図1 誤嚥性肺炎による死亡者数の年次推移(出典:東京都健康安全研究センターウェブサイト)
図2 誤嚥性肺炎による死亡者数の年次推移予測(出典:東京都健康安全研究センターウェブサイト)
図3 不慮の窒息及び交通事故による死亡数推移(人口動態推計より岩手大学作成)
研究内容
【概要】
近年、誤嚥性肺炎や窒息によって亡くなる方が増えています。これは、食べ物を噛む力(咀嚼機能)や、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)、さらには、息を吸ったり吐いたりする力(呼吸機能)が加齢や疾患によって低下し、各機能の協調がうまく働かなくなることが大きな要因と考えられています。この問題は、高齢化が進む我が国において、今後ますます深刻化することが予想され、早急な対応が必要です。
このような背景の中、岩手大学理工学部 佐々木 誠准教授らの研究グループでは、文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラム(基盤構築プロジェクト)等によって、前頸部生体信号を利用したAIベースの嚥下機能評価技術や、耳周辺の生体信号を利用した咀嚼・嚥下の検出技術の開発を進めてきました。
これらの成果を社会に還元することを目的とし、岩手大学、東京医科歯科大学、長崎大学、タカノ株式会社の間で、耳に装着する小型・軽量な食事見守りシステムを開発・実用化するための共同研究契約を締結しました。
本共同研究は、公益財団法人JKAの研究補助を活用して実施するものです。
【背景】
近年、誤嚥性肺炎によって亡くなる方が増えています。これは、食べ物を噛む力(咀嚼機能)や、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)、さらには、息を吸ったり吐いたりする力(呼吸機能)が加齢や疾患によって低下し、各機能の協調がうまく働かなくなることが大きな要因と考えられています。誤嚥性肺炎による死亡者数は年々増加する傾向にあり、令和元年においては日本人の死因第6位と、主要な死因の一つとなっています。この問題は、高齢化が進む我が国において、今後ますます深刻化すると予想され、早急な対応が必要です。
また、窒息によって亡くなる方も依然として多く、近年では交通事故による死者数の2倍近くとなっています。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/267775/LL_img_267775_1.png
図1 誤嚥性肺炎による死亡者数の年次推移(出典:東京都健康安全研究センターウェブサイト)
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/267775/LL_img_267775_2.png
図2 誤嚥性肺炎による死亡者数の年次推移予測(出典:東京都健康安全研究センターウェブサイト)
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/267775/LL_img_267775_3.png
図3 不慮の窒息及び交通事故による死亡数推移(人口動態推計より岩手大学作成)
介護労働者・介護現場のマンパワー不足が慢性化し、個々人の嚥下機能や体調に適した食事を提供し、十分な栄養摂取ができているか、窒息や誤嚥リスクが高くないかなどを、つきっきりで見守ることは不可能であり、誤嚥性肺炎の発症や窒息事故に発展するケースも少なくありません。このことから、介護現場において食事動作の様子や変化を捉え、窒息・誤嚥を予防する新しい食事見守りシステムが求められています。
【研究内容】
岩手大学理工学部システム創成工学科の佐々木 誠准教授らの研究グループは、文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラム(基盤構築プロジェクト)※1 や科学研究費助成事業※2 によって、前頸部生体信号を利用したAIベースの嚥下機能評価技術(特願2020-042502、特願2020-146438等)や、耳周辺の生体信号を利用した咀嚼・嚥下の検出技術(特願2020-154659)の開発を進めてきました。
これらの成果をコア技術として、耳装着型の小型・軽量ウェアラブルセンサを試作し、人工知能によって食事中の咀嚼、嚥下、呼吸の状態を見守る新しいシステムを開発します。
