茨城には北海道とアジア、北中米、そして宇宙があった。
電車なんかと違って、クルマで行く旅は風の吹くまま気の向くまま、どこにだって行ける。相棒が愛してやまない自分のクルマだったら、より楽しい。それと思い立ったらパッと行けて、パッと帰ってこられるくらいが、ドライブにはちょうどいい。
そんなわけではじまった本連載。今回はブランド「SAVE SHOCK」のディレクターである一柳聡さんと、一路、茨城の常総方面へ。パッと浮かぶ名所はないけれど、実は名所の宝庫。なんたって、日本でありながら、いろんな国へ行けちゃうんです、宇宙もね。
デリカのバランスが自分にとって最高だった。
一柳さんはブランドのディレクターであり、バンドマンでもある。そしてキャンプやランニング、バックカントリーをこよなく愛する。
本業であるブランドの仕事では狭い都内の道を走り回らなくてはいけないし、バンド活動では多くの人と荷物を乗せて遠くまで行かなくてはいけない。趣味に興じるときは、悪路を走ることもあれば車中泊をすることもある。
「だから走破性と車内の広さが自分にとっては大事なんです。デリカはどんなぬかるみも雪山も安心して運転できるし、荷物もめちゃくちゃ載る。その割にはコンパクトだから、都内の運転も苦にならないんです。ルックスも気に入ってます。いまのところ、これに勝るクルマはないですね」
2019年に走行距離7万キロのものを購入し、現在約18万キロ。計算すると1年で2万5000キロだから、1年で地球の半分以上を走っている計算になる(地球一周は約4万キロ)。相当な距離を走っているものの、エンジンはびんびんだ。
以前もデリカに乗っていて、デリカ歴はトータル10年以上。それほどデリカがライフスタイルにフィットしていることがうかがえる。
「それまではアメ車を乗り継いでいましたけど、デリカに乗ったらなかなか戻れないです。もうそろそろ20万キロなんで、そのタイミングでランクルかパジェロにしようか迷ってます。でも、もしかしたらまたデリカかもしれないっすね、本当に最高のクルマなんで」
ルックスファースト主義の人もいれば、機能重視の人もいる。でも、一柳さんのクルマは仕事の道具でもあれば、趣味を楽しむための道具でもあるからこそ、そのどちらも必要なのだ。
常総の道の駅はサツマイモのテーマパーク。
今回、一柳さんのデリカで向かうのは、茨城県の常総方面。都内から1時間半ほどで到着する。
中目黒を出発し首都高に乗って向かうのだが、首都高の作りは複雑怪奇。油断するとまったく別の方面へ進んでいることも少なくないのだけど、一柳さんはマップを使わない。なぜなら首都高を完全に網羅しているから。
「マップのない時代にメッセンジャーをやっていたし、この辺も20年近く運転していますから。逆にいまは、みんなナビに頼っているから覚えないんですよ」。高難易度の道をナビを見ないで進む男、かっこいいっす。
この日は生憎の天気で、傘を諦めたくなるほどの雨と風。そのなかを北上し、最初の目的地である「道の駅 常総」に無事到着。
およそ1年前にオープンし、平日でも多くの人が訪れる話題のスポット。ここへ来た目的はサツマイモ!
