各位
シカゴ--(BUSINESS WIRE)--(ビジネスワイヤ) -- RMBキャピタル(米国イリノイ州シカゴ市、以下「RMB」といいます。)は、2019年10月9日に発表された株式会社バンダイナムコホールディングス(コード番号7832、東証第一部、以下「バンダイナムコ」といいます。)による株式会社創通(コード番号3711、東証ジャスダック、以下「創通」といいます。)に対する公開買付けについて、以下の理由により反対します。
本公開買付け成立後に予定されている創通の創業者株主と公開買付者(バンダイナムコ)との一連の取引が少数株主との重大な利益相反に該当し、均一の条件による公開買付けを義務付けている金融商品取引法に違反する可能性がある。
それにも関わらず、本公開買付けは「改定MBO指針」(本年6月策定)に示された公正性担保措置(特別委員会が独自のアドバイザーを選任し算定書を取得すること等)を全く考慮していない。
本公開買付けのリーガルアドバイザーが創業者株主親族の所属する法律事務所であり、独立性に疑義がある。
本公開買付価格の算定根拠の開示が極めて不十分である。
結果として少数株主にとって著しく不利な買付条件となっている可能性がある。
RMBは、創通の取締役会及び特別委員会が改定MBO指針に則り、積極的に少数株主利益の保護に努めるよう求めるとともに、バンダイナムコに対しては、本公開買付け後に予定している創通の創業者株主との一連の取引の遵法性について見解を示すよう求めます。
懸念1:創業者株主の重大な利益相反取引(ジェイ・ブロードの譲渡等)と法令違反の可能性
発表資料によると、本公開買付け成立後に、創通が87%を保有する子会社である株式会社ジェイ・ブロード(以下、「ジェイ・ブロード」といいます。)を創業者株主に譲渡することを予定し、公開買付者であるバンダイナムコと創業者株主が条件を交渉中であるとのことです。また、創業者株主が所有する株式会社創通エンタテインメントの株式をバンダイナムコの完全子会社となった創通が譲り受ける予定とのことです。RMBはこれらの取引が創業者株主による重大な利益相反取引に該当し、また、均一の公開買付条件を求める金融商品取引法に違反する可能性があると考えます。
ジェイ・ブロードは主に就職活動サイトの運営を行っている非上場企業で、特に薬学系の学生の就職支援では業界トップの実績があります。また、直近決算では純利益384百万円、株主資本2551百万円とのことです。(注2)、これらはそれぞれ創通連結純利益の約2割、同じく連結株主資本の10%超を構成し、ジェイ・ブロードが創通の重要な子会社であることは明らかです。そのような重要な子会社の処分を、譲渡価格等の条件を一般の株主に一切開示しないまま、公開買付け後に創業者株主のみに譲渡することは不当であり、重大な利益相反の可能性があります。仮に、創業者株主がジェイ・ブロードをバンダイナムコより低価格で譲り受け、また創通エンタテインメントを高価格で譲り渡す代わりに、あえて低い公開買付価格を受け入れる、ということであれば、少数株主との利益相反が生ずる可能性があるだけでなく、株主間の公平を図るために均一の条件による公開買付けを義務付けている金融商品取引法第27条の2第3項の規定に反する可能性があるものとRMBは考えます。
懸念2:本公開買付手続きが改定MBO指針に則っておらず公正でない
創業者株主・公開買付者と少数株主との間に利益相反が存在する本件のような公開買付けについては、従前より「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」(以下、「MBO指針」といいます。)において手続きの公正性を担保するための措置が示されていました。そして、より少数株主を保護すべきという観点から、本年6月にMBO指針が全面的に改訂され、「公正なM&Aの在り方に関する指針」(以下、「改定MBO指針」といいます。)が経済産業省によって策定されました(注1)。しかし、本公開買付けの手続きは、一貫して改定MBO指針を無視した旧態然とした内容に終始しており、同指針の趣旨である少数株主の保護が適切に図られていないとRMBは考えます。特に、改定MBO指針においては特別委員会が少数株主のために独自のリーガルアドバイザー及びフィナンシャルアドバイザーを選任し、少数株主利益保護の観点から株価算定書を作成し公開買付価格の妥当性を精査するよう要求していますが、本公開買付けにおける特別委員会は独自のアドバイザーを選任しないばかりか、後述の通り独立性について問題があるリーガルアドバイザーの助言を受け、取締役会が取得した株価算定書を追認するのみに終わっています。
このように、本公開買付手続きは改訂MBO指針に則っていないことは明らかであって、その手続きが公正であると認めることはできません。
懸念3:創業者株主親族が所属するリーガルアドバイザーの独立性に対する疑義
本公開買付けにおいては取締役会、及び特別委員会のリーガルアドバイザーとしてTMI法律事務所が選任されていますが、RMBは同法律事務所の独立性について強い疑義を持っています。上述の通り本公開買付けにおいて創業者株主と少数株主との間に重大な利益相反の可能性があるため、リーガルアドバイザーは、創業者株主より明確に独立している必要があります。しかしTMI法律事務所は、創業者株主の長男であり創通社外取締役である那須勇太氏が2011年1月より現在に至る8年9ヶ月に渡って所属している法律事務所です。このような創業者株主と強い人的繋がりのある法律事務所をリーガルアドバイザーとして選任することは、リーガルアドバイザーの独立性について強い疑義を生じさせるものであり、上述の利益相反の可能性と相俟って、少数株主利益保護の観点から重大な問題があるといえます。そして、同法律事務所が本公開買付けの手続き及び取締役会・特別委員会の意思決定に重要な影響を与えたことを考慮すると、公開買付価格を含む本公開買付け全体の手続きの公正性が強く疑われるとRMBは考えます。なお、創通取締役会は那須勇太氏「が創業者株主の長男であるため利益相反の疑いを回避し本取引の公正性を担保するために」同氏を審議及び決議に参加させていないことからも、利益相反の可能性を認識していたことは明らかです。それにも関わらず同氏の所属する同法律事務所をリーガルアドバイザーとして選任したことは、創通取締役会及び特別委員会による重大な善管注意義務違反であるとRMBは考えます。