これまでにも、食事の見守りに利用可能なウェアラブル装置は開発されてきましたが、咀嚼のみ、あるいは嚥下のみの検出に限定されています。さらに、呼吸計測には、大掛かりな装置が必要なため、食事現場で利用するには不向きです。食べ物を噛んで安全に飲み込む動作は、複数の器官が協調して遂行されるため、それぞれの器官では機能不全を認めない場合でも、協調の問題が嚥下障害を引き起こす場合があります。咀嚼、嚥下、呼吸の協調はその代表例であり、これらをモニタリングすることは、誤嚥・窒息リスクの評価において極めて重要になります。
今回開発するシステムは、食事の妨げにならない程度の、小型・軽量なウェアラブルセンサを試作して、咀嚼、嚥下、呼吸の協調をモニタリングし、安全・安心な食の場を創生するものです。本事業では、医療機関における特別な検査環境ではなく、自宅等の普段の食事の様子から、高齢者の「健口状態」と「窒息・誤嚥リスク」を評価する、画期的な高齢者食事見守りシステムの実現を図ります。
そのため、嚥下機能評価技術の開発を進めてきた岩手大学(理工学部システム創成工学科 佐々木 誠准教授)、要介護高齢者の嚥下の問題について先進的な臨床研究を行っている東京医科歯科大学(大学院医歯学総合研究科 戸原 玄教授)及び長崎大学(長崎大学病院特殊歯科総合治療部・摂食嚥下リハビリテーションセンター 玉田 泰嗣助教)、医療福祉機器メーカーであるタカノ株式会社(本社:長野県上伊那郡、代表取締役社長:鷹野 準)が共同研究契約を締結し開発を進めることで、高い技術を社会に還元し、健康寿命の延伸に貢献します。
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/267775/LL_img_267775_4.png
研究内容
【参画機関とその役割】
(1)
機関名 :岩手大学
本共同研究における役割:・研究の総括
・人工知能を用いた咀嚼、嚥下、呼吸の協調解析
・食事見守りアルゴリズムの開発
(2)
機関名 :東京医科歯科大学
本共同研究における役割:・ウェアラブルセンサを用いた臨床評価
(3)
機関名 :長崎大学
本共同研究における役割:・ウェアラブルセンサを用いた臨床評価
(4)
機関名 :タカノ株式会社
本共同研究における役割:・ウェアラブルデバイスの設計・試作
本共同研究は、公益財団法人JKAによる研究補助※3(代表研究者:岩手大学佐々木准教授、2021年度交付決定額:1,500万円)を活用して実施するものです。
※1 文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラム(基盤構築プロジェクト)
社会的インパクトが大きく地域の成長とともに国富増大に資する事業化プロジェクトを推進することで、日本型イノベーション・エコシステムの形成と地域創生を実現することを目指すプログラム。
※2 科学研究費助成事業
人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」であり、ピアレビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うもの。
※3 公益財団法人JKAによる研究補助
自転車競技法に基づく競輪振興法人、小型自動車競走法に基づくオートレース振興法人である公益財団法人JKAが、競輪・オートレースの収益を広く社会に還元し、競輪・オートレースの持続的発展を通じ、社会貢献を果たすため、地方自治体が施行する競輪・オートレースの売上げの一部により、機械振興と公益事業振興に対して行うもの。
https://hojo.keirin-autorace.or.jp/
【タカノについて】
「製造業から『創造業』へ」
ばねの製造に始まり、オフィス家具、エクステリア製品へ。そして先進のエレクトロニクス製品、さらには医療・福祉関連製品へ。タカノは次々に新分野への参入を実現し、常に新しい製品の開発にチャレンジしてきました。この展開力こそがタカノの特色であり、発展の源です。
これからも「社員一人ひとりの活力が企業の力である」という企業理念を大切にしながら、あらゆる角度から事業展開の可能性を追求し、未踏の領域に挑戦していきます。
【会社概要】
会社名 : タカノ株式会社
東京証券取引所第1部上場(証券コード:7885)
所在地 : 長野県上伊那郡宮田村137
代表者 : 代表取締役社長 鷹野 準
創業 : 1941年7月1日
設立 : 1953年7月18日
URL : https://www.takano-net.co.jp
事業内容: 事務用椅子、その他椅子等のオフィス家具、ばね、
エクステリア製品、エレクトロニクス関連製品(画像処理検査装置、
電磁アクチュエータ)、医療・福祉機器の製造ならびに販売