「何度か自分で取り寄せたこともあるくらいサツマイモが好きなんですよ。それも茨城のものでした。だからここに来るの、楽しみだったんです」
一柳さんの目論見通り、道の駅はサツマイモだらけ。干し芋の種類も圧巻だし、芋けんぴをはじめとした加工品も無数にある。UFOキャッチャーまでもがサツマイモ(ここで購入した干し芋はマジうまでした)。
軒先では焼き芋が販売されていて、これまたうまい。熱々で、持った瞬間にとろけそうなほどに柔らかく、熟成が進み蜜もたっぷりで食感はねっとり。一本ペロリです。
一柳さんはキャンプにて、とりあえず焚き火にアルミホイルで包んだサツマイモをぶっ込んで、食後のデザートとして食べるか、明朝の朝ごはんとして食べるみたい。食物繊維もたっぷりだから身体にもいいんです、サツマイモ。品種はやっぱりシルクスイートで。
スリランカにインドにタイ。アジアの空気に包まれて。
次にやってきたのは、R.I.P.鳥山明先生ということで「亀仙人街」。一柳さんが好きな『ドラゴンボール』のキャラクターはカリン様。
ハゲでちょっとHな師匠はいないのだけど、やっぱり、どうしても、かめはめ波を打ちたくなっちゃう。
で、ここはアジア人が経営するテナントが入る建物で、インド人が経営するカレー屋だったりフィリピンパブなどアジアンなお店がたくさんで、昼間でもディープなにおいが充満してる。離れにはスリランカのスパイス屋さんが。店内に入るといろんなスパイスとインセンスの香りがムワッと漂う。
多くの商品がスリランカからやってきたもので、お米や調味料、雑貨などは見ているだけで楽しい。旅慣れた一柳さんも「超スリランカじゃん!」というほど、スリランカです。カレー作りが好きな人たちは、スパイスの種類と量の多さに歓喜するはず。スリランカでは国民的スポーツとして知られるクリケットのバットなんかも売っている。
ここからがタイトルにもある「世界旅行」のスタートです。オリエンタルな空気を感じたら、次に向かうは北海道&メキシコ!
セイコーマートとフラミンゴ、そしてコーヒー。
幹線道路を走っていると「あっ、セコマじゃん!」と一柳さん。迷わず駐車場にピットイン。
北海道民もしくは北海道を旅行したことがある人にはお馴染み、北海道のローカルコンビニ『セイコーマート(通称セコマ)』。実は茨城県にも出店していて、北海道へ行かずとも、関東であの味を食すことができる。一柳さんはスノーボードも大好きだから北海道には頻繁に訪れていて、その際は毎日セコマを利用しているそう。
「特に、ホットスナックのフライドチキンはマジでうまいっす。みんなで食べましょう、せっかくだから!」
「やっぱ、うまいな〜。一気に気分は北海道ですよ」
店内でカラっと揚げられたひとくちサイズのフライドチキンは、スパイスが効いていて、ベスト・オブ・ホットスナックと言っても過言ではないくらいにうまい。一柳さんが推すのも頷ける。駐車場でサッと食べて、次はメキシコ!
MEXICOは、本場スペイン語のイントネーションだと「メヒコ」。ここはそんなレストラン。
「福島や茨城に展開するチェーン店で、店舗によってはフラミンゴがいるらしいという話は以前から知っていたんです。で、ここがまさにフラミンゴがいる場所。最近、このあたりの出身者に話を聞いたら『フラミンゴが年をとってピンクじゃなくなってる』って言ってたけど、どうなんだろう」
早速店内に入ってみると……超ピンク。そして予想以上にたくさんいる。
守谷店は、店の中央にフラミンゴが飼育されていて、それを囲むように席が配置されている。フラミンゴを眺めながら食事を取れるというわけだ。
よくあるファミリーレストランよりは高級な同店。記念日なんかにもいいかもしれないし、動物園代わりに訪れるのもあり。この日は紳士と淑女が店内でバースデーを祝っていた。
地球を飛び出して、ちょっと宇宙へ!
