■物足りなく感じられたインテリアもクオリティがアップ
2020年7月に日本に上陸したフォルクスワーゲンT-Rocは、ゴルフ級のクロスオーバーSUVです。2021年の輸入車SUV販売台数では、弟分のT-Cross(ポロ級のSUV)に次ぐ2位につけています。
T-Rocは、日本登場から2年後となる2022年7月に受けたマイナーチェンジで、内外装を刷新し、最上級スポーツ仕様の「R」の追加がトピックス。
エクステリアは、前後バンパーのデザインが変更され、ヘッドランプ下のフロントエプロンが新デザインの六角形になり、デイタイムランニングライトが用意されたことで、改良前よりも存在感が増しています。
さらに、フロントグリルを左右に貫く、横一文字のLEDストラップが「VW」エンブレムを挟むように配されたことで、精悍かつ先進的なイメージが強調されてます。
一方のインテリアは、やや質感や色気に欠けていた改良前と比べて、ダッシュボードやドアトリムにステッチが施されたソフト素材や人工皮革のレザレットによりクオリティアップ。
そのほか、新デザインのステアリングホイールは、中央の「VW」エンブレムが改良前の立体感のある造形から、二次元ロゴに変更されています。
改良前のディスプレイは、インパネにすっきり収まるビルトインタイプでしたが、改良後は、手前側にタブレットのように配置され、操作性、視認性ともに向上した印象を受けます。
なお、全車にデジタルメータークラスターやタッチコントロール式のエアコン操作パネルが標準装備されます。外観以上に、内装のクオリティアップは、明確に伝わってきます。
フォルクスワーゲンのSUVでは、兄貴分のティグアンRに続き、T-Rocにも「R」が追加されたのも見逃せません。
「R」は現行ゴルフ、ゴルフヴァリアントにも設定されるなど、同ブランドで最もレーシーなモデル。ティグアンでは「R」が約20%を超えるシェアに達しているそうで、T-Rocでも一定の支持を集めるのは、間違いないでしょう。
エクステリアは、専用デザインの前後バンパー、「R」のエンブレムがフロントグリルやテールゲートに配されています。さらに、足元も専用19インチアルミホイール、ブルーのブレーキャリパーにより引き締められています。
マイナーチェンジ後のグレードバリエーションは、「Travel Assist」や「Park Assist」などの最新の運転支援システムが標準化される「TSI Active」がエントリーグレードになり、LEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」やパワーテールゲート(挟み込み防止機能付、「Easy Open &Easy Close」機能付)が標準装備された「TSI Style/TDI Style」「R-Line」専用エクステリアやシートが用意され、18インチアルミホイールを履く「TDI R-Line」。
そして、先述したように「R」が控えています。T-Rocで唯一のフルタイム4WDである「4MOTION」が備わり、専用スポーツサスペンション、アダプティブシャシーコントロール「DCC」が標準装備され、好みや状況に応じて、パワートレーンのみならず、足まわりやパワステの特性を変更できます。
●アナウンスはないものの、乗り心地の改善も朗報
筆者が乗ったのは「TDI R-Line」と「R」の2台。
前者は、直列4気筒2.0Lディーゼルターボを積み、7速DSGとの組み合わせで、150PS/3500-4000rpm・340Nm/1750-3000rpmというアウトプットを得ています。タイヤサイズは、225/40R19となっています。
走り出してすぐに気がつくのは、改良前よりも乗り心地の角が取れている点で、とくに本国からアナウンスはないそうですが、改良前のT-Rocでの課題に感じられた過度に引き締まった乗り味が改善されています。
とはいえ、19インチタイヤを履くスポーティグレードの「R-Line」ですので、足が硬めなのは確か。それでも「R-Line」というキャラクターを考えると、個人的には十分に許容できる範囲に収まっています。
また、ディーゼルエンジンは、アイドリング時や低速域では、音・振動ともに高めに感じられる以外、中低速域のトルク感も十分にあるなどその利点を享受できます。また、高速域のスタビリティの高さ、正確なハンドリングも美点で、速度域が高くなっても安定した走りが可能です。
一方の「R」は、2.0L直列4気筒インタークーラーターボを積み、300PS/5300-6500rpm・400Nm/2000-5200rpmという圧倒的な動力性能を誇ります。
トランスミッションは、同じく7速DSG。0-100km/h加速は、4.9秒(欧州仕様値)でクリアするというスペックどおり、どの速度域からものぞく加速感が得られます。
とくに、過給が始まってからの怒濤の加速フィールは痛快そのもの。スムーズかつダイレクト感のある7速DSGも走りの良さを引き出しています。
高速域の操縦安定性は、「R-Line」よりもさらに上回り、高速コーナリング時に4WDであるメリットを享受できます。また、市街地でもピーキーさは皆無で、極低速域にDSGらしい変速の「間」が若干あるものの、すぐに慣れるはず。
「R」には、先述したようにアダプティブシャシーコントロール「DCC」が備わるのも大きな美点です。「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「スノー」「レース」「オフロード」などから状況に応じて選択できます。
専用スポーツサスペンションを備えているため、街中の低速域では少し揺すぶられるような乗り味も示しますが、高速域では「R-Line」よりもフラットライド感があり、最上級スポーツ仕様にふさわしい引き締まったフットワークを堪能できます。
T-Rocは、日本でも取り回ししやすいジャストサイズSUVといえる存在で、今回のマイナーチェンジで課題であった乗り心地が改善している印象を受けたのが最大の収穫のように感じられました。
もちろん「R」の追加も新しいユーザー層を呼び込むはずで、同SUVの販売台数を引き上げるのではないでしょうか。
●価格
「T-Roc R-Line」:460万9000円
「T-Roc R」:626万6000円
(文/写真: 塚田勝弘)
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