1_就業変化による不安
2_コロナ禍における就業形態と、企業が実施した雇用措置
3_これからの理想のはたらき方
4_はたらくに対して重視すること(新型コロナ発生前後)
【主な調査結果】
・在職中の障害者の不安、実生活に直結する「収入」「就業継続」が6割(60.8%)。
就業環境の変化で体調面やコミュニケーション面の不安も
・コロナ禍で半数以上の障害者が「在宅勤務」で就業(51.6%)。
今後も在宅勤務を望む人が50.1%
・With/Afterコロナ時代、障害者が“はたらく”に重視すること、
「収入・給与」・「就業継続」に加え「自宅と職場の距離・在宅勤務制度」と
「オンライン活用・業務体制」。
(※1)
調査概要 :実施期間:2020年6月23日~7月1日
実施対象 :全国の障害のある方男女で、就職・転職検討中、
または就業経験のある方
有効回答数:763
■【結果要旨】新型コロナウイルス感染拡大による障害者の就業、就職・転職活動への影響
1.障害者の就業上の不安
実生活に直結する「収入」や「就業継続」の不安(60.8%)に加え、就業環境の変化で「体調・健康不安」(36.7%)「コミュニケーション、人間関係の不安」(24.7%)も発生
新型コロナウイルスによる就業変化に関する不安を聞いたところ、社会情勢への不安と同時に「生活・収入面の不安」が30.5%、「就業継続の不安」が30.3%となっており、6割以上が実生活に直結する不安を感じていることが分かりました。障害者雇用では、障害者への配慮として適した業務内容とそれに見合った賃金であること、非正規による雇用も多いことなどから、以前より収入や就業継続に不安を感じる障害者は少なくありませんでした。そのような中、新型コロナウイルス発生により、実生活への不安を改めて感じた障害者が多かったと思われます。
また、ストレスや体の不調などの「体調、健康面の不安」が36.7%、「上司やメンバーとのコミュニケーション、人間関係の不安」が24.7%となっています。これは感染への不安だけでなく、在宅勤務によって就業場所や環境の変化によって不安が増しているのではないかと考えられます。
【図表1:新型コロナウイルスによる就業変化の不安】
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/219149/LL_img_219149_1.jpg
1_就業変化による不安
2. 在宅勤務による就業と今後
コロナ禍で半数以上の障害者が「在宅勤務」で就業(51.6%)。今後も在宅勤務を望む人が(50.1%)
理想のはたらき方、在宅勤務を含めた「はたらき方・職場環境の選択肢、柔軟性」を求める声が約8割(78.1%)
コロナ禍の就業形態について聞いたところ、半数以上(51.6%)が在宅勤務で就業していたことが分かりました。パーソルチャレンジが企業担当者に対して行った調査でも、障害のある社員に実施した特別措置として「テレワークを導入し、在宅勤務とした」と答えた企業が最も多く(27.3%)、次いで「時差出勤や時短勤務を導入した」(26.4%)が続いています。以前より、障害者のテレワーク導入による在宅勤務は「障害者の新たなはたらき方」として注目を集めていましたが、新型コロナウイルスによって導入・活用が進んだ様子がうかがえます。
これからの理想のはたらき方として「在宅勤務ではたらけること」を上げた人が約半数に上っています(50.1%)。また、「自宅から近いオフィスや事業所ではたらきたい」(16.6%)、「今まで就業していたオフィスに出社してはたらきたい」(8.9%)など、はたらく場所に関する声も多く上がっています。テレワーク導入による在宅勤務によって、はたらき方、職場環境の選択肢や柔軟性が求められそうです。
【図表2:コロナ禍の就業形態(左)と、企業が実施した特別措置(右:企業担当者への調査結果)】
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/219149/LL_img_219149_2.jpg
2_コロナ禍における就業形態と、企業が実施した雇用措置
【図表3:これからの理想のはたらき方】
画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/219149/LL_img_219149_3.jpg
3_これからの理想のはたらき方
3. With/Afterコロナ時代、障害者が“はたらく”に重視すること
With/Afterコロナ時代、障害者がはたらくに対して重視すること「収入・給与」「就業継続」「配慮」。オンライン活用やはたらく場所を重視する声も。
障害者が“はたらく”に対して重視することについて、新型コロナウイルス発生前と現在・今後に分けて聞いたところ、新型コロナウイルス発生前は「収入・給与(64.6%)」「業務内容(42.5%)」「就業継続」(40.5%)の順に対し、現在は「収入・給与(57.1%)」「就業継続(43.3%)」「障害上必要な配慮、健康支援(30.1%)」でした。
発生前にポイントの高かった「業務」は、発生後は15.9ポイント減少し26.6%、「自己成長・キャリアアップ」も4.3ポイント減少しています(18.1%)。一方、最も増加したのは「オンライン活用・業務体制」で13.1ポイント上昇(20.1%)、次いで「はたらく場所」で6.3ポイント上昇(27.7%)という結果でした。
企業担当者に対して行った調査でも、はたらき方の変化による「労務管理」「業務」「社員同士の人間関係・コミュニケーション」「就業場所」に関する見直し・課題を持っていることが分かっています。With/Afterコロナ時代に向けて、障害者と企業、双方で、テレワーク導入による在宅勤務を前提とした「はたらき方」の在り方に変化が生じていると考えられます。
【図表4:はたらくに対して重視すること(新型コロナ発生前/現在・今後)】
画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/219149/LL_img_219149_4.jpg
4_はたらくに対して重視すること(新型コロナ発生前後)
【図表5:今後、見直しや再精査が必要と考える雇用課題(企業担当者への調査結果)】
