台湾・台北--(BUSINESS WIRE)--(ビジネスワイヤ) -- トレンドフォースの最新報告書「AMOLED Technology and Market Status(AMOLEDの技術と市場状況)」は、ディスプレーパネル業界がOLEDパネルを製造する大型世代工場の計画に着手したことを指摘しています。OLEDディスプレー技術の大型世代への移行は、関連するプロセス技術と材料が最近向上したことに後押しされています。また、ブランド各社はより大型のディスプレー製品でのOLED採用を促進しています。トレンドフォースの予測によれば、IT製品のOLEDパネル普及率は、それを支えるパネル生産能力が段階的に導入されることで、2025年までに2.8%に達します。そうなると、IT分野でのOLED普及率が2026年には目に見えて上昇し、5.2%に達すると予想されます。
トレンドフォースの分析によれば、パネルサプライヤーには、OLEDパネルの製造を既存のG6工場から大型世代工場に移行して、このディスプレー技術をIT分野に進出させる計画ですが、幾つかの領域で課題に直面しています。これらの領域は以下の通りです。
[1]蒸着装置
OLED蒸着装置と関連プロセス技術の選択に関し、一部のパネルサプライヤーは、垂直蒸着法によってファインメタルマスク(FMM)がたるむ問題が解決することを望んでいます。しかしながら、垂直蒸発は新しい処理方法であり、まだ技術的に多くの不確実性を克服する必要があります。既存の水平蒸着法については、パネルサプライヤーは、以前よりも少ない装置数で一定レベルの生産能力を維持できるように、最適化がさらに進むことを望んでいます。その上、アップルが同社製OLEDディスプレーの寿命を大幅に延ばすことができるツースタックタンデム構造(タンデムOLED)の採用を検討しています。パネルサプライヤーにしてみれば、OLEDパネルがタンデム構造を採用している場合、製造工場の一定スペースに納まるように蒸着処理の能力を設定することは、一層大きな困難をもたらします。ただし、OLEDディスプレーの寿命を延ばす代替的な解決策があります。その1つがOLEDピクセルシミュレーションを実行することであり、これによって青色のサブピクセルレイヤーが追加されるため、カラーバランスが向上し、色が長持ちしやすくなります。
ガラスの利用率の向上もまた、大型世代工場への移行の背後にある狙いの1つです。例えば、G8.7は現在、G8.5よりも生産効率が10%程度高くなっています。それにもかかわらず、ターゲット顧客には蒸着装置の優先サプライヤーがいる場合があります。アップルの場合は日本のキヤノントッキを好んでいます。そのためOLEDパネル基板の寸法は、トッキの蒸着装置が今後取り扱うことのできるパネル寸法によって制約される可能性があります。
OLEDパネルバックプレーンの製造技術に目を向けると、LTPOが消費電力の点で高い効率を提供します。また、大型OLEDパネルでは、画素回路内の既存の透明陰極をサポートするために、補助電極が必要になります。この補助電極によって導電性が高まり、それによって大型パネルで頻繁に生じるIRドロップの問題が解決します。一方、画素回路の製造に使用されるフォトマスクの数は、電極の位置によって決まるため、一定の設計では必要になるマスクの数が増えます。さらに、新しい電極を追加すると、OLEDパネルの透明性に影響を与える可能性があります。
[2]折りたたみ特性
フォルダブル(折りたたみ式)ノートパソコンにOLEDを採用する場合、カバーレンズに適した正しい材料を見つけることにも、ある程度の検討が必要です。現時点で極薄ガラス(UTG)は無色ポリイミド(CPI)よりも性能面で優れています。ただしUTGには、価格が高い、サプライチェーンが比較的未発達であるなどの欠点があります。サムスンは、同社のフォルダブルスマートフォンのOLEDディスプレーで「Color Filter on Encapsulation(COE)」を採用しました。このソリューションは、円偏光板を使用しないことでOLEDディスプレーの厚さを減らし、より高い輝度と一層優れた折りたたみ特性を実現します。フォルダブルノートパソコンというデバイスに関しては、スクリーンサイズが大きいため、グレアの影響を受けやすくなっています。そのため、円偏光板の採用を止めて反射光を効果的に吸収するには、既存のカラーフィルターに組み込まれているブラックマトリックスレジストに加えて、何らかの「ブラックピクセル規定層(BPDL)」が必要になります。しかし、有機色素で暗くなった比較的厚めの膜は、露光プロセスを使用した成膜や被覆が困難なため、BPDLの製造には課題があります。
