脳神経外科医の立場から、健康法やメンタルケアに関するさまざまなノウハウをわかりやすく解説し、多くの著作をも世に送り出しているドクター菅原道仁と、これまで5000人以上の若者を取材し、今なお「永遠の思春期」を自称するカリスマライター山田ゴメスとの“夢のコラボ”企画!ドクター菅原による脳科学に裏付けられた冷徹な分析と、ゴメスが25年のライター業で蓄積してきた膨大なデータをMIXした、死角ナシ&最強の「恋愛相談」をアナタにお届けします!!
【LOVE BRAIN 特別編】
#Case11 コリドー街凸撃潜入ナンパルポ
さて。ここまで脳神経外科医ならではの専門的な知識と、ベテランライターならではの豊富なデータをもとに、さんざ好き勝手な恋愛指南を放言しまくってきたDr.菅原&山田ゴメスであるが(笑)、これら諸々のロジックがいざ実戦ではちっとも役に立ちませんでした……では、それは単なる「机上の空論」にすぎない。
ってなわけで! ちゃんと街に出て検証してきましたよ〜。あまり乗り気じゃないDr.菅原を強引に引っ張り出して……。
今回、凸撃潜入ルポの舞台として、我々がチョイスしたのは──近年、一流企業に勤める若い男女の“出会いスポット”として熱い視線が注がれる、東京・新橋から銀座に抜ける線路沿いにある全長約400メートルの路「コリドー街」! 「一流企業に勤めていなくて、若くもないフリーキーな二人」に、はたして勝算はあるのか? 脳科学に基づいたモテのテクニックは、一見こうも為す術のなさそうな圧倒的ビハインドを覆すことができるのか!? リポーターのゴメスがお届けします!!
■スーツで高級感を演出するべきか、孔雀のような派手さでとにかく目立つべきか?
まずは、この日の我ら二人のファッションをチェックしてほしい。
ゴメスは、ピンクのジャンパー(プラダ)に、パンツはお洒落ジャージ(ヨージヤマモト)、靴は黒のスニーカー(コムデギャルソンとナイキのコラボアイテム)……という総額20万円強のバブリースタイル(※のちにルイ・ヴィトンのニット帽着用。+7万円)。いっぽうのDr.菅原は、アウターが20万〜30万円はしそうなモンクレールという一点豪華スタイル。
ここでDr.菅原から「ゴメスさんのファッションはわかりにくい」と、いきなりダメ出しが!?
「たとえば、10万円でお洒落をするなら4万・3万・3万に分けるのではなく、一つのアイテムに10万すべてを突っ込みましょう。一つの高価なアイテムが目に着くと、それに他のアイテムも引かれていく習性が人間にはあります」
これを「錨(いかり)を打つ」という意味で「アンカー効果」と呼ぶらしい。なるほど、自宅にあったブランドグッズを根こそぎ引っ張り出して、やみくもにコーデする成金的発想は「かけた金額のわりに見返りが少ない」ってことか。心のノートにメモっておこう。
一般的に「コリドー街へと集まってくる女子は、大半がエリートサラリーマン目当てゆえ、モテるのは圧倒的にスーツ姿、どんなに高価なブランドモノでもカジュアル系は人気が薄い」とされている。Dr.菅原もこうおっしゃる。
「スーツは、現代人の脳では一種の『経済力の指標』になっており、『スーツ=お金持ち』という印象を他人に植えつけやすいのです」
もし、これらのセオリーに則るなら、我ら二人のファッションは完全に「負け戦用の死装束」ってことになるわけだが、あえて今回は
「突出した外見で異性に接するのは、孔雀が翼を広げて求愛行動をしているようなもので、まずは目立たなきゃという観点になぞれば、戦略的には間違っていません」(※LOVE BRAIN vol.3参照)
……なるDr.菅原理論を試すことにした。
■スモーカー同士の連帯感・親近感を最大限に活用し、ナンパに挑戦!