画像5: https://www.atpress.ne.jp/releases/219149/LL_img_219149_5.jpg
5_今後見直しや再精査が必要と考える雇用課題(企業向け調査結果)
今回のはたらき方に生じた変化により、社会における障害への理解が一層進むことを望む声も上がっています。一方、障害特性によって在宅勤務や新たなはたらき方に適応できないという不安の声も上がっています。
<これからの理想のはたらき方 自由回答 一部抜粋>
・テレワーク等の充実を図り、個人の生活と両立性が高い働き方が拡大してほしい(身体障害)
・「在宅などでストレスがたまり、うつ症状が出たりする人も多くいて、精神障害者の気持ちがわかる人も増えると思う。そのことを一過性のものとして流すのではなく、「精神障害者はこのような気持ち、体調で過ごしているのか」という実感を伴った理解を深めて欲しいと思う」(精神障害)
・「感染者拡大よりも経済が回ることが優先されると思うので、感染のリスクが少ない働き方、こういう時に優先的に障害のある方を完全在宅にする、本人の意向を確認したうえでの配慮をしてくれる会社に行きたい」(身体障害)
・「聴覚障害者なので、ソーシャルディスタンスを取ったり、マスクにより聞き取れず、コミュニケーションがとれない」(聴覚障害)
・「在宅勤務となったことで通勤時の心配がなくなり仕事がしやすい人もいた一方、多くは出勤時に業務上の配慮に欠けて置き去りにされている視覚障害者もいる。就職後の継続的な支援体制を強く求めます。音声パソコンに対する社会的な理解と認知度がもっと上がって欲しい」(視覚障害)
■調査結果分析・考察
~障害者雇用においても、在宅勤務を前提とした雇用管理や健康支援、体制づくりが急務~
(人材ソリューション本部 キャリア支援事業部ゼネラルマネジャー 木田 正輝)
画像6: https://www.atpress.ne.jp/releases/219149/LL_img_219149_6.jpg
6_人材ソリューション本部_木田
まず、障害者の新型コロナウイルスによる就業変化に伴う不安を理解することが重要です。
顕在化していた収入面や就業継続など実生活に直結する不安が増し、新たなストレスとして上司とコミュニケーションが取れないなどはたらき方の変化による不安も加わりました。
これは障害者の職場定着にアラートが点灯している状態と認識しており、はたらく障害者へのケアが必要となるでしょう。
今回の調査では、障害者もコロナ禍において、半数以上が在宅勤務で就業していたことが明らかとなりました。この結果に対して意外だと思われた方もいるのではないでしょうか。もし“障害者に在宅勤務は無理だろう…”といった不安があり、障害者への在宅勤務の導入を見送った企業は、他社の取り組みを参考にしていただきたいと思います。
障害者が“はたらくこと”に対して重視することとして、「収入・給与」はさることながら、「業務内容」と同等の優先順位として「自宅と職場の距離・在宅勤務制度」と「オンライン活用・業務体制」が加わりました。
つまり、障害者にとって「どのような仕事をするのか」と「どのようなはたらきき方ができるのか」は同じ重さになったと言えるでしょう。
新型コロナウイルス発生後では、より雇用の「継続性」を重視する傾向が出ており、障害者雇用においても、在宅勤務を前提とした雇用管理や健康支援、体制づくりが急務となっています。
母集団形成や採用後の従業員の定着にも影響することから、一般の従業員よりも柔軟な対応が求められる障害者雇用に在宅勤務制度の活用は今後必須と言えます。
通勤の困難性への配慮としての在宅勤務は過去のものとなり、今までの常識にとらわれず、障害者にもはたらき方や職場環境に幅広い選択肢が必要です。
一方、聴覚障害者や視覚障害者などは新しい生活様式に戸惑いを感じており、障害種別ごとに新しい働き方における配慮を整理することも重要です。
従来、障害者の主な退職理由は、「障害の状態悪化や体調不良」や「職場の人間関係」によるものです。従業員の体調に変化が起きた時に、在宅勤務を選択することができたり、障害特性上、職場の人間関係に躓きやすい方も、仕事の幅が明確で限定的なジョブ型雇用であれば在宅勤務に向いており、退職を防げる可能性も高まるでしょう。
With/Afterコロナの取り組みは、障害者雇用の長年の課題解決の糸口にも成り得ます。
最後に、2021年3月末までに民間企業の法定雇用率は2.3%に引き上げられることが決定しています。企業が障害者に在宅勤務を導入し雇用機会の拡大を図る際は、国には新たな助成金を創設するなど企業への支援策も検討していただきたいと思います。
■パーソルチャレンジ株式会社について< https://challenge.persol-group.co.jp/ >
パーソルグループの特例子会社として、2014年10月の設立以来、障害のある方への個人向けサービスとして、国内最大級の求人・登録者数を持つ就職・転職支援サービス「dodaチャレンジ」、就労移行支援事業所「ミラトレ」、法人向けサービスとして、障害者雇用に関する多種多様な課題にお応えする「障害者雇用コンサルティングサービス」を展開しています。障害者採用の成功ではなく、定着までを考えた“障害者雇用の成功”を目指し、障害者の自立および成長を幅広く支援しています。
■「PERSOL(パーソル)」について< https://www.persol-group.co.jp/ >
パーソルグループは、「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンに、人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、ITアウトソーシングや設計開発など、人と組織にかかわる多様なサービスを展開しています。
また、人材サービスとテクノロジーの融合による、次世代のイノベーション開発にも取り組んでおり、市場価値を見いだす転職サービス「ミイダス」、ITイベント情報サイトおよびイベント&コミュニティスペース「TECH PLAY」、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+(ポスタス)」などのサービスも展開しています。