内科医・血液専門医 久住英二先生
新型コロナウイルスの大流行が終焉を迎え、一安心…と思いきや、インフルエンザ流行の早期化、帯状疱疹罹患者の急増、秋口のアデノウイルス流行と、従来とは異なる感染症傾向が見られた2023年。
大正製薬株式会社(東京都豊島区/代表取締役社長 上原 茂)は、2023年11月に、日本全国の20代~60代の男女1000人を対象に「昨年末と比較して、2023年末は自身の免疫対策(マスク着用・手洗いやうがい・栄養や休養等、感染症対策)をどれくらい意識しているか?」に関するアンケート調査を実施、2023年12月5日に結果を公開しました。
調査の結果、全体では「昨年よりも意識が高い人(※)」が訳4割弱(37.9%)を占めましたが、「昨年よりも意識が低い人(※)」も約3割(全体の28.8%)を占め、「昨年と同程度の人(※)」がちょうど3割(33.3%)と、免疫対策への意識は全年代を総合的にみると維持、ないしは向上している方が7割いることがわかりました。
※アンケート調査では、2022年末の免疫対策への意識を「5」とした場合に、2023年末の免疫対策への意識が「0~10」(5=昨年と本年が同程度)のうちどの数値かを選択。0~4を選択=「昨年よりも意識が低い人」、5を選択「昨年と同程度の人」、6~10を選択=「昨年よりも意識が高い人」とします。
年代別に見ると、「昨年よりも意識が低かった人」の比率が突出して高かったのが20代(36.0%)、対し、50代(22.0%)と30代(25.0%)においては他年代よりも「昨年よりも意識が低かった人」の比率が下がっており、全体的に免疫対策への意識が昨年よりも顕著に向上している傾向がうかがえます。
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【調査概要】
調査名称:自身の免疫対策(マスク着用・手洗いやうがい・栄養や休養等、感染症対策)への意識に関するアンケート
調査機関:Freeasy 調査対象:全国の20代~60 代の男女1000人(年齢・性別 均等割付)
調査方法: Webアンケート 調査日:2023年11月29日〜2023年11月30日
インフルエンザウイルスが猛威を振るう中、宴会シーズンも控え、復習しておきたい免疫対策。多忙で体力も消耗する年末。感染症予防のために心がけている免疫対策を、感染症に詳しい医師の久住英二先生に聞きます。
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内科医・血液専門医 久住英二先生
【監修】内科医・血液専門医 久住英二先生
1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。
免疫対策のポイント
1)腸内環境を整える
2)血流やリンパの流れをよくする
3)自律神経を整える
免疫対策として有効な、注目栄養素
●腸内細菌叢を育てるβ-グルカン
●免疫細胞を活性化させるタウリン
●免疫細胞自体を作るタンパク質
●骨(骨髄)づくりにかかわる栄養素
1)腸内環境を整える
人間には1.8兆個もの免疫細胞があり、病原体から身を守るために働いています。好中球やNK細胞は、病原体と認識したら即座に攻撃する“自然免疫”を司ります。ワクチン接種が有効なのは、病原体を記憶するメカニズムがあるから。樹状細胞とリンパ球のT細胞が司令塔となって、B細胞が抗体というタンパク質を作って感染を防ぎ、感染した細胞をT細胞が攻撃して殺します。これを“適応免疫”と呼びます。免疫細胞はほぼすべて骨髄で作られ、リンパ節や脾臓といったリンパ組織や、胸腺で教育を受け、さまざまな担当部署に配属されます。
消化管は口から食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、そして肛門と1本の管であり、口と肛門は開いていることから、消化管の中はある意味体外ともいえます。食べ物にはウイルスや細菌、真菌(カビ)などの病原体が付着しています。栄養素と一緒に病原体を取り込んでしまうと病気になるので、消化管には表面を覆う粘液、そして様々な免疫細胞や抗体が存在し、防衛しています。これを「腸管免疫」と呼びます。
小腸にはパイエル板と呼ばれる免疫器官があり、そこにはT細胞やB細胞、NK細胞など多くの免疫細胞が集結して、病原体やウイルスと戦っています。大腸には膨大な腸内細菌叢(フローラ)があり、病原体が増殖するのを妨げ、消化を助けるほか、人体に必須の栄養素を作り出すなど、人体に有益な働きをしています。フローラは免疫にも大きく関係しており、そのバランスが良いと免疫が適正に働き、フローラが乱れると自己免疫疾患が引き起こされ、体に良くない反応が起きます。腸内環境を整えることは健康を維持する上でとても大切です。
2)血流やリンパの流れをよくする