孔雀のように(コリドー街では)突出した外見で、コリドー街を一往復半ほどパトロールしたころ、某スペインバルの外でタバコを吸っている20代らしき女性二人を発見した。
「ちょい派手めなコンサバ系」といった程良いファッションバランスで、容姿レベルもけっこう高い。どちらも「真ん中高めのストレート」、ゴメスのストライクゾーンである。
さっそく彼女らに接近し、「このお店、中では喫煙できないの?」と話しかけてみる。しばらく「スモーカーには肩身の狭い時代ですよね」「ボク、タバコ吸う女性と一緒にいたらホッとするんですよ」……みたいな世間話を交わしてから、「よければ一緒に飲みませんか?」と誘ってみると……あっさり快諾。
「昨今では迫害される度合がますますエスカレートしている喫煙者は、他の喫煙者に親近感を抱きやすい」
そんなゴメス理論である。
「え! しょっぱなの声掛けでナンパ達成!?」
いささか拍子抜けしてしまう。完璧セオリー無視で挑んだからには、一度や二度や十度のトホホなケースぐらい覚悟していたんですけどね。いや、まがりなりにも「検証」を称するなら、むしろ失敗のパターンもいくつかはあったほうがよかったのかもしれない。あくまで上手く事が進んだがゆえの余裕からくる発言にすぎないのだが……?
とりあえず、初陣の勝因を探るため、彼女らにこう訊ねてみた。
「コリドー街で僕らのような恰好してたら相手にされないって聞いたんだけど…?」
「ここって、まわりはスーツの男ばっかだから、オシャレだったらむしろ目立ってイイと思いますよ〜」
「孔雀理論」が「スーツ=お金持ち理論」を凌駕したわけだ。
■Dr.菅原は「ツァルガイニック効果」攻撃を、ゴメスは「バーナム効果」攻撃を試行
それにしても、さっきからDr.菅原はほとんど会話に参加せず、女性からの問いかけに最低限の相づちや回答を返すだけである。せっかくコッチが一所懸命しゃべって場を盛り上げているのに、なんて協調性のない男なんだ……と苛つきをおぼえるが、約30分後、やっとゴメスは気づいた。そう! Dr.菅原は、まさに今
「脳科学的に、人間は秘密めいているモノ、自分の許容範囲を超えているモノ、始めて出会うモノに興味を示す習性があるんです」(※LOVE BRAIN vol.3参照)
……といった「ツァルガイニック効果」を実践している真っ最中なのであった。
さらには、その効果を応用した「相手に極力正体を掴ませないよう、弾みかけている会話をあえて強制終了」(※LOVE BRAIN vol.3参照)してみたり……と、“司会進行役”はゴメスに丸投げしながら、じつによく計算された動きで、女子たちのハートをじわりじわりと鷲掴んでいる。「お医者さんなんですか? なんのお医者さんなんですか〜?」「ん? 脳外科医」「それって、人の頭を切って開けちゃうんですか?」「うん。何百体も何千体も」「すご〜い!」「ところで、キミはどんなお仕事をしてるの?」……なんて具合に、だ。
もちろん「一枚の紙切れにあらゆる情報が詰まっている名刺」の交換も「持ってないから」とやんわり拒絶。(※LOVE BRAIN vol.3参照)なかなかに如才がない。このままだと全部持っていかれてしまう……。
とっさにDr.菅原から伝授してもらった
「誰にでも該当するような曖昧で最大公約数的な性格をあらわす記述を、自分だけに該当する性格だと捉える心理学現象」(※LOVE BRAIN vol.2参照)
……とされている「バーナム効果」が頭に浮かぶ。相手の見た目や第一印象と正反対のことを言えば、人間は必ず対極する二面性を持っているため、「そんな風に言われたの初めて~。このヒトは私のことをちゃんと見ている」と錯覚(?)してしまう一発逆転の荒技だ。
「ちょい派手め」な二人組の、より「ちょい派手め」で一見、男友だちもたくさんいそうなほうの女性にこう振ってみる。
「○○ちゃんって、いかにも彼氏ができたら一途っぽいもんね」
「意外と一途っぽい」だといけない。「いかにも〜」が重要なポイントであるのは申すまでもない。効果はてきめん!「でしょ〜?」「あたし、好きになったらそのヒト一筋になっちゃうから、たまに重いって言われるんですよ〜」「やっぱり〜?」(※この「やっぱり」も重要なポイント)「しょっちゅう飲みに行ったりしてるから、誤解されやすいんですけどね〜」……と“分断”に成功する。もしかしてボク、今モテてます?
