ビジネスライフ読者の皆様、こんにちは。
前回のインタビューでは、朝ごはんを食べたくても時間がない人を代表して、リュウジさんに手軽で激ウマな「爆速朝ごはん」を教わりました!
後編では、「自炊を続けるにはどうすればいい?」「リュウジさんにとっての料理とは?」など、突っ込んだ質問をぶつけてみました!
料理研究家 リュウジ
料理研究家。「今日食べたいものを今日作る!」をコンセプトに、Twitterで日夜更新する「簡単・爆速レシピ」が人気を集める。フォロワー数約53万人(2019年2月現在)。WEBサイト「アイスム」「フロムエーしよ!!」「味の素パーク」「ひとり暮らしLab」「アリシー」「LIMIA」などでも精力的にレシピを掲載中。Twitterアカウント:@ore825 Instagramアカウント:@ryuji_foodlabo
自炊を続けるコツは、人に発信すること
——「自炊がんばろう!」と思っても、なかなか続かない人が多いと思うんです。自炊へのモチベーションを高めるためには、どうすればいいでしょうか?
そうですね、個人的には「自分ひとりが食べるためだけに自炊をがんばる」って難しいと思います。
「食べてそれで終わり」だと、自己完結しちゃいますよね。それだと、「美味しかった」とか「イマイチだった」という味の感想以外、何の反応も成果もないですから。
そこでオススメしたいのが、つくった料理をSNSにアップしたりして、「自炊した」ということを発信して、目に見えるようにすることです。そうすれば、何か反応が返ってきたり、どれくらい見られているかというのも数字で知ることができますよね。それが次へのモチベーションにつながると思います。
——なるほど!ただ「食べた、美味しかった」だけじゃなくて、「こんなのつくってみたよ」と発信することがカギであると。
そうです。わかりやすい例だと、筋トレがありますよね。体重が減ったり、体型が変わっていったり、変化が目に見えるからこそ多くの人が続けられるんだと思います。その点、料理をただ食べた場合の成果ってわかりづらいですよね。たとえば「健康になる」「痩せる」って言っても、何週間、何ヶ月で目に見えるようになるのかわからないですから。
——たしかに。その点、SNSで「いいね」がつくのはわかりやすいですもんね。
要は、成果が目に見えないと、モチベーションは上がらないと思うんです。
なので、「自分は自炊したんだぞ!」ってみんなに見せびらかすくらいがちょうどいいと思います。
無理にSNSじゃなくても、家族や恋人、友人に「今日こんなのつくったよ」って写真を送るだけでも十分です。そうすると、人に見せるわけですから、自然に盛り付けとかにも気をつけるようになるんですよね。
もちろん、とくに誰にも見せずに一人で料理を楽しんでいる方もいらっしゃるし、それを否定しているわけではありません。ただ、これから自炊を始めたい方には、「誰かに発信する」ことをオススメしますね。それこそ、ぼくに送ってもらってもいいです!さすがに全部は見れないですけど、どうにか「いいね」ぐらいはするので!
——たしかに、リュウジさんは積極的にフォロワーさんたちがつくった料理を「いいね」したり、リツイートしたりしていますよね!つくっている方のモチベーションを上げる狙いもあったんですね。
それもあるんですが、やっぱり「自分が考えたレシピをこれだけの人がつくってくれた」って反応があると、嬉しいんですよね。「こんなに見てもらえたんだ」って。これでぼくのモチベーションも上がっているわけです(笑)。
自炊の利点って何?
——でも、中には「自炊したいけど、安いし楽だからコンビニで買ってしまう」という人も多いかと思うんですが、その点で自炊の利点って何なんでしょう?
たしかに、コンビニで100円ちょっとでおにぎりが買えちゃう時代ですからね。そこでどういう風に自炊のモチベーションを上げていくかっていったら、もう人に発信して巻き込むしかないです。
SNS、メール、ブログ、なんでもいいので発信して欲しいですね。そうしたら「この人リュウジのレシピつくってるんだ、フォローしてみよう」とか「これ美味しそうだからやってみます!」みたいな感じで、コミュニケーションが生まれますから。
あとは、「料理する自分っていいな」って思ってもらえれば嬉しいですね。ぼくのレシピは簡単なので、1品2品くらいつくれば、もう「料理できる人」になるわけじゃないですか。「簡単に料理女子/料理男子になれるレシピ」って感じで、気軽に挑戦して欲しいですね!