懸念4:公開買付価格の算定根拠が全く開示されていない
本公開買付けにおいては、公開買付価格の算定根拠にについて他の一般的な公開買付けと比較しても極めて限定的な情報開示しか行われておらず、少数株主利益保護の観点から不当であるとRMBは考えます。すなわち、(1)類似企業比較法において比較対象となった企業名が一切開示されていない、(2)DCF法において、創通の業績予想、割引率、永久成長率等の前提条件が全く開示されていない、等が挙げられます。バンダイナムコにおいてガンダムのプラモデル工場の新設(2020年秋稼働予定)と4割もの増産が予定されていること、また、ハリウッド実写映画の公開によりガンダムのグローバル展開の加速が計画されていること、は既報のとおりであり、それに伴って創通の業績も大きく成長することが期待されます。それにも関わらず本公開買付価格の根拠を秘匿し、不当に低い株価算定を行っているとすれば、少数株主利益保護の観点から重大な問題であるとRMBは考えます。
懸念5:公開買付価格が不当に低い可能性
RMBは、バンダイナムコが提示する公開買付価格3100円は少数株主にとって不当に低い価格であると考えます。同公開買付価格を前提とすると、創通、すなわち日本で最も価値のあるIP(知的財産権)のひとつであるガンダムの価値が僅か約400億円(注3)と評価されていることになります。この価格は、創通におけるフリー・キャッシュフローをもってすれば約10年で回収できる金額でありますが、今年40周年を迎え、今後更にグローバル展開が期待されるIPとしては低すぎる評価であると言わざるを得ません。また、同公開買付価格が想定するガンダムの価値は、他の日本発グローバルIP、例えば「ハローキティ」が約1700億円、「ドラゴンボール・ワンピース」が約1900億円(注4)と評価されていることを考慮すると、著しく低い水準です。
なお、RMBは、創通における合理的な業績見通しと適正な割引率等の前提条件に基づき、同社株式の公正な価格は少なくとも一株あたり約4600円であると試算しています。
以上の懸念を払拭し、少数株主利益を保護するため、RMBは創通取締役会及び特別委員会に以下の事項を実行するよう要望します。
要望1:利益相反取引に関する詳細の開示と説明
取締役会及び特別委員会は、上述の創業者株主による利益相反取引(ジェイ・ブロードの譲渡等)について詳細な情報を開示するととともに、公開買付け後に創業者株主のみを対象としたこれらの取引を行うことが少数株主利益を損なわないと判断した理由を説明するよう求めます。また、バンダイナムコに対しては、本公開買付け後に予定している創業者株主との一連の取引が、均一の条件による公開買付けを義務付けている金融商品取引法に照らし適切かどうか、説明するよう求めます。
要望2:改定MBO指針に則した公正な手続きの実施
本公開買付けにおいては、RMBが主張するように、また、創通取締役会も認めるように、創業者株主と少数株主の間に重大な利益相反の可能性があります。そのような利益相反を回避し、少数株主利益の保護を適切に行うため、改定MBO指針に則った公開買付け手続きを行うよう創通取締役会及び特別委員会に求めます。特に、特別委員会が独立したリーガルアドバイザー、フィナンシャルアドバイザーを独自に選任し、算定書を取得・開示することは少数株主利益の保護のために不可欠であるとRMBは考えます。
要望3:株価算定根拠に関する十分な情報開示
本公開買付価格が真に妥当であるか検証するために、株価算定の根拠となった類似企業、創通の業績予想、DCF法における割引率や永久成長率等の前提条件を詳細に開示するよう創通取締役会及び特別委員会に求めます。
前述の通り、本年6月に策定された改定MBO指針では少数株主の利益を適切に保護することが謳われています。そして、同指針は取締役会及び特別委員会が少数株主利益のために行動すべきと明示しています。日本を代表するエンタメIPであるガンダムの歴史的な節目にあたって、創通取締役会及び特別委員会が積極的に少数株主利益を保護するとともに、バンダイナムコが法令を遵守した公開買付けを実施することを期待します。
以上
注1 令和元年6月28日 経済産業省プレスリリース「「公正なM&Aの在り方に関する指針-企業価値の向上と株主利益の確保に向けて-」を策定しました」https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190628004/20190628004.html
注2 官報掲載「株式会社ジェイ・ブロード 第45期決算公告」より
注3 本件公開買付価格に基づく創通のEV(エンタープライズ・バリュー)が約200億円と想定し、創通がガンダムIPの約50%を保有していると仮定し、RMB試算。
注4 「ハローキティ」については株式会社サンリオ、「ドラゴンボール・ワンピース」については東映アニメーション株式会社のEV(エンタープライズ・バリュー)を基準にRMB試算。
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