春分の日と秋分の日に行われる、特別な仏教行事のひとつ「日想観」。大阪・四天王寺は日想観が行われるお寺の中でも有名なお寺です。
私も「日想観」を知ったのは四天王寺にかなり多くの人が集まっていたことがきっかけです。
今回は日想観についてや四天王寺についてご紹介します。
日想観とは?
日想観とは仏教の中でも 浄土教の仏事で、瞑想法の一種 だといいます。簡単にいうと、 西の空に沈む太陽を見て極楽浄土を観想する というもの。
自ら西の方角に向き、心を落ち着けて自分の目で落日をじっくりと見ます。太陽が沈んだ後は暗くなり静寂が訪れますが、まだそこに太陽があるかのように瞑想し、 太陽を感じる ことが大切です。そうすることで 極楽浄土を見、お釈迦様を感じることができる という、いわば「 修行 」のひとつなのです。
知識や経験は必要なく、 時と場所を選ばないシンプルな修行法 であるため、僧侶の間だけでなく一般人にも広まった修行のひとつです。
極楽浄土とは、阿弥陀仏がいる世界で苦しみがなく美しく楽しい世界。仏教ではその極楽浄土に行くために修行をつみ、精進することが大切だとされています。
日想観を通して極楽浄土を思い浮かべ瞑想することで、お釈迦さまの教えを体感することができるかもしれません。ちなみに四天王寺では日想観を「じっそうかん」とよみます。
四天王寺の日想観
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日想観は全ての寺院で行われている行事ではありません。しかし 四天王寺では長く親しまれてきた行事 だといいます。後述しますが、四天王寺の周辺は 夕陽の名所 として有名であることがその理由だとされています。
四天王寺の日想観が行われるのは 西門(極楽門) 。西門から、石鳥居の向こうを見るとちょうどその中に夕日が沈む様子が見えます。
実際のイベント
当日はかなりの人が西門付近に集まります。 コロナ禍前は屋台が出るなどとてもにぎやかな雰囲気でした。
夕日が沈む時間帯にはかなり混雑するため、注意が必要です。場所取りなどもできないので、少し時間に余裕をもって訪れるようにしましょう。
皆が西門の中にある石鳥居・夕日の風景をとるためにカメラやスマホをかざしています。
かなりの逆光になるので写真を撮るのも難しい かもしれません。また、当日の天候によっては夕日が見えないこともありますが、それでも行事は行われます。
方角的に 門の中から外を撮る形 になるので、四天王寺の境内の建物は映りません。境内の中を見たい、写真を撮りたいという方は時間を変えて撮影するのがおすすめです。
日想観が始まれば、 西門付近で僧侶の方が読経 をしてくださいます。荘厳な雰囲気に包まれ、静かに手を合わせて夕日を眺めましょう。
日程は?
2022年は9月23日 午後5時20分~ 行われます。
公式HP によると、厳修後に阿弥陀堂前にて記念の御札を無料配布するといいます。
四天王寺と夕陽
四天王寺がある場所は「 上町台地 」というちょっとした高台になっています。今では海ははるか遠く、平野が広がっているこのあたりですが、 約2000年前はこの周囲は海が広がっていた といいます。
海があったのは四天王寺の西側。そのため 西門の向こうに極楽浄土を観る、という意味で西門には別名「極楽門」という名前 がついています。
西門の外にある石鳥居は、古来より極楽浄土の東門にあたると信じられていた鳥居。その中心に沈む夕日を観れば、極楽浄土をより身近に感じることができるかもしれません。
四天王寺の周りには坂がいっぱい
四天王寺が高台だったことと夕日の名所だった名残は、四天王寺の最寄り駅が大阪メトロ谷町線の「 四天王寺前夕陽ヶ丘 」という名前であることからも感じられるでしょう。
また、駅の近くには鎌倉時代の歌人・藤原家隆が夕日を愛し建てて暮らしたという「夕陽庵」の跡も残っています。はるか昔・鎌倉時代からここは夕日の名所として有名な場所だったことがわかりますね。
また、 司馬遼太郎の小説「燃えよ剣」にも土方歳三が夕日を眺めるために過ごした場所として登場 します。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
駅の西側には、急な坂がいくつもあります。これらは 天王寺七坂 といわれ、昔からここに大きな高低差があったことを示すものでもあります。
今では住宅街やマンションが立ち並ぶ地域であり、西側の坂の下には難波などにぎやかなエリアが広がっています。当時の面影はあまりありませんが、四天王寺とその周辺で夕日を見れば昔の歴史情緒を感じることができるかもしれませんね。
四天王寺の歴史
四天王寺は 推古天皇元年(593)に聖徳太子によって建立された という歴史あるお寺。四天王寺は長らく「天台宗」に属していたといいますが、戦後に宗派を問わない「和宗」となりました。
境内には浄土真宗の宗祖・親鸞聖人や、真言宗を広めた弘法大師(空海)の像も存在します。毎月の縁日には多くの店やフリーマーケットが開催されにぎわいます。
四天王寺は戦火や災害に何度も見舞われていますが、現在は 創建当時(飛鳥時代)の様式の建物が忠実に再現 されています。
とても広いので散歩や観光にもぴったり。朱がとても映えるので、ぜひ写真を撮って楽しむのもおすすめです。
亀がたくさんいる亀の池や、源義経が兄に追われた際に立ち寄って松に自らの鎧をかけて休憩したといわれている「義経鎧掛松」などちょっとしたスポットも楽しめます。
近くにはあべのハルカスもあり、天王寺は観光スポットとしても人気の場所です。散策して楽しんでみると新たな発見があるかもしれません。
日想観で自分と向き合う体験を
普段なかなか触れる機会がないかもしれませんが、この機会に 夕日を眺める体験 をしてみてはいかがでしょうか。極楽浄土に触れて、心が洗われるような気持になれるかもしれません。
石鳥居の中に太陽が沈んでいく光景を見ていると、昔から変わらない思いを感じることができてとっても不思議な気持ちになります。
日想観はここ四天王寺だけでなく日本全国ですることができます。自宅でももちろん可能なので、時間があるときに体験してみましょう。
静かな心で夕陽を見つめると、自分自身の内面と向き合う静かで深い体験ができます。
ゆかた
余暇プランナー
金融業界出身で今はライター中心にフリーランスで活動中。大阪在住だけど京都歴の方が長く、休日はだいたい京都にいます。海外30か国旅行してる旅好き。旅のスタイルはグルメ旅/スポーツ観戦旅/美術館めぐり/ひとり旅。スイーツを求めがちです。関西の情報中心にお届けします。