北海道とメキシコへ行ったあとは、宇宙へ寄り道。
やってきたのは、JAXAも拠点を構えるつくば市。宇宙関連の施設が点在しているのだけど、訪れた「つくばエキスポセンター」は1990年代における日本の主要ロケットであったH-Ⅱロケットが展示されていたり、プラネタリウムでは天体観測や宇宙を旅するプログラムも上演している。
「いま思い出したんですけど、ここ、小さい頃に来たことがありました。記憶はおぼろげですけどね。親父がこのあたりで働いていたから、その縁もあって来たと思うんですけど」
屋外と屋内には体験型のアトラクションもたくさんあって、子供はもちろん、大人も十分に楽しめる。しっかり堪能したいなら、2時間はみておきたいところ。意外にも夢中になっちゃいます。
この日は駆け足で、ロケットを持ち上げたり、鏡で溶け合ったり、シャボン玉で身体を包んでみたり、ガチャガチャを回したり。なかなかにサイケなハンカチをゲットです。
ランニングすることで、クルマでは気付けない街の魅力を知る。
時刻は14:00。この頃になると、朝の雨が嘘のような快晴に。ここで一柳さんが「ちょっと走っていいですか?」
最近の一柳さんはもっぱら走っている。旅先のルーティンのひとつにもランニングがあるほどだ。その理由をこう語る。
「知らない街を走るのは単純に楽しいんです。それとクルマとは違う目線で街を見られるし、速度も遅いから、いろいろ発見できるんですよね、おもしろいお店とかね」
最近のコーディネートもいつでも走れるようにと機能服が多く、靴もランシュー。小さなザックを担いで、雨上がりの綺麗な空気を吸って街を走る。このあたりは起伏も少ないから走るのも楽しい。「近いうちに筑波山も走りたいと思っているんです」。
読者の方にはぜひ、トリップ&ランを試してみて欲しい。地元にコミットした気にもなるし、いろいろな発見があるはずだから。
旅の終わりはアメリカで。
最近はもっぱら古着派の一柳さん。都内でも時間をみつけては古着屋でディグってる。
「古着は東京が一番品揃えも量も多いと思います。けど、地方でもタイミングがあれば行きますね。フラッと入ることなんかはよくあります」
この日も、たまたま通りがかったつくば市の古着屋「メイ」に立ち寄ってみる。店内にはアメリカのレギュラー古着がびっしり積まれている。
慣れた手付きで服を探していく。そうして手に取った一枚を見て「これ買います」と即決。「シルエットがいまっぽいし、襟の雰囲気も懐かしい。ちょっとこれ、自分のブランドでオマージュしてリリースしようかな(笑)」。気になる方は「SAVE SHOCK」のインスタを追っておくべし。
古着を堪能したあとは、かねてから行ってみたかったというアメリカトイのお店「2000toys Antique Mall」へ。高円寺にも店舗があるが、土浦の店舗は敷地も広く、外観も内観も、どこを切り取ってもアメリカ!
店内をお見せできないのが非常に残念なのだけど、品揃えは圧巻。トイはもちろん、服や食器、雑貨など、店内にびっしり並べられている。
「アメトイ系が好きで、マクドナルド系も収集してます。安く売ってたら買っちゃうし、地方のほうが確実に安いです。ここもめちゃくちゃ堀りがいがありますね。これてよかった!」
そこでゲットして80年代のガーフィールドのぬいぐるみ(3800円)をクルマに乗せて、ワンデイドライブはこれにて終了。いや〜、いいドライブでした。一柳さん、本日はいかがでしたか?
「地方都市はいつ来ても楽しいですね。自然にもすぐアクセスできますし。生まれてこのかた40年以上東京なので、一回は地方でも暮らしてみたいと思ってます。にしても今日はいろんな国に行けましたね。茨城にはよく来るけど、こんなに見どころがあったなんて知らなかったですよ」
茨城のポテンシャルは底知れない。掘れば掘るほど出てくるし、現地に着いたら着いたで、さらに行きたい場所がわんさか出てくる。魅力度ランキングなんてアテにしちゃいけないです。魅力のない街なんてないのだから。
次は誰と、どの街へ行こう。
Photo/Shouta Kikuchi
The post 茨城へドライブしに行ったら、世界旅行ができちゃった!?【ワンデイドライブ #7】 first appeared on GO OUT.