みなさんは、「ぺスカタリアン(Pescetarian)」という言葉を聞いたことがありますか?最近では、ヴィーガンンやベジタリアンの人達も増えてきているので、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません。
今回はそんな「ぺスカタリアン」について、実践している筆者が実体験を紹介します。
ぺスカタリアン(Pescetarian)って何?
ぺスカタリアンは一言で言うと、肉類を食べない人達のことです。しかし、魚介類、野菜類、果物類、乳製品、卵は摂取します。アメリカでは他に、「ぺスコ・ベジタリアン(pesco-vegetarian)」と呼ばれることもありますが、魚介類を摂取するので、菜食主義者の人達からこの呼び名は余り快く思われていないようです。
フルータリアン・ヴィーガン・ベジタリアンについて
ぺスカタリアンの他にも、様々な食生活を送っている人達がいます。ここでは、それぞれの違いについて簡単に説明します。
フルータリアン(Fruitarian)
フルータリアンは日本語で「果実食主義者」とも訳されますが、名前通りに果物を主食としている人達です。肉類、魚介類、野菜類、乳製品、卵は摂取しません。
ヴィーガン/ビーガン(Vegan)
続けてヴィーガン(ビーガン)と呼ばれる人達ですが、動物由来の食事や製品を好みません。
ベジタリアン(Vegetarian)
肉類や魚介類は摂取しないけど、乳製品や卵を摂取する人達です。一般的に、「菜食主義者」と呼ばれています。しかし、ベジタリアンにも色々タイプがあるので、簡単に違いを説明します。
ラクト・ベジタリアン (Lacto-vegetarian)
乳製品は摂取しますが、肉類や魚介類を摂取しません。
オボ・ベジタリアン(Ovo-vegetarian)
卵は摂取しますが、肉類や魚介類を摂取しません。
ラクト・オボ・ベジタリアン(Lacto-ovo vegetarian)
乳製品や卵は摂取しますが、肉類や魚介類を摂取しません。
フレキシタリアン(Flexitarian)あるいは セミ・ベジタリアン(Semi-vegetarian)
普段はベジタリアンの食生活を送っていますが、時々肉類や魚介類を摂取します。
もっと分かりやすく説明すると、フルータリアン<ビーガン<ベジタリアンと左から右に行くにつれて、食事の制限が緩くなります。フルータリアンは、栄養バランスがかなり偏ります。
日本人の食文化
日本人の食生活も、ひと昔と比べるとかなり変化しました。私が子供の頃に祖父がよく、「昔は牛肉は高級品で、代わりにクジラの肉を食べていた」と言っていました。正直なところ、当時の私はその意味がよく理解できなかったです。しかし、日本人の食文化について学んでいくうちに、その意味が少しずつ分かるようになりました。
昔から日本人の主食は、お米です。縄文時代からすでに稲作は始まっていたと言われていますが、本格的には弥生時代からだそうです。縄文時代はまだ狩猟が主で、鹿や猪を食べていました。弥生時代に入ると、お米を主食として、おかずに魚や山菜を食べていたそうです。
675年に、天武天皇による「肉食禁止令」が発布されます。これは仏教に基づくもので、当時は牛・馬・犬・猿・鶏を食べることを禁じていました。この肉食禁止令というのは、主に家畜の肉を食べることは禁止としながらも、狩猟による肉を食べること関しては、それほど厳しくなかったと言われています。
鎌倉時代になると、動物性の材料を一切使わない「精進料理」も広まっていき、室町時代には、「本膳料理」が武士たちの間で食べられるようになります。江戸時代には茶道の文化が広まっていき、「懐石料理」や「会席料理」も誕生します。
江戸時代の終わりごろになると、外国からの文化が日本に入ってきます。明治時代には西洋文化が浸透していき、家畜の肉を使った料理が出始めます。牛肉を使った「すき焼き」が食べられるようになったのも、大体この頃です。そして、大正時代には「洋食」という言葉が生まれます。
昭和時代に入ると、戦争が始まります。戦中と戦後は食糧難になりますが、1970年代には高度経済成長に入り、その後、流通の発達や電化製品の普及に伴い、人々の生活は少しずつ豊かになっていきました。そして、一般家庭でも、肉料理が食べられるようになります。
簡潔ですが、日本の食文化の歴史について書いてみました。昔から日本では、魚を食べる習慣があります。そして現在は、日本の代表的な料理(たくさんある内の1つとして)=「寿司」と言われるほど、日本食は世界的にもよく知られる存在です。
実際のぺスカタリアンライフ
そもそも私がぺスカタリアンになった理由は、宗教とは全く関係ありません。ある外国のドキュメンタリーで、動物達が食肉になる工程をみたからです。動物好きの私にとってはそれがトラウマになり、家畜の肉を食べることを躊躇ってしまいました。また、ちょうどその頃はアメリカの食事にも慣れてきて、体重の増加が目立ち始めた時期でもありました。当時、アメリカの大学で調理学に関する授業を取っていたので、この機会に食生活を改めてみようと思い、実践したのが始まりです。
実際のぺスカタリアンライフですが、普段の生活で困ることはないです。というのも、アメリカには、ぺスカタリアンの人達がたくさんいます。ベジタリアンやビーガンの食生活より、比較的気軽で始めやすいということが理由かもしれません。アメリカには色々な国出身の人達が住んでいるので、食事の選択肢も多いです。
例えば、アメリカの病院で、「私はぺスカタリアンです」と予め伝えておけば、それに応じた食事を提供してくれます。
また、アメリカン航空の場合も路線によりますが、事前に約15種類の機内食から選ぶことができます。この中には子供用の機内食も含まれていますが、アレルギー対応の食事や宗教上のルールに従った食事等、様々です。
私はコロナの時期を除いて、1年に1回は日本へ一時帰国するようにしています。毎回、日本へ帰った際には寿司をはじめ、焼き魚や煮魚等、魚を使った料理を食べます。そして、食べている時はいつも、季節毎に旬の魚が手に入る日本だからこそ、美味しく食べれるんだ!としみじみ感じています。
食の多様化
近年、日本でも外国人が増えているため、食の多様化やグローバル化が進んでいます。今回私がぺスカタリアンについて書いたのは、特定の食生活を推奨することが目的ではなく、将来の日本には食の多様性(Food Diversity)が大切だと思ったからです。
みなさんも、もう一度普段の食生活について振り返ってみませんか?もしかしたら、自分に合った食事や、新たな発見が見つかるかもしれません。
出典・参考
Mari
余暇プランナー
アメリカ合衆国・フロリダ在住の日本語講師兼フリーライター。学生の頃から旅行が好きで、国内はもちろん、海外は25か国以上の国に行きました。渡米後の最初の3年間は、現地レストランでの勤務やツアーガイドを経験。その後は日本語講師になり、多国籍の人達と接してきました。最近ハマッていることは、ペスカタリアン料理めぐり。10年以上前から、ペスカタリアンの食生活を送っています。