2015年10月15日、「Women Shine. Women Lead.」という、女性が経済発展や社会の進歩を推進するうえで 果たす役割について語る公開フォーラムが開催されました。これは、バンク・オブ・アメリカと、ヒラリー・クリントンによって設立された女性支援NPO団体ヴァイタル・ヴォイス・グローバル・パートナーシップとの協働で生まれた「グローバル・アンバサダー・プログラム」が東京で開催されることに伴って企画されたもの。
当日は起業家含む14人の女性リーダーたちが登壇し、女性の役割について語られました。プログラム後半の内容をご紹介します。
前半はこちら「女性が活躍する社会とは?女性リーダー12人が語る現状と未来(前編)」
■テクノロジーで女性の多様な働き方が実現し、イノベーションにつながる
パネルディスカッション3のテーマは「イノベーションと社会的起業」。テクノロジーによる社会貢献団体の支援や、社会貢献を回すためのビジネスが話題の中心となりました。
モデレーターは、槇 徳子さん(元テレビ東京アナウンサー、エムシーストラテジー 代表取締役)。パネリストには、 岩村 水樹さん(Google マネージングディレクター、APACブランド&マーケティング担当 チーフマーケティングオフィサー、Japan Women Google Japan チャプターチェア)、谷家 衛さん(インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢 発起人代表 あすかアセットマネジメント 取締役会長)、 三尾 徹さん(株式会社ミオアンドカンパニー 代表取締役 ソーシャル・インベストメント・パートナーズ 理事)が登壇しました。
この回のパネリストたちは、社会が良くなるスピードをさらに加速させていくようなサービスを展開しています。
例えば、Googleでは「Google impact challenge」。同社は非営利団体が出した良いアイディアに対して、資金を提供する活動を行っています。
また、ワールドエコノミックフォーラムが出している、各国の社会進出における男女格差を示す指標である、ジェンダーギャップインデックス”を見ても、アジア太平洋地域では低い国ばかりです。Googleでは、それを解決するために、女性をテクノロジーで支援する活動も行っています。
「テクノロジーは働き方を変えるのに、非常に役立ちます。いつでもどこでも働けるというフレキシビリティ(柔軟さ)が、女性が働き続けることを可能にします。ひいては、社会に参画する女性が増えてダイバーシティ(働き方の多様性)につながる。ダイバーシティなくして、イノベーションは起こりません。
同質性があると質問が生まれにくいけれど、ダイバーシティがあることによって『what if?』『もしこうならどうなの?』という良い質問ができるようになります。今私たちは、社会貢献活動をしている団体に出資したり、無償で広告枠を提供したりしています。テクノロジーで女性をエンパワーメントし、一番身近なダイバーシティを広げることによって、日本をイノベーティブにしたいと考えています。」(岩村さん)
■儲け方がわからなくても、まずはサービスを作ってみて
また、「資本を出してから起業するのではなく、サービスを作って世の中に披露すると、そこに投資家が殺到する。リスクを取らない方がもったいないという時代になったと思います。」と、時代の変化について三尾さんは語ります。
日本では、 利益を生むことは汚いことなのではないかという偏見によって、 社会的起業が正しく理解されていないのではないか?という現状もあります。
日本特有の背景ですが、学生の中には、利益を生むのが嫌だからNPOに勤めるという人もいます。しかし、継続するためには、お金が必要なのも事実。ここでは、やりたい事業とお金を稼ぐ事業のバランスについて話が及びました。
「Googleは最初、検索エンジンを作ったときに、どうやって儲ければ良いかアイディアがなかったんですね。けれども、検索エンジンと連動した広告を出し、質の高い広告を出すことで広告モデルでもイノベーションを起こしました。検索エンジンと広告エンジンが両輪になって回って現在の地位まで来たのです。
ですので、やはりお金は必要なんですね。このエンジンによってちゃんとお金を儲けられるから、社会問題を解決するアイディアを実現できるのです。そしてより大きなインパクトを出せる。」(岩村さん)
テクノロジーの発達によって、起業しやすい環境が整いつつあります。実現したいサービスがある場合は、まずリリースしてみることで道が開けるかもしれません。
最後に、谷家さんは社会の基準にとらわれずに自分を表現することの大切さを語りました。
「人生は一度きりしかありません。絵を描くように、自分を思いっきり表現できることが一番幸せだと思います。社会の基準を気にせずに、自分を表現する人生を歩むことで、自分がまず幸せになること。そうすれば、社会にインパクトを出すことができるでしょう。」(谷家さん)
■これからは女性の時代
パネルディスカッション4では、メンターの方々の体験談や、リナ・デ・シストさん(バンク・オブ・アメリカ インターナショナルCSR責任者)によるプログラムにかける思いが語られました。
「グローバル・アンバサダー・プログラムは、日本にメンターシップをもたらし、女性起業家や女性リーダーを育成することを目的としています。フォーラムで行われているテーマは、各国で異なります。起業することで経済的に裕福になりたいということだけでなく、国民をより幸福にし、社会に良い影響を与えたいと思っているメンティーがたくさんいます。
同プログラムでは、期待できる若者にしっかりと投資をします。メンタリングとネットワーキングをしっかり指導するので、100人、1,000人のコミュニティに影響を出すことができるものだと考えています。これは、持続可能な投資だと思います。」(リナ・デ・シストさん)
今回のフォーラムで主に議論となっていたのは、女性の雇用問題。安倍首相も成長戦略の一貫として女性の就業率を上げることを掲げています。日本は世界から見ても、教育水準が高い女性が多い国にも関わらず、女性就業率はけして高いとは言えません。
しかし、テクノロジーをはじめ、起業のための制度やサポート団体が多く出てきており、以前にも増して女性が起業する土壌が整いつつあります。女性の労働率が上がると、GDPが9%上がるというデータもあります。
「偉大な冒険が目の前に差し出されたら、受け取るしかありません。」
女性の能力は限られているという男性社会の偏見に挑んだ飛行家アメリア・メアリー・イアハートの言葉です。
イアハートのように、女性たちが自分自身の可能性を能力を信じ、積極的に社会に参加していくことは、これからの日本の発展に、きっと大きな効果をもたらすのではないでしょうか。