今回ご紹介したレシピも恐ろしく簡単なので、ぜひ試してみてください!初めて料理する方でも絶対にできます!
——そうですね。みなさん、「茄子バタごはん」と「サバ缶の即席あら汁」、めちゃくちゃ美味しいので、ぜひつくって発信してみてください!
→NEXT:最強バズレシピ「じゃがアリゴ」はどうやって生まれた?
リュウジさんにとって料理とは?
——リュウジさんは、それこそ毎日自炊して新しいレシピを開発されているわけですが、どうやって料理へのモチベーションを維持しているんですか?
「みんなに料理をしてもらえること」がすごく楽しいので、それがモチベーションになってますね。
——その「料理をしてもらいたい」という気持ちは、どういったふうに生まれたんですか?
ぼくは「趣味」と呼べるものが、料理しかないんですね。だから、基本的に料理のことしか人と話すネタがないんです。でも、ぼくの周りには料理をする人がまったくいなくって……。
——じゃあ、話が合う人がいない!
そうなんです!それでも「料理の話をしたい」ってずっと思っていて、どうすればいいかって考えたときに、「じゃあ、みんなに料理してもらえるようにすればいいじゃん!」って思いついたんです。
それで、最初は誰も見ないような料理のブログをやってたんです。そこからSNSに移行したら、いつの間にかこんな感じになってました。
——もともとは「ただ料理友達が欲しかった」ということなんですね!
そうです。自分が料理の話をしたいがために、みんなに料理をしてもらいたいみたいな(笑)。ぼくにとって、料理はコミュニケーションのひとつなんです。
なので、Twitterとかで料理についての話をするのが大好きで。たまに炎上っぽくなって、ぼくも怒ってるみたいに思われちゃうんですけど、それは誤解で、実はめちゃくちゃ楽しいんです。
基本的にはSNS大好きで、ぼくのアカウントのフォロワー数は今50万人くらいなんですけど、みんな料理が好きってことじゃないですか。料理を通じてこれだけの人と繋がれるっていうのが、今すごく面白いと感じてます。
「じゃがアリゴ」はどうやって生まれたの?
——フォロワーの多さに代表されるように、リュウジさんといえば「バズる」ことで有名ですよね。いままでにいちばんバズったのは、どのレシピだったんですか?
「じゃがアリゴ」ですね!これはダントツです!
——やはり!すごいバズってましたね!このレシピはどうやって思いついたんですか?
アリゴはマッシュポテトとチーズを練り上げたフランスの郷土料理なんですが、前にその簡易版をレンジでつくったんです。本場は鍋でやるんですけど(笑)。それをつくったときに「もしかしたらじゃがりこでもできるんじゃないですか」ってコメントをもらって、「たしかにじゃがりこでもつくれる!」と思ったんです。
でも、ただじゃがりこでつくっても意味ないから、めちゃくちゃ簡単にしようと思って。「どうしようかな〜」と考えてたら、さけるチーズが火を通すと意外と伸びることを思い出したんです。そしたら、うまくできました。
それをツイートしたら、その日のうちから反応が凄まじかったですね。
——私も「つくってみた」投稿がすごく多かったのを覚えてます!でも市販のお菓子を使う料理研究家の方ってだいぶ珍しいですよね。
これくらいはっちゃけてやる人はあんまりいないかもしれないですね。あまり食材に対してこだわりがないんですよね。「これじゃないといけない」っていう固定観念があまりないので、「どんな食材がきても美味しくする」っていうポリシーでやってます。
なので、硬派な方とは話が食い違うこともあって、それこそ炎上っぽくなったりもするんですけど……。それでも、自分の考えを発信することで、それに共感してくれた人がぼくのレシピを見て、料理をつくってくれればいいな、と思ってます。ぼくは人に料理をつくってもらうことしか考えてないので(笑)。
→NEXT:肩書きのない自分はバズるしかないと考えた
料理の味にこだわらない
——レシピを考えるときに、「工程を簡単にすること」「素材にこだわりすぎないこと」以外で意識していることってありますか?
