の売上高を更新した。
財務面では、2013年5月期まではほぼ無借金経営を続けており、自己資本比率もおおむね70~80%の高い水準を維持してきた。エネルギー関連事業及び医療機関向け支援事業を連結化した2014年5月期以降は、太陽光発電施設の販売拡大に伴う運転資金や自社保有分を有利子負債で賄っていることから自己資本比率は大きく低下してきたが、財務基盤の安定性に懸念を生じさせる水準ではない。むしろ、これまでの手堅い財務方針が、成長に向けた攻めの姿勢に転じたことを反映したものとして捉えることができる。
2. 2018年5月期上期決算の概要
2018年5月期上期の業績は、売上高は前年同期比32.5%減の1,210百万円、営業損失が38百万円(前年同期は0.9百万円の損失)、経常損失が65百万円(同36百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失が73百万円(同37百万円の損失)と計画を下回る減収減益となり、損失幅が拡大した。
エネルギー関連事業の出遅れが減収要因となった。2017年4月に施行された改正FIT法による認定制度の大幅な変更が市場の混乱を招く中、これまで大きく拡大してきた低圧型太陽光発電施設の販売に遅れが生じたことが理由である。ただ、足元では混乱の収まりとともに挽回が進んでいるようだ。一方、しばらく停滞気味であったオークション関連事業が3期ぶり(半期ベース)に大きくプラスに転じたところは注目に値する。その他、ウェルスマネジメント事業(海外不動産販売の紹介)やミャンマーにおけるマイクロファイナンス事業については、まだ立ち上がったばかりであり、上期の段階では本格的な業績寄与に至っていない。
利益面でも、エネルギー関連事業の縮小や新規事業への先行費用により損失幅が拡大したものの、オークション関連事業だけで見ると黒字転換を実現している。
財政状態については、エネルギー関連事業における売掛金の減少等により総資産が前期末比7.7%減の5,936百万円に縮小した一方、自己資本は新株予約権の行使により同1.2%増の2,031百万円と若干増加したことから、自己資本比率は34.2%(前期末は31.2%)に上昇している。
各事業の概要は以下のとおりである。
(1) オークション関連事業
オークション関連事業は、取扱高が前年同期比48.3%増の1,965百万円、売上高が同113.5%増の836百万円、セグメント利益が32百万円(前年同期は101百万円の損失)と大幅な増収増益により黒字転換を実現した。売上高は、オークション事業が前年同期比16.7%増の285百万円と堅調に推移した一方、戦略的に取り組んでいるプライベートセール(相対取引)が同433.4%増の525百万円と大きく伸びた。オークション事業は出品数の拡大や平均落札価格の上昇などにより、4つのオークション種別※1がそれぞれ伸長した。その他オークションでもワインオークションが好調であった。一方、プライベートセールが大きく伸びたのは、2017年6月に新設した100%子会社Shinwa Prive※2へ切り離したことが事業の活性化につながった要因の1つとして挙げられる。なお、富裕層ビジネスの一環として開始した資産防衛のためのダイヤモンド販売については、「シンワダイヤモンド倶楽部」を発足した。
※1 近代美術、近代陶芸、近代美術Part2、その他(ワイン、宝飾品など)。
※2 アートディーリング画廊業を営む中核事業会社の1つ。
(2) エネルギー関連事業
エネルギー関連事業は、売上高が前年同期比74.0%減の363百万円、セグメント損失が67百万円(前年同期は101百万円の利益)と大きく出遅れた。2017年4月に施行された改正FIT法による認定制度の大幅な変更が市場の混乱を招くなか、これまで大きく拡大してきた低圧型太陽光発電施設(50kw級)の販売に遅れが生じたことが理由である。確実な連系が可能な仕入案件の厳選に想定以上の時間を費やしたことから、販売実績は計画50基に対して13基(前年同期は61基)にとどまった。ただ、利回りに着目した購入需要は引き続き旺盛であり、足元では混乱の収まりとともに挽回に向かって進んでいるようだ。一方、自社保有の太陽光発電所による売電収入については、兵庫県西脇市(800kw級)に加えて、2016年11月に取得した埼玉県秩父市(約2,300kW級)が期初から寄与したことから、上期において合計65百万円程度の売上貢献となったもようである。その他、マレーシアにおけるPKS事業については、まだ本格的な稼働には至っていないものの、徐々に取引(仕入及び販売)が増えているようだ。
(3) その他
その他は、売上高が10百万円(前年同期は4百万円)、セグメント損失が2.6百万円(前年同期は0.5百万円の損失)となった。海外不動産販売の紹介を中心とするウェルスマネジメント分野に参入し、米国テキサス州の中古不動産物件紹介事業を開始したものの、現地の税制及び経済状況、不動産事情を含め、収益物件としての魅力を訴求するために時間を費やしたことから本格稼働には至っていない。そのほか、ミャンマーにおけるマイクロファイナンスについては、まだ小規模ながら足元で伸びているようだ。
以上から、2018年5月期上期決算を総括すると、外部環境の影響(制度改正に伴う市場の混乱)等によりエネルギー関連事業に遅れが生じたことがマイナス材料となったものの、オークション関連事業がプラスに転じたところは好材料と言える。また、本格稼働には至っていないとはいえ、ポテンシャルの高い、様々な新規事業がスタートラインについたところも、今後の事業拡大に向けて一定の成果を残したと評価することができるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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