(図1)仕事のパフォーマンス(生産性)
(図2)ワークエンゲージメント (図3)組織コミットメント
ワーケーションの実施形態
「ON/OFFiceTM」は、会社が滞在場所やワーケーションの形態などを指定するのではなく、コンサルティング会社の社員として、自らがやりたいワーケーションを自由な発想で企画・応募できることを特徴とした制度です。社員からの反響も大きく、審査の結果、8グループ(43名の社員)が5月から11月にかけ、それぞれのワーケーションを行いました。参加者は、脳科学を中心とした研究開発及びマーケット創出で多くの実績がある、当社ニューロイノベーションユニットによる実証実験の被験者になっています。
ニューロイノベーションユニットは、ワーケーションが心身にもたらす効果・効用についての知見を有しており、今回のワーケーションについて、エビデンスに基づく効果検証を行ったところ、仕事のパフォーマンス、ワークエンゲージメント、組織コミットメントにポジティブな効果があったことが明らかとなっています。
【背景】
当社では、2017年よりテレワーク制度を導入していますが、新型コロナウイルスの感染拡大を機に「在宅ファースト」と呼ぶ、在宅勤務を優先する働き方に移行しました。現在は、自宅に限らず、サテライトオフィスなどを含めたリモートワークが全社員に定着しています。しかしリモートワークは、時間や場所の制約なく効率的に働けるというメリットがある一方で、社員間のコミュニケーション不足につながるといった課題もあり、昨年実施した社員満足度調査では、コロナ前(2019年調査)と比較して、「知の交流」「ビジョンの共有」の項目でポイントの低下が見られました。こうした状況において、当社が注目したのがワーケーションです。
ワーケーションについては、従前より当社ニューロイノベーションユニットが、実証実験を通じてエビデンスを収集し、科学的見地から有効性の検証を行っており、社員の心身の健康にポジティブな影響をもたらすことがわかっております。そこで今般、ワーケーション制度「ON/OFFiceTM」を社内に導入し、あらためてその効果についても検証を行いました。
【「ON/OFFiceTM」とは】
当社が実施したワーケーション「ON/OFFiceTM」は、会社が滞在場所やワーケーションの形態などを指定して参加者を募るものではなく、社員それぞれがやりたいワーケーションを自由な発想で企画し、応募できるという制度です。所属組織や職種に関係なく、4人以上の社員が集まれば誰もが応募可能で、期間は最大1週間。それぞれの企画の目的に対する企画内容の合致度などを審査の上、認められた企画には会社が宿泊費および交通費の実費を補助するというものです。当社では、すでにテレワーク制度が導入されていて、柔軟な働き方が定着していることもあり、混乱なく実施することができました。
当社がワーケーションの形態を指定しないのは、より多くの社員にワーケーションという制度を利用してほしいと考えたからです。社員がワーケーションに求めるものは多様なため、社員がそれぞれのニーズに合ったオリジナルのワーケーションを企画し体験することで、心身をリフレッシュし、さらに新しいアイディアや多様な発想を創出する機会にしてほしいという思いがありました。また、滞在場所の選定や交渉、交通手段の調整、地域体験などを一つひとつ組み立てる過程を通して、社員(特に若手)の企画力を醸成したいという狙いもあります。
施策発表後、社員から多くの反響があった中で、最終的に、地域関係者と交流しながら地域課題の実態を把握し、課題解決を考える「地域課題解決型ワーケーション」が3グループ、参加メンバーとワークショップや議論を行う「合宿型ワーケーション」が2グループ、リゾート地に滞在し、観光や共通の趣味を楽しみながらリモートワークを行う「休暇型ワーケーション」が3グループ、計8グループの企画が認められ、2022年5月から11月にかけ、コンサルタント、間接部門を問わず、計43名の社員が参加しました。
【ワーケーションの実施形態(※)】
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/335473/LL_img_335473_3.png
ワーケーションの実施形態
※ワーケーションの実施形態は、観光庁「新たな旅のスタイル ワーケーション&ブレジャー(企業向け)」の分類に基づく
なお、参加者は、当社ニューロイノベーションユニットが実施するWeb調査票に回答し、ニューロイノベーションユニットはそのデータの解析と検証を行いました。(調査票の回答は10件法を用いて、データ解析と検証を実施)
【ワーケーションによる効果】
