イスラエル軍、ガザの地下トンネル内で軍事作戦 「水攻め」の報道も

　イスラエルのガラント国防相は12日、パレスチナ自治区ガザ地区にあるイスラム組織ハマスの地下トンネルの中で、イスラエル軍が軍事作戦を展開していると明らかにした。ハマスの指揮所や通信施設、武器庫などを調査し、「近く（内容を）公開する」と述べた。一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル（電子版）は12日、イスラエル軍がトンネルの一部に海水の注入を始めたと報じた。ハマス戦闘員を「水攻め」にし、全長500キロ以上とされるトンネルの破壊にも着手した模様だ。

　イスラエル軍は12日、ガザの北部と南部で攻撃を実施した。ガザ保健当局は同日、イスラエル軍が北部で唯一診療を続けているカマル・アドワン病院を「襲撃した」と発表。米CNNは、イスラエル軍が院長ら70人以上の医療スタッフを拘束し、尋問していると報じた。イスラエル軍はコメントを出していない。同病院の集中治療室では患者65人が治療を受けているほか、敷地内に約3000人の市民が避難しているという。

　また、世界保健機関（WHO）のテドロス事務局長は12日、ガザ北部の別の病院から南部へ重症患者を避難させている際、イスラエル軍が車を止めてパレスチナ赤新月社のスタッフを長時間尋問したため、患者1人が死亡したと明らかにした。テドロス氏はX（ツイッター）への投稿で、「ガザ市民は戦争中でも医療を受ける権利がある」と訴え、イスラエルの対応を非難した。

　ロイター通信などによると、イスラエル軍は12日、南部ハンユニスで、ハマスのガザ地区トップであるシンワル氏の自宅周辺に戦車を展開。ハンユニス東部では軍とハマス戦闘員が激しく衝突したという。イスラエル軍は市民に「安全な避難先」と伝えた南部ラファに対しても11日夜～12日朝に空爆を実施し、子どもを含む22人が死亡した。

　こうした中、イスラエル政府は12日、ガザに搬入する人道支援物資の検査体制を拡大するため、エジプト境界のラファ検問所のほか、イスラエル境界の検問所を新たに開いた。双方合わせ、12日だけで197台のトラックが検査を終えたという。ただ、国連によると、イスラエル軍による空爆と道路封鎖のため、物資はガザ南部の一部地域にしか運ばれていないという。

　当局の発表によると、戦闘による死者は12日、イスラエル側は約1200人、ガザ側は1万8412人となった。【エルサレム三木幸治】