血液やリンパの流れが良くなると、リンパ球などの免疫細胞が体内を移動しやすくなります。結果として病原体を発見し、働きかける反応が向上します。そのためにおすすめなのが、軽い運動を行うこと。運動による体温上昇も免疫細胞の活性化に役立ちます。毎日なるべく湯船に浸かって血行を促し、身体を温めてから就寝するのもおすすめです。
身体の細胞を酸化させてしまうおそれがあるタバコは、免疫細胞の働きを抑制し、血管が収縮して血流が悪くなり、血管壁を傷つけることで血管を老化させます。さらに、煙に含まれる一酸化炭素は、体内で酸素を運搬する役割のヘモグロビンと強く結合して酸素運搬能力を奪い、体内を酸欠状態にしてしまいます。“
3)自律神経を整える
自律神経は免疫細胞にも働きかけ、その機能を制御しています。よって自律神経を整えることは免疫を健やかに保つ上で重要です。
睡眠不足や体内時計の攪乱は自律神経の機能を低下させます。毎晩、なるべく決まった時間に寝て起きる。そして成人では7時間ほどの睡眠時間を確保し、良質な睡眠をとることが望ましいです。
運動習慣は自律神経の働きを正常化する上で役立ちます。運動というと、マラソンやジムでの激しいトレーニングが必要では?と考えがちです。健康に良い運動は、例えばジョギングであれば、一緒に走る人と会話が出来るくらいのスピードで、また時間も30分以内が良いとされています。筋トレも自分の体重を使った自重トレーニングで十分です。また、運動は睡眠の質を向上させる効果もあります。
飲酒も自律神経を整える上で要注意です。お酒を飲むとよく眠れると思っている方は少なくありませんが実は逆で、アルコールは睡眠の質を低下させます。過度な飲酒では睡眠時間が短くなる可能性もあり、疲労や自律神経の乱れにつながる可能性もあります。
アルコールの分解では、免疫細胞にとって重要なアミノ酸であるタウリンが消費されます。タウリンを奪ってしまうという点においても、過度な飲酒は免疫対策として推奨できません。
精神的なストレスも免疫機能を低下させる非常に大きな要因になります。ストレスによって交感神経が優位になり、血管が収縮させ、血流が悪化します。さらに、交感神経が優位な状態が続くと、リンパ球など免疫のキーとなる細胞の働きが低下します。逆に、リラックスした精神状態で副交感神経が優位になると血管が弛緩し、血行もスムーズに。心身ともに無理をしすぎず、リラックスできる時間を意図的に作るようにしましょう。
免疫対策として有効な、注目栄養素
●腸内細菌叢を育てるβ-グルカン
大麦やキノコなどに含まれる水溶性食物繊維のβ-グルカンは、腸内細菌による発酵を介して短鎖脂肪酸の産生を促します。短鎖脂肪酸が免疫系を刺激することで、腸管免疫を強化するといわれています。
短鎖脂肪酸は、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの総称で、大腸のぜん動運動のエネルギー源になり、腸内環境を弱酸性化し、腐敗物質をだす悪玉菌の繁殖を抑える作用があります。さらに、短鎖脂肪酸には制御性T細胞の増殖が促進する作用があります。このリンパ球は、免疫が暴走して自らの体を傷害するサイトカインストームを抑制します。サイトカインストームは、新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズムの一つであり、コロナウイルスに限らず様々な感染症に合併します。
β-グルカンを積極的に摂るために、食事の際の白米を大麦ごはんにするのがおすすめです。
●ビタミンB群
食べ物をエネルギーとして代謝し、細胞の活動エネルギーを作る栄養素。ビタミンB群は病原体から体を守るタンパク質である抗体産生にも必要です。ビタミンB1が不足するとパイエル板(免疫細胞が多く集まる器官)は小さくなり、感染症にかかりやすくなる可能性が示唆されています。ビタミンというと野菜や果物に多い印象ですが、実はB群のビタミンは豚肉、魚介類に多く含まれています。お肉を食べてB群のビタミンを常に補充しましょう。
●免疫細胞自体を作るタンパク質
すべての細胞は、タンパク質が主成分。ウイルスと戦う免疫細胞や抗体もタンパク質からできているので、タンパク質は必須。タンパク質はドカ食いが効かないため、食事で常にとり続ける必要があります。朝昼晩の食事には、かならず卵、肉、魚、大豆などタンパク質を多く含む食材を取り入れましょう。
●骨(骨髄)づくりにかかわる栄養素
造血細胞を持つ骨髄では、好中球、マクロファージ、リンパ球〈B細胞とT細胞〉、NK細胞、形質(けいしつ)細胞などほぼすべての免疫に関わる細胞が生まれます。骨を丈夫にするカルシウムに加え、骨を強化することに関わるビタミンDなども免疫に関与していると言えます。ビタミンDはきくらげ、鮭などに含まれますが、日光浴をして手のひらに紫外線を浴びると自分の体内で生成することもできます。
大正製薬修正レター★久住先生解説【免疫のために意識すべきこと】.pdf
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