味つけにもこだわりすぎないことですかね。人にはいろんな味の好みがあるので。辛いのが好きな人も酸っぱいのが好きな人もいて、脂っこいものが好きな人もいるわけですから。
そこで、ぼくが提供できることっていえば、調理法なんですよね。味付けは「おまかせします」って感じです。ぼくのレシピは「この味を味わってくれ」っていうより、「こういう料理があるよ、こういうつくり方もできるよ」っていう、プレゼンの感覚に近いんです。
なので、「ぼくはこれでつくってますけど、もっと塩入れてもいいですよ」とか、逆に「味が濃かったら減らしていいですよ」とお伝えしてます。自分の好きな味がいちばんの味ですからね。
そして、ゆくゆくは自分でレシピを考えて料理ができるようになって欲しいですね。ぼくはその足がかりになれればいいと思ってます。
——味にこだわらない料理研究家さんっていらっしゃるんですね!
珍しいですよね(笑)。でも実際、「誰と食べてるか」「どんな雰囲気で食べるか」「誰がつくるのか」「誰のレシピなのか」で味わいは変わってきますから。
さっきお話ししたように、ぼくはもともとホテルマンなので、それがすごくわかるんです(前編参照)。たとえば、給仕のサービスをするときも、メニューの説明をするかしないかでお客さんの反応が全然違うんです。それは、「この〇〇ソースを少しつけて召し上がってください」とか「これは〇〇産の〇〇です」とか、ほんとうにちょっとしたことなんですが、そこに興味を持ってくれた方は、やっぱり「これおいしい!」っていう感じで反応してくれるんです。
だから今もレシピの提供の仕方にはかなりこだわってます。「革命的においしい」とかキャッチコピーをつけたりするのもその一環です。いかに味の想像を膨らませるかを考えてますね。そういった取り組みとTwitterの相性がいいのかなと思います。
多分ぼくぐらいの料理できる人っていうのは、結構いると思うんです。ただ、他の料理研究家の方に比べて、SNSマーケティングっていうのを理解していて、素材や味にこだわってないところがぼくの強みなんだと思います。
——たしかに、ここまでSNSで目にする料理研究家は、他にはいらっしゃらないですね。
バズることが唯一の武器
——リュウジさんには料理の先生っていらっしゃるんですか?
ぼくは誰からも料理教わってないんですよ。
——え!じゃあ、料理はすべて独学で身につけたんですか?
そうですね。教えてもらおうにも、ツテがなかったんですよね。
ぼくは自分で「料理研究家」って言い出して、ネットで注目してもらえるようになっただけなので、今でも「他の方々はどうやって料理研究家になったんだろう?」って疑問に思ってるくらいです。
だから、肩書きもまったくないんです。主婦でもなければ、修行経験も何にもない、元ホテルマン。他の方は管理栄養士とかソムリエ、家政婦とかいっぱいあるじゃないですか。ぼくはそういった肩書きがまったくなかったので、Twitterでバズるしかなかったんです。
——Twitterでバズることが唯一の武器だったんですね。
そうですね。それしかみなさんを納得させられなかったんですね。だからそこだけは、すごいがんばりました。
たとえば、元ホテルマンの自称・料理研究家と、イタリアで何年も修行してきたシェフだったら、どっちの料理食べたいですか?
——それだけ聞くと、普通は後者になりますね。
ですよね。とくに日本は肩書き重視なので、どれだけ説得力を持たせるかが大事なんです。そこだけは昔からわかっていたので、肩書きのない自分はバズるしかないと考えたんです。
——そこで戦略的にこだわりを捨てて、バズに特化したコピーをつけて、レシピを投稿し始めたということですね。それはいつごろの話なんでしょう?
1度何かでバズって、フォロワーさんが1万人くらいのときからですね。
そこで書籍化の話がきたんです。でも編集の方から「ちょっとフォロワー足りないですね」って言われまして。それですごい落ち込んでしまって……しかも「目標は10万です」って言われて……。
ただ、そのときは落胆したんですけど、2〜3日後に怒りに変わってきたんですよ。「せっかく本を出せると思ったのに、フタを開けてみたら『もっとがんばれ』って言われただけじゃん!」と思って。自分の中で何かがブチ切れてしまって、そこから「10万に増やしてやろう」と思って、戦略を立てるようになったんです。もう悔しくって(笑)。
今思えばその出来事があったから、ここまで来れたのかもしれませんね。
——そうだったんですか……!でも、今はもう、そのときの目標の5倍のフォロワー数に達してますね。
そうですね、なかなか皮肉なことに(笑)。フォロワーさんはまだまだ増える気がしてます!
——さすがです!これからのご活躍も楽しみにしております。今日はどうもありがとうございました!
ありがとうございました!