ウェザーマップ所属の気象予報士が、生活に役立つ気象情報をお届けします。今回は、子育てをしながら気象予報士資格を取得した池田沙耶香氏が、「ベビーカーで赤ちゃんの熱中症が起きやすい理由とその対策」について解説します。
もっとも身近に潜む気象災害・猛暑と熱中症
2018年は、埼玉県・熊谷で41.1℃まで気温が上がり、国内の最高気温記録が更新され、2019年も5月に北海道・佐呂間で39.5℃を観測し5月の最高気温記録を更新しました。
「年々、気温が高くなっている」と実感されている方も多いと思いますが、このような気温の上昇に伴い増加するのが、熱中症のリスクです。
厚生労働省の調査によると、2018年の6月から9月までに熱中症で亡くなった方は1,518名にものぼるそうです。
気象災害というと、台風や土砂災害などを思い浮かべますが、「災害級の暑さ」という言葉まで生まれた昨年のような暑さは、今やもっとも身近に潜む気象災害と言えるかもしれません。
乳幼児は要注意!熱中症リスクを高める3つの要因
さて、環境省によりますと
・気温が高い、湿度が高い、無風などの「環境」
・高齢者、乳幼児、睡眠不足などの「からだ」
・激しい運動、長時間にわたり水分補給をしないなどの「行動」
この3つの要因が重なることで身体に熱がこもり、熱中症にかかるリスクが高まることがわかっています。
特に乳幼児は、まだ体温調節機能が発達しておらず、汗をかく機能が未熟で外気温の影響を受けやすいため、身体に熱がこもりやすくなっています。
さらに、自分で水分補給をすることも出来ませんし、「喉が渇いた」と伝えることも難しいので、周りにいる大人が常に気にかけ、様子を見ることが重要です。
赤ちゃんの熱中症 車内だけでなくベビーカーも危険
近年、車に置き去りにされた子供が熱中症にかかってしまう。という痛ましい事件がありますが、もっと見落としがちな所にも熱中症の危険があります。
それが「ベビーカー」です。
お出掛けの際や、お散歩など、赤ちゃんをベビーカーに乗せて外出する機会は多いと思いますが、厳しい暑さの中、長時間ベビーカーに乗せたままにしておくのは、意外と危険です。
私も娘が赤ちゃんの頃、なかなかお昼寝が出来ずにぐずっている娘をベビーカーに乗せて、あてもなくフラフラとお散歩した経験が何度となくありますが、そういう場合は、しっかりと暑さ対策をし、赤ちゃんの様子をこまめに確認しないと、気づかぬうちに熱中症にかかってしまうおそれがあるんです。
ベビーカーの中は気温より暑い?日除けシェードでサウナ状態のことも
そもそも、気象庁から発表されている「気温」は、「風通しの良い日陰で、地面から1.5メートルの高さで計った気温」です。
小学校などで「百葉箱」を目にしたことはありますか? 気象庁ではもう少し近代的な機械を使用していますが、条件は同じです。
気温の観測を行っている「電気式温度計」の構造を見てみると、温度計は断熱材で日射や反射光を遮られ、ファンのついた通風筒で風通しを良くした環境に設置されています。この状態で観測された気温が「40℃を超えた!」と記録になっているのです。
でも、普段私達が生活している環境はもっと悪条件だと思いませんか?
太陽のギラギラ照り付ける道、風もなく、モワっと肌にまとわりつく蒸し暑い空気。
つまり、街中には、気象庁から発表されている「気温」より高い気温になっている場所がたくさんあります。
特に、地面に近いベビーカーの中の気温は、アスファルトからの照り返しの熱によって、大人が感じている気温よりも高くなっています。
さらに、日除けのシェードを付けていると、風通しが悪くなり、ベビーカーの中はサウナ状態になっているおそれがあるんです。
【ベビーカーの熱中症対策1】日除けシェードはメッシュタイプを
かといって、ベビーカーを使わない。という訳にもいきませんから、少しでもベビーカー内の気温を下げる対策が必要です。
直射日光を遮ることは、気温上昇を抑えるために有効ですから、日除けのシェードは是非活用してください。
ただ、サウナ状態を防ぐために、一部がメッシュになっている物を選んでください。
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さらに、最近よく見かけるハンディタイプの扇風機で風を送るのも効果的です。(暑さと同様、気温の低下に対する体温調節機能もまだ十分でないので、直接赤ちゃんに風が当たり続けないよう、配慮をお願いします)
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【ベビーカーの熱中症対策2】アスファルト舗装の道をなるべく避ける
そして、実は「アスファルト舗装の道を避ける」というのも効果があります。
都心では、アスファルト舗装された道ばかりですが、お散歩ならば街中よりも公園内を歩くなど、ちょっとした心掛けで変わります。
アスファルト舗装された道の方が歩きやすいし、ガタガタ揺れず赤ちゃんも快適かな?と思い、私はあえて舗装された道を選んで歩いていましたが、土や芝生の地面よりも、アスファルトの方が照り返しが強く、温度が高くなってしまうんです。
実際、気象庁の気温もより正確な値を出すため、「露場(ろじょう)」という芝生の上で観測しています。
定期的に様子を確認することも忘れずに!
そして、私のように赤ちゃんを寝かしつける為にお散歩している場合は、赤ちゃんが静かになっても「やっと寝たな。あと少し歩いて、しっかり寝入ってから帰ろう」と、具合が悪くなった事に気付かず散歩を続けてしまうことも考えられます。
赤ちゃんの変化に素早く気付くためにも、必ず定期的に様子を確認、長時間なら水分補給も忘れないようお願いします。
暑い日が続くと、外に出掛ける事すら億劫になってしまいますが、しっかりと暑さ対策をしてお散歩すれば、赤ちゃんも機嫌がよくなったり、ご近所の方と話す機会が出来たりと、とても気分転換になります。
赤ちゃんだけでなく、お母さん、お父さんも熱中症には注意しながら、ぜひお散歩を楽しんでください。