子どもが大きくなると、大人が料理をしているところに次第に興味を持ち出して、「自分も料理をしてみたい」と言い出したりするもの。せっかくだから一緒に包丁の使い方も教えたいところですが、大人用の包丁は切れ味も鋭く、刃もとで指を切る危険性もあります。安全に、楽しく一緒に料理をするために、子ども用の包丁や使い方について解説します。
子どもが包丁に興味を持ち出した
子どもが料理に興味を持ってくれるのは、親としては成長が感じられて嬉しいですよね。年齢が上がってくるとおままごとではなく、本物の料理をパパやママとやりたがったり、キッチンや料理道具に興味を示したりすることも。そうした子どもの好奇心を伸ばしてやりたいのが親心。また、子どもと一緒に料理をすることは、食育や親子のコミュニケーションの観点からもとても良いことです。
ただ、刃物である包丁を持たせることは危険ではないかと心配が伴います。
「何歳から持たせて良いか」「どんな準備が必要か」など、いざとなると色々な疑問についてキッチン用品専門店を30年以上営む株式会社池商の池田義明さんに聞いてみました。
刃物を持たせる時期はいつがいい?
包丁を持たせていい年齢は、はっきりとした決まりがあるわけではありません。判断するポイントとしては、主に次の3つ。
- 大人の話をしっかりと聞いて理解し、指示に従うことができる
- 刃物が危険であることを理解できる
- 手指の発達が完成する3歳頃以降
決まった基準がない分、最も身近な大人が子どもの成長度合いをよく見て、包丁を使わせてもよいか判断してあげる必要があります。また、小学生低学年以上で1年以上料理を経験させたら大人用のペティナイフなどの小型の包丁を使わせて慣れさせるというのも考え方としては良いでしょう。もちろん刃先は鋭利ですし、アゴ(刃の一番後ろの部分)も尖っています。
賛否あるかもしれませんが、大人用の包丁を使って、誤って刃が自分の指に当たっても、子どもの握力と力では大きな怪我をすることはほとんどありません。「包丁は危険な道具なんだ、だから乱暴に扱ってはいけないんだ」と思わせるのも大事です。
とはいえ、やっぱり心配ですよね。そんな方は、まずは子ども用包丁を選んでみてはいかがでしょう?子ども用包丁の選び方を解説します。
子ども用の包丁の選び方
刃の違い
子ども用包丁は、子どもの成長段階によって刃の種類が異なるものが販売されています。
⒈丸刃
初級者向けの包丁です。お好み焼きなどに使うヘラのように刃が丸く仕上げられており、通常の包丁が押したり引いたりして切るのに対し、丸刃の包丁は刃を押し付けて切るようなイメージです。肉などを切ることは難しいものの、キュウリ、ニンジンなどある程度固さのある野菜は切ることができます。
刃が滑っても切れにくいため、最も怪我をしにくいのがこのタイプの包丁です。子どもの年齢が低い場合や、初めて包丁を持つ場合はこの丸刃の包丁から始めてみてもよいでしょう。
⒉ギザ刃
ギザ刃の包丁は細かいギザギザの刃が付いていて、食材への刃の入り方が違います。押すだけでは切れず引いて切るという作業が必要になり、丸刃よりも技術がいるかもしれません。
引くという作業が加わる事で、手を切る可能性も丸刃よりは上がってしまいますが、刃が細かくなっているため、もし怪我をしても普通の包丁よりは傷が浅くなります。また、食材の上で滑りにくいので、トマトなどツルツルしたものでも切りやすいです。
⒊本刃付け
大人用の包丁と同じ刃が付いた包丁です。子ども用包丁の場合、刃渡りや持ち手が小さく、子どもの手になじみやすいように作られています。切れ味は基本的に通常の包丁と同じなので不安に感じるかもしれませんが、切れ味が悪いと子どもが無理に力を入れてしまい、かえって危険なこともあります。
初級者用の包丁で練習して慣れてきた子どもには本刃付けの包丁を与えることも考えてよいでしょう。
刃先の違い
切っ先と刃もとが丸くなっている物を選びましょう。
子ども用包丁は、先端の切っ先と、あごと呼ばれる付け根の角が丸く仕上げられています。この二箇所が丸く、切れにくくしてあることでぐっと怪我をしにくくなります。大人が通常の包丁を使う場合は、切っ先とあごの部分も作業に使うことがありますが、子どもの場合そこまでの機能は必要ないので安全性が優先された作りになっているわけです。
素材の違い
子ども用包丁は、大人用と同じようにステンレスやセラミックの素材で作られたものが多いですが、プラスチック製のものも販売されています。ステンレスやセラミック製の子ども用包丁は、大人用に切れ味が近いつくりに。一方プラスチック製は、波型になった刃先を前後に動かすことで食材を切る仕組みで、触っただけでは切れにくいため、より怪我の心配が少ないつくりです。
切れるのは比較的柔らかい食材に限定されますが、重さも軽く扱いやすいので、3歳程度の子どもや初めての包丁デビューであれば、まずはプラスチック製のものを与えてみてもよいかもしれません。100円均一で売られている場合もあるので、値段的にも試しやすいですね。
ただしプラスチック製は刃が切れないので、豆腐を切るぐらいしか出来ません。肉や固い野菜などを切るのは期待しないようにしましょう。
持ち手、大きさはどんなものがいい?
子ども用包丁として販売されているものは、持ち手も子どもの手の大きさに合わせて作られています。もし実際に触れて選ぶことができる場合は、グリップの大きさや形状が子どもの手に馴染むものを選ぶのが理想的。
中には、手が前に滑ることを想定して刃元に接する部分のグリップがガードの形状になっているものもあります。本刃の包丁を選ぶ場合などは、こうした構造があるものにするとより安心です。
はじめての包丁、切り方をどう教える?
子ども用包丁が手に入ったら、早速子どもと一緒に練習してみましょう。どんな種類の包丁を選んでも、必ず大人が付いてしっかりと見守りましょう。
用意するもの
- 子ども用包丁
- まな板(大きめがおすすめ)
- まな板の滑り止め(濡れ布巾でもOK)
- 切りやすい食材
最初は豆腐などごく柔らかいもの。できるようになったらハムやキュウリといった切りやすいものを与えてみましょう。慣れてきたら加熱した人参などで、切り方の種類を増やしていくとよいでしょう。
- 子ども用の踏み台
調理台と子どもの背丈にあった踏み台を用意します。子どもが立って調理台に手をついた時、肘が軽く曲がるくらいの高さがベストです。
包丁の練習ステップ
1.包丁は危険・怪我をする可能性があること、使うときのルールなどを説明する
まず、包丁が切れるものであることや、使うときは必ず大人と一緒に使う、振り回さないなど、基本的な事柄やルールを教えます。子どもが十分理解し、大人の指示に従うことができるようなら次のステップに進みます。
⒉ 大人が切ってみせる
子どもに包丁を持たせる前に、大人が実際に切るところを見せましょう。包丁を前に軽く押す基本の切り方(押し切り)を、説明しながらやって見せます。切り方を使う包丁は大人用のものでもかまいませんが、子ども用包丁を使うと包丁の特徴が大人にもわかるのでおすすめです。
⒊ 正しい持ち方を教え、包丁を握らせる
包丁は、柄の真ん中を上から握り込むようにしっかりと持たせます。全