売上は増加も利益は減少
価格転嫁の意識は高い
90%以上が価格転嫁できず
価格転嫁に躊躇
【調査サマリー】
●新型コロナウイルス蔓延の影響、仕入れコスト上昇により厳しい経営環境下にある中小・小規模事業者に、国際的なエネルギー価格の高騰が追い打ちをかけている。
●経費削減や価格転嫁等、自社でできる対策や対応はすでに実施済みであり、中小・小規模事業者からはこれ以上のエネルギー価格の高騰には対応できないとの声も聞こえ始めた。
●政府には補助金や助成金等の短期的な支援にとどまらず、長期的な視座に立った政策立案を期待するとともに、中小・小規模事業者が省エネ対策を実施する際には、資金面も含め、具体的な数値目標の設定や実践方法、その効果やメリットを啓蒙していく必要があることが分かった。
1. 売上は増加・横ばいを維持も、利益は減少
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売上は増加も利益は減少
2023年2月と昨年同月の「売上」及び「利益」に対し、エネルギー価格高騰によるコスト増がどのように影響しているか回答してもらった。売上は増加しているが利益が減少しているとの回答が全体の79.4%、売上は横ばいだが利益が減少しているとの回答が78.5%、売上と利益が減少しているとの回答が94.2%となった。
売上はコロナ禍前に戻りつつあるが、エネルギーコストが上昇しており、売上を増加・維持できても利益を確保しにくい状況にあることが分かった。
2. 利益確保のために価格転嫁が必要との意識は高い
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価格転嫁の意識は高い
利益が減少している事業者に、必要な利益の確保に向けた取り組み状況について複数回答してもらった。回答のうち42.1%が「価格転嫁(既存製品、サービスの値上げ)」、37.7%が「人件費以外の経費削減」と続き、自助努力としてできる取り組みはすでに実施していることが分かった。
一方で、「取り組むことができていない」が27.3%を占め、目の前の業務に追われ利益確保に向けた取り組みを実施できずにいる事業者が、一定数存在していることが明らかとなった。
3. 90%以上の事業者は十分に価格転嫁ができていない
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90%以上が価格転嫁できず
エネルギー価格高騰によるコスト増が利益へ影響を与えている中で、価格転嫁の取り組み状況について回答してもらった。事業者全体の52.7%は「ほとんどできていない」、38.2%が「少しできている(上昇分の1~3割)」と回答し、価格転嫁ができていない割合は90.9%を占めた。
4. 消費者の低価格・節約志向から価格転嫁に躊躇
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価格転嫁に躊躇
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消費者の低価格・節約志向に配慮
「価格転嫁がほとんどできていない」と回答した事業者に、その理由について複数回答してもらった。回答者のうち65.9%が「消費者の低価格・節約志向」、46.3%が「他社との競合」、38.8%が「需要の減少」と続き、消費者のデフレマインドが残る中、事業者は価格転嫁により消費者が離れかねないと考え、価格転嫁に踏み切れていないことが分かった。
また、売上額別の価格転嫁ができない理由では、売上額が小さいほど「消費者の低価格・節約志向」の回答割合が高い傾向となった。
5. エネルギーコスト増の要因は電気料金
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コスト増の要因は電気料金
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建設業のコスト増の要因はガソリン価格
中小・小規模事業者の利益への影響として、どのエネルギーがコスト増となっているか回答してもらった。回答のうち66.5%を占めたのは「電気料金」、26.6%が「ガソリン・灯油価格」、6.9%が「ガス料金」となった。
業種別では、製造業・小売業・サービス業では「電気料金」の影響がもっとも大きく、建設業では「ガソリン・灯油価格」の影響がもっとも大きいとの回答となった。
6. 省エネ対策への取り組みは53.2%の事業者が実施も、業種によりばらつき
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53.2%が省エネに取り組み中
エネルギーコスト増加に対し、コストダウンにも資する省エネへの取り組みについて回答してもらった。事業者全体で「積極的に取り組んでいる」8.4%と「ある程度取り組んでいる」44.8%を合わせると53.2%となり、半数以上の事業者は省エネ対策に取り組んでいることが分かった。
一方、業種別では、建設業では「積極的に取り組んでいる」「ある程度取り組んでいる」の割合が他の業種に比べ低く、屋外での作業となる建設現場での省エネ対策の推進には課題があることが推測された。
7. 省エネ対策の課題は、費用負担・取り組み方法の理解・時間の捻出
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省エネ対策の課題は費用捻出
省エネ対策の課題について複数回答をしてもらった。事業者全体の43.4%が「取り組むための費用の捻出が困難」を課題としていることから、事業者にとって省エネ対策として第一に想起される取り組みは機器や設備の入替等であることが読み取れる。次いで「具体的な取り組み内容がわからない」となり、省エネ対策の具体的な方法等を支援していく必要があることも分かった。
一方、売上額別では、売上1,000万円未満と売上3,000万円以上では、「費用」が課題の第一となったが、売上1,000万円~3,000万円未満では「取り組むための時間がない」が課題の第一となった。
8. 事業者の声
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エネルギー価格高騰に対する事業者の声
【調査概要】
・調査方法 :商工会職員によるヒアリング調査
・調査対象 :全国の商工会員(中小企業・小規模事業者)
・調査時期 :2023年2月24日 ~ 3月10日
・有効回答数:491事業者
(注)表・グラフ中の数字は小数第一位または第二位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合、同じパーセンテージでも見え方が異なる場合がある。また、本調査の計算に使う値(n)は、回答数合計ではなく「回答者数」としている。
【回答者属性】
<業種>
製造業 22.2%
建設業 17.1%
小売業 19.1%
サービス業 41.5%
<経営形態・資本金>
個人事業主 62.3%
法人(資本金300万円以下) 15.9%
法人(資本金300万円超~1,000万円以下) 14.5%
法人(資本金1,000万円超~3,000万円以下) 5.9%
法人(資本金3,000万円超) 1.4%
<直近売上>
1,000万円未満 31.6%
1,000万円~3,000万円未満 30.3%
3,000万円~5,000万円未満 12.0%
5,000万円~1億円未満 13.2%
1億円以上 12.8%
【商工会とは】
全国商工会連合会は、47の都道府県の商工会連合会(以下、「県連」という。)を会員とし、県連は県下の商工会(全国に1,643)を会員としている。地域商工業の総合的な改善発達を図る「経済団体」であり、中小・小規模事業者の経営改善の普及事業を行う「指導団体」としての2つの性格をもった組織。
商工会員は約80万社おり、そのうち約87%が小規模事業者(小規模事業者の定義:製造業その他 従業員20人以下/商業・サービス業 従業員5人以下)※全国商工会連合会HP参照( https://www.shokokai.or.jp/ )