[3]タッチ機能
スマートフォンのディスプレーパネルに標準装備されているタッチ機能を見ると、ディスプレーのサイズが大きくなるほど、環境ノイズの干渉を受けやすくなります。以前は、相互静電容量式センシングが性能の点で十分なものでした。しかし、現在はOLEDがタッチディスプレー式のノートパソコンに採用されているため、誤タッチの問題を解決するには、自己静電容量式センシングへの切り替えが必要になるかもしれません。ただし、センシング技術のこの変更には、ファンアウト領域全体が原因で底部のディスプレー境界の厚みが増すことがないように、タッチ回路設計と、タッチドライバーICおよびディスプレードライバーICのダイサイズの見直しが伴います。
[4]画像の残像
システムレベルにおいて、OLEDディスプレー上の画像の残像(焼き付き)は、スクリーン上でアプリのアイコンが配置されている部分で発生する傾向があります。これはアイコンが静止画像で位置が固定されているからです。この問題はOLEDピクセルの経年変化に関係しているもので、最初に発生して以来、継続的に研究されてきました。現在、アンチエイジングソリューションにはピクセルシフトとタンデム構造があり、それによってピクセル電流を半減できます。今後、OLEDの開発によって、焼き付きを効果的に解決できる時期が来るかもしれません。それまでの間、OLEDディスプレーでは、黒の背景と白のテキストを特徴とするダークモードも利用できるようになる可能性があります。
大型OLEDパネルの製造における上述の問題の概要に続き、トレンドフォースはIT製品におけるOLEDの採用に目を向けます。全体として、長期的な技術開発には主に3つの方向性があります。
[1]コスト削減
コスト削減は、ガラス利用率の向上、LTPO+COEプロセスの簡素化、電子輸送層(ETL)の最適化、主要材料の地元調達先の開発、より高度な蒸着装置の採用など、幾つかの方法で達成できます。IT製品向けの大型OLEDパネルの製造コストは、他の要因によっても低下します。例えば、UTGの価格はこの種の材料のサプライヤー数が増えるにつれて下がっていきます。さらに、フォルダブルノートブックのディスプレーヒンジの設計と材料に関しては、今よりも優れた選択肢が現れる可能性があります。最後に、材料の利用率が最も高いのが印刷プロセスです。従って、パネルサプライヤーは、タンデム構造やOLEDパネルの他の部品の製造に印刷プロセスを適用する方法を見つける必要が出てくるようになります。
[2]効率と信頼性の向上
パネルサプライヤーは、COEやマイクロレンズパネル(MLP)などの新技術を取り入れて、発光効率を高め、消費電力を低減しようとしています。それと同時に、パネルサプライヤーは既存のOLED材料の寿命を延ばそうと試みるでしょう。スクリーンの特定カ所に焼き付きが生じる問題をさらに抑えるには、OLEDピクセルの経年劣化の原因となる静止画コンテンツの問題に対処できる方法で、ユーザーインターフェースを設計する必要があります。
[3]用途の範囲拡大
柔軟性を備え、薄く、自己発光するOLEDパネルは、ユーザーのさまざまな状況に合わせて、違う折り曲げ方をすることができます。それと同時に、アンダーディスプレーカメラや指紋センサーなど、他の技術と統合することもできます。
つまり、OLEDは徐々にスマートフォンの主流になりつつあるということです。ただし、より大きなサイズのディスプレーを使用する他のアプリケーションに用途を拡大するには、克服しなければならない課題がまだ多く残っています。それにもかかわらず、従来のディスプレー技術としてのTFT-LCDは製品設計の点でほぼ完全に成熟しきっています。このように、想像の余地がはるかに大きいOLEDは、ブランド各社が今後注目することになる重要技術なのです。トレンドフォースは、IT製品市場におけるOLEDの成長にとっては今後1~2年が極めて重要な時期になると考えています。関連技術が向上する程度と、大型世代パネルの生産能力をサポートするための投資規模によって、IT分野でのOLED採用がスムーズに進むかどうかが決まります。
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