「なんでも好きなもん注文して!」「シャンパン(※正確にはスパークリングワイン)、ボトルで空けちゃおっか!?」……。
■「食い逃げされてもいいや…」と無償の愛を最後まで貫く!
終電を気にしはじめた彼女たちとの別れ際も、まことに潔いものだった。「モテないおじさんの3つの傾向」としてDr.菅原が挙げる
「くどい・目線が定まらない・見返りを求めすぎ」(※LOVE BRAIN vol.5参照)
……を肝に銘じ、最後の最後まで、どんなに酔っぱらっても彼女らの胸元までは目線を落とさず、集中して鼻あたりを凝視し続けるよう努力をした。
会計もオール我々持ちで、仮に「食い逃げされても、楽しかったからそれはそれでいいや…」と、あっさりリリース。“無償の愛”を貫いた。すると……この日つくったグループLINEに翌日、相当な高確率で次回へと繋げられる香りのする、丁寧なお礼メールが届いておりました。
[後日談]
グループLINEを駆使して、他の男性メンバーに、自分がタイプな女性とのデートが実現するようフォローを入れてもらう、
「直接本人から伝えるよりも、第三者を介して伝えたほうが、より影響力や信ぴょう性が増す脳の習性」(※LOVE BRAIN vol.4参照)
……を利用した「ウィンザー効果」を試すことは、残念ながらできなかった。なぜなら、Dr.菅原がグループLINEに全然参加してきてくれないからである。
すわ! 抜けがけか!?
だとすれば、やはりDr.菅原……とんでもなく油断のならない男である。ならば、私も姑息に抜けがけて、今日から個人攻撃へと移行しますんで……こうして男同士の友情と結束は、脆くも崩れていくのだ。
最後に! 『LOVE BRAIN~脳科学恋愛研究所~』が2019年2月、満を持して書籍化されます。今回のコリドー街凸撃潜入ルポほか、脳科学の見地から「恋愛」を語った、あらゆる分析・攻略術がこの一冊にギュギュッと凝縮されています。乞うご期待!!
【プロフィール】
菅原 道仁(すがわら みちひと)
1970年埼玉県生まれのA型。現役脳神経外科医。クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門として救急から在宅まで一貫した治療システムの提供を目指し、北原国際病院に15年間勤務。現在は菅原脳神経外科クリニック院長。その診療体験をもとに「人生目標から考える医療」のスタイルを確立し、心や生き方までをサポートする治療を行う。「恋愛とは病気の一つ」をモットーとするが、本人は「すぐ恋に落ちてしまう反面、フラれたらすぐ忘れてもしまう」という至って健康体?
山田 ゴメス(やまだ ごめす)
1962年大阪府生まれのB型。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、さらには漫画原作に省庁仕事まで…記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味とするライター&イラストレーター。かつては『Hot-Dog PRESS』の恋愛・SEXマニュアルも担当していた「恋のマエストロ」。「百の恋愛には百の戦略がある」をモットーとし、「いまだ現役」の実体験から得た千差万別のデータに基づいたリアルなLOVEテクニックは他の追随を許さないが、自分の色恋沙汰になると案外ポンコツな一面も時折かいま見せる。
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