効果検証は、各チームのワーケーション開始1週間前(事前)とワーケーション期間中および終了日の一週間後(事後)の業務終了後に実施しました。データ解析の結果、ワーケーション期間中は、仕事のパフォーマンス(生産性)が事前より20%程度向上し、事後もその向上した水準を維持しており、ワークエンゲージメント(仕事への活力・没頭)の上昇および、組織コミットメントも上昇傾向が見られたことから、ワーケーションを企画・実施させてくれた会社に対する帰属意識を促進する効果がありました。
◆仕事のパフォーマンス(生産性)約20%向上、良い影響あり(図1)
仕事のパフォーマンス(生産性)の自己評価は事前と比較してワーケーション期間中は約20%向上しました。その水準は1週間後まで継続しており、ワーケーションを実施したことで仕事のパフォーマンスに良い影響が確認されました。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/335473/LL_img_335473_1.png
(図1)仕事のパフォーマンス(生産性)
◆ワークエンゲージメント(仕事への活力・仕事への没頭)が高まり、組織コミットメントも上昇傾向でポジティブな効果が認められた
ワークエンゲージメント指標は仕事に関連するポジティブな精神状態が反映され、この指標が高まることで従業員個人の生産性や心身の健康状態が高くなることが先行研究でも示されています。今回のワーケーション施策においては「仕事に対する活力」や「仕事への没頭」の程度について、事前より期間中に高まり、事後もさらに上昇しました。また「仕事に対する熱意」はワーケーション実施前の段階から高い水準でしたが、ワーケーションから戻った後にさらに高まるという結果となりました(図2)。
また、組織コミットメントについては、規範的な組織コミットメントが上昇。ワーケーション実施後もその上昇が維持される結果でした(図3)。これは「ワーケーション施策を企画・実施させてくれた会社に対する規範的な帰属意識」などが反映されていると示唆され、情動的な組織コミットメントも事後に上昇しており、従業員の会社に対する情動的な愛着・帰属意識を促進していることが分かりました。
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/335473/LL_img_335473_2.png
(図2)ワークエンゲージメント (図3)組織コミットメント
【今後について】
今回の検証結果が示すように、ワーケーションによって、仕事のパフォーマンスが向上し、ワークエンゲージメント、組織コミットメントにもポジティブな効果があることが明らかとなりました。自らが企画したオリジナルのワーケーションを通じて、日常ではできない時間や体験を仲間と共有したことで、業務そのものに好影響をもたらしたと言えます。また地域関係者との交流を通して、新たなネットワークやコラボレーションも生まれています。
当社では、ワーケーション制度を今後もさらに拡充し、社員の心身の健康と働きがいの醸成に努めてまいります。社員が働き方(ON)と休み方(OFF)を柔軟に選択し、活力を持って前向きに仕事をすることができる環境を整え、クライアントの皆さまのさまざまな課題解決に向け邁進していきます。
注釈
※1:WHO-HPQ(WHO Health and Work Performance Questionnaire, short form)日本語版
※2:Shimazu, A. et al., Work engagement in Japan: Validation of the Japanese version of the Utrecht Work Engagement Scale., Applied Psychology: An International Review(2008)
※3:Shimazu, A., Schaufeli, W. B., Kubota, K. & Kawakami, N. Do Workaholism and Work Engagement Predict Employee Well-being and Performance in Opposite Directions? Industrial Health 50, 316-321 (2012).
※4:Allen, N. J. & Meyer, J. P. The measurement and antecedents of affective, continuance and normative commitment to the organization. Journal of Occupational Psychology. 63 (1), 1-18 (1990)
・「ON/OFFiceTM」は日本国内における株式会社NTTデータ経営研究所の商標です。