5Gネットワークにて通信可能な4K映像伝送リファレンスデザイン
リファレンスデザインは、ザイリンクス社が提供する「Zynq(R) UltraScale+(TM) MPSoC ZCU106 評価キット」(以下 ZCU106評価キット)とTelit Wireless Solutions社(テリットワイヤレスソリューションズ、以下Telit社)の5G対応通信モジュール「FN980」により構成されていますこれにより、5Gネットワークを活用した4K映像伝送でサービス構築を検討するお客様の開発効率化を支援することが可能となります。
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5Gネットワークにて通信可能な4K映像伝送リファレンスデザイン
■開発の背景
5Gの商用サービスが2020年3月25日に開始され、今後基地局を増設することにより利用できるエリアがさらに拡大していきます。現在、5Gの活用に向けてマルチアングルによる臨場感あふれる遠隔スポーツ観戦、自動車・建機などの自動運転、遅延の許されない医療画像診断などの可能性が考えられ、さまざまな実証実験が始まっています。5Gは、超高速・超低遅延・多数同時接続の通信を実現する通信技術であり、IoTの普及や自動運転、遠隔診療といったスマートシティ構想にも必要不可欠な技術として期待されています。
また、通信事業者が全国展開する5G通信サービスとは別に、地域や企業が主体となり、特定のエリアで自前の5Gネットワークを構築・運用するローカル5G※1の活用も今後さらに進んでいき、5G通信がさまざまなサービスのインフラになると考えられています。ローカル5Gは、プライベートで免許取得・運用が可能であり、5Gの特長である高速大容量、超低遅延、多数同時接続を地域ニーズや個別ニーズに応じて使用することが可能です。
■製品・機能概要
5Gネットワークを活用した画像伝送のプラットフォームをお客様に提供することを目的に、本リファレンスデザインを開発しました。お客様は本リファレンスデザインに必要な機能を追加することができ、構想されている製品コンセプトの実現およびその動作確認を迅速に実現できる「PoC※2」として活用することが可能です。お客様での必要機能追加を容易にするために、ロジック部分のデザインはザイリンクス社提供のリファレンスデザインを活用し、汎用性の高い構成となっています。また、Linuxベースのソフトウェアで動作させることで、AI等の機能実装にも活用することができます。
・全体構成
本リファレンスデザインのハードウェア構成は、ザイリンクス社の「ZCU106評価キット」、Telit社の5G対応通信モジュール「FN980」およびHDMIによる画像入力により構成されています。画像エンコードはH.265/HEVCを、伝送プロトコルはSRTプロトコル※3を使用しています。
・ZCU106評価キット
ZCU106評価キットでは、4KカメラからHDMIで入力された4K30fps画像をフレームバッファに取込み、MPSoC EV Device特有の機能である「Video Codec Unit」を用いてH.265/HEVCフォーマットでエンコードします。その後、エンコードされた画像データをMPSoCに搭載されているArm(R)プロセッサにてソフトウェア処理を行いSRTプロトコルを用いて伝送します。ロジック部分のデザインはザイリンクス社が提供しているZCU106評価キットのリファレンスデザインを使用し、その制御はArm(R)プロセッサ上のLinuxに実装されたGStreamerを使用しています。
・Telit FN980 5Gモジュール
FN980はTelit社の5G Sub-6GHz周波数帯対応M.2通信モジュールで、株式会社NTTドコモの相互接続性試験を完了した製品です。FN980とZCU106評価ボードはUSB3.0で接続(HostはZCU106に搭載されているMPSoC)されており、USB3.0を介してデータ通信を行っています。
■実証試験について
本リファレンスデザインおよび株式会社NTTドコモの5G SIMカードを用いて、SRTプロトコルで4K画像伝送試験を実施しました。SRTはシステム上、送信もしくは受信がGlobal IP Addressを持つ必要があります。そのため、今回の試験ではカメラ側(4Kカメラ+ZCU106評価キット+Telit社 FN980)からH.265/HEVCでエンコードした信号を5Gネットワークのアップリンクで送信、受信側を当社グループ会社の株式会社エクスプローラ(北海道函館市)が持つGlobal IP Addressに向けて横浜市内の5Gネットワークから画像伝送を実施しました。
結果として、画像の伝送レート
(1)1Mbps、(2)10Mbps、(3)20Mbpsと実施し、安定した画像受信を函館で確認しました。
※伝送レート(2)(3)は数分間程伝送し、その伝送レートの平均近似値としております
※今回の実証試験では、送信中はカメラを移動させずに試験を行っております
■今後のローカル5GにおけるPALTEKの取り組み
PALTEKグループでは、今後の成長市場と見込まれるローカル5G関連市場に対して、コアネットワーク、基地局、端末向けのハードウェア提供を行うだけでなく、端末の受託開発やお客様のサービス開発・提供を支援するためソリューションを提供することで、5G時代のお客様の価値創出に貢献してまいります。
PALTEKの5Gソリューションに関する詳細は、 https://www.paltek.co.jp/solution/local5g/index.html をご覧ください。
■専門用語説明
※1 ローカル5G
地域・産業のニーズに応じて地域の企業や自治体等が個別に利用できる5Gネットワークのこと。通信事業者が全国で展開する均一な5Gの通信サービスに対して、ローカル5Gは、地域・企業が主体となって、自らの建物内や敷地内といった特定のエリアで自営の5Gネットワークを構築・運用・利用することができます。ローカル5Gを利用するには国で指定された無線局免許の取得が必要となります。
※2 PoC(Proof of Concept:概念実証)
PoCは、新しいプロジェクト全体を作り上げる前に実施する戦略仮設・コンセプトの実効性検証を行うこと。
※3 SRT(Secure Reliable Transport)
SRTは、カナダHaivision社が開発しオープンソース化されている映像伝送プロトコルです。IP伝送や配信などのサービスに広く採用され、これからのIPストリーミングを高性能・高品質にする基本プロトコルとなることが期待されています。低遅延ストリーミングと優れたエラーリカバリ能力、高いセキュリティと機器間ネットワーク接続能力を持ち、不安定なネットワーク環境にも強く、セキュリティの確保、容易なファイアウォール通過機能を持ち合わせながら、最高品質の画像伝送を可能にします。
SRTに関する詳細は、 https://www.paltek.co.jp/solution/video/srt/index.html をご覧ください。
ザイリンクスの名称および Zynq、UltraScale+、その他本プレスリリースに記載のブランド名は米国およびその他各国のザイリンクスの登録商標または商標です。その他すべての名称は、それぞれの所有者に帰属します。
■株式会社PALTEKについて
PALTEKは、1982年の創業以来、日本のエレクトロニクスメーカーに対して国内外の半導体製品の販売のほか、ハードウェアやソフトウェアなどの設計受託サービスも提供し、お客様の製品開発のパートナーとして仕様検討から試作開発、量産までサポートしています。PALTEKは、「多様な存在との共生」という企業理念に基づき、お客様にとって最適なソリューションを提供することで、お客様の発展に貢献してまいります。
PALTEKに関する詳細は、 https://www.paltek.co.jp をご覧ください。