働き盛りの年代の男性に多い尿路結石症。結石ができる場所によっては激しい痛みを伴う場合があることも知られています。一度発症すると再発しやすいこともわかっており、予防に関する知識をつけておくことが大切です。今回は尿路結石の予防に役立つ食べ物の知識について、管理栄養士が解説します。
尿路結石とは?
尿路結石とは、尿が通る道(腎臓、尿管、膀胱、尿道など)に結石ができることです。日本では、腎臓か尿管に結石がある「上部尿路結石」が約96%を占めています。とくに尿管結石は、非常に激しい痛みを伴う場合があることも知られています。
結石の種類はさまざまですが、そのほとんどがカルシウム結石です。尿の中でカルシウムと、シュウ酸やリン酸が結合してしまうことで結石を作ってしまいます。
予防に効果的なのは「食事の改善」
尿路結石は女性に比べると男性に多く、30~50歳代に多いことがわかっています。生活習慣病や肥満との関連が報告されており、生活習慣、食習慣との関連も指摘されています。仕事が忙しいあまり、食事がおろそかになっている方は注意が必要です。
尿路結石を発症すると、5年以内に半数近くが再発することがわかっています。食事の改善はとても大切であり、再発予防に良好な効果が期待されています。
※参照:日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡学会/日本尿路結石症学会 尿路結石症診療ガイドライン2013年版
尿路結石の予防に役立つ食べ物の知識
尿路結石の予防には、結石を作ってしまいやすい食べ物をのとり方を工夫することと、結石を作りにくくする食べ物を摂取することが大切です。
また生活習慣病との関連も報告されているので、食生活が乱れている方は、バランスのよい食事を心がけることも必要です。
結石を作ってしまいやすい食べ物とは?
結石を作ってしまいやすい食べ物(成分)はいくつかありますが、過剰摂取を避けて食べ方を工夫していくことが大切です。具体的な食べ物の種類と食べ方のコツを解説します。
シュウ酸
食べ物に含まれるシュウ酸という成分は、カルシウムと結合して結石のもとになります。
シュウ酸が比較的多い食べ物として、
・ほうれん草
・たけのこ
・バナナ
・ピーナッツ
・アーモンド
・チョコレート
・ココア
・紅茶
・コーヒー
・お茶(玉露・抹茶)
などが知られています。
これらの食べ物は、大量に食べる習慣がある場合は控える必要がありますが、そうでない場合は工夫することでシュウ酸の量を減らせます。
具体的には、「茹でること」と後述する「カルシウムを含む食品と一緒にとること」です。
シュウ酸は水溶性のため茹でることで量を減らすことができます。
またカルシウム結石が多いことからカルシウムはあまり摂取しない方がよさそうですが、実は一緒にとることでシュウ酸の吸収を抑えることができ、結果的に結石ができにくくなります。もちろん過剰に摂取することは逆効果になりかねないので、積極的に摂取する程度にしておきましょう。
例えばほうれん草は、3分間茹でることで3~5割程度のシュウ酸を減らせることがわかっています。ほうれん草にはカリウムや鉄、ビタミンCなどの大切な栄養素が詰まった野菜でもあります。制限するのではなく、上手に工夫して食べましょう。
ほうれん草を食べる場合の工夫として、
・電子レンジで下茹でするのではなくたっぷりの湯で3分以上茹でる
・しらす干しや桜えび、豆腐や納豆などのカルシウムの含まれる食べ物と一緒に調理する(または一緒に食べる)
などを行うといいでしょう。
ほかにも、
・たけのこの場合…もともと茹でられているので、カルシウムを含む食べ物と一緒にとる
・バナナの場合…生で食べることが多いため、ヨーグルトや牛乳などのカルシウムを含む食べ物と一緒にとる
・飲み物の場合…ココア、紅茶、コーヒー、お茶(玉露・抹茶)は1日1~2杯程度にしておき、水やほかのお茶をとる
などの工夫ができます。
プリン体
食品に含まれるプリン体を過剰摂取することで尿酸値を上げてしまい、結石が作られる原因となります。
プリン体の多い食品として
・レバー
・モツ
・白子
などの動物性の内臓や、魚の干物などがあげられます。これらをよく食べる習慣のある方は摂取を控えましょう。
またアルコールや甘い食べ物・飲み物の摂取が尿酸値上昇と関わることも知られています。
プリン体と合わせて、アルコールや甘いもののとり過ぎにも気をつけましょう。
食塩
食塩の摂取量が多いと、尿中にカルシウムの排泄量が増えて結石を作る原因のひとつとなります。
外食やコンビニを利用することが多い方、ラーメンやうどんなどの麺を食べることが多い方は、とくに食塩の過剰摂取に注意が必要です。減塩メニューや減塩食品を利用したり、麺類は汁を残したりと工夫しましょう。
結石を作りにくくする食べ物とは?
結石を作りにくくする食べ物は、普段の食生活でも取り入れたいものばかりです。結石予防だけでなく、普段から意識して取り入れましょう。
カルシウム
カルシウムは、結石の原因のひとつとなるシュウ酸の吸収を減らすのに役立ちます。
日本では、結石の予防として1日600~800mgのカルシウム摂取が推奨されており、これは成人男女が1日に必要なカルシウムの量と一致します。日本人はカルシウム摂取量が不足気味(※)のため、積極的に摂取しましょう。
カルシウムの多い食品は、牛乳、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、しらす干し、桜えび、豆腐や厚揚げ、納豆などの大豆製品、小松菜や切り干し大根などがあげられます。
※参照:厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要,厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)
クエン酸
クエン酸は尿中でカルシウムとシュウ酸やリン酸が結合するのを抑えてくれます。オレンジやレモンなどのクエン酸を含む食べ物を摂取することで、結石の予防が期待されています。
ほかにもクエン酸は、グレープフルーツやみかん、パイナップルなどの酸っぱい果物に含まれます。ただし、果物の過剰摂取はカロリーのとり過ぎにもなるので、適量(1日200g程度)を目安にとるといいでしょう。
水分
水分が不足すると結石ができやすい状態となるため、水分をしっかりと摂取することが大切です。尿路結石症診療ガイドラインでは、水分摂取は尿路結石の予防の基本として最も効果的である、とされています。
具体的には、食事以外で1日2000mlほど水分をとることが勧められています。
水分とはいっても、もちろんアルコールやジュースはNGです。水やお茶などで十分な量の水分をとりましょう。
できてしまった結石は食べ物で溶かせる?
一部の結石は治療として薬で結石を溶かす方法が用いられることがありますが、残念ながら、食べ物で結石を溶かす方法は期待できません。
上記でお伝えした食べ物を工夫しながら摂取し、バランスのよい食事を心がけることが結石の予防には大切です。
偏った食生活は厳禁!バランスのよい食事を心がけよう
尿路結石だけでなくほかの生活習慣病にもいえることですが、やはり乱れた食生活は病気を招く原因のひとつとなってしまいます。結石の予防に役立つ食べ物と合わせて、毎日の食事を見直して、バランスのよい食事を心がけましょう。