成田空港に日本食の10店舗オープン 航空機を眺めながら舌鼓

　成田空港（千葉県成田市）の旅客数が回復傾向の中、同空港内で1日、日本食を提供する10店がオープンした。日本人旅客は旅立つ前に、訪日外国人は旅行の思い出として味わえる。海外での日本食ブームを受け、各店舗は訪日外国人の需要がさらに高まると期待。また、国際空港に出店することで知名度アップを図り、海外出店の足掛かりにしたいとの狙いがあるケースも見受けられる。

　同空港第2ターミナルの出国手続き後のエリアに、すしや天ぷら、ウナギ、ラーメン、そば、うどんなどを扱う10店舗が集まる「JAPAN　FOOD　HALL」がオープンした。席は駐機中や地上走行する航空機をガラス越しに眺めることができるロケーションで、屋外テラス席や畳の間も設けた。友人5人でタイへ出発する松戸市の大学生、岡村タイニーさん（18）は「旅行中は日本食が恋しくなる。出発前に日本食を食べられて良かった」と話した。

　成田国際空港会社が65億円をかけて増築した建物の2階にあり、延べ床面積2200平方メートルで約420席。新型コロナウイルスの影響でオープンは当初予定の2021年12月から大幅に遅れた。8月31日の内覧会で同社の田村明比古社長は「オープンできてうれしい。コロナ禍で航空や空港は甚大な影響を受け、成田空港も（店舗やテナント関連の）リテール部門は壊滅的な状況になった。最近、長いトンネルを脱しつつある。旅の前に日本食を楽しんでほしい」とあいさつした。

　京都で訪日外国人の行列ができる牛カツ専門店「牛カツ京都勝牛」は空港に初出店した。牛カツは人気を集めており、国内55店舗、海外5カ国・地域に15店舗を展開する。運営会社「ゴリップ」（京都市）の金栄鶴・マーケティング部長は「訪日外国人が日本で和食を食べたい、牛肉を食べたいというニーズは高い。空港は訪日外国人が必ず通る場所なので、世界と日本をつなぐショーケースとして知ってもらうチャンスがたくさんあり、海外出店の後押しになる」と狙いを話す。

　東京・日本橋に本店のあるアナゴ専門店「日本橋玉ゐ」も空港に初出店し、アナゴをメインに天ぷらを提供する。斎藤秀磨店長は「日本橋や銀座の店に大勢の海外のお客様が来店し、手応えを感じた。自信はある」と話した。

　ウナギ料理店も初めて同空港に2店がオープンした。第2ターミナルに出店した老舗「うなぎ四代目菊川」は2月の羽田空港に続く空港2店目で、かば焼きやひつまぶしを提供する。担当者は「近年、すしや焼き肉だけでなく、ウナギを食べる訪日外国人が増えている。空港店は広告塔の面もあり、海外出店に向けた足がかりになる」と説明する。

　8月21日には、成田市に本店のある老舗のウナギ料理専門店「川豊」が第1ターミナルの出国手続き前のエリアにオープンしている。ガラス越しに職人がウナギを蒸して焼く様子を見学できる。店主の伊藤小澄さんは「日本の玄関口で地元・成田の名産を提供できるのはうれしい。訪日外国人が日本料理のウナギのおいしさを知り、旅行の思い出の一つにしてほしい」と期待する。帰省先の仙台からカナダ・モントリオールに戻る菊池沙織さん（34）は「日本を旅立つ前にウナギを食べられてうれしい。最後の日本食を楽しめた」と話した。夫で教師のアレックス・ジェンドロンさん（30）はウナギ料理は3回目でうな重は初めてといい、「軟らかくてふわふわしていた。香ばしく、たれもおいしい。好物になった」と喜んでいた。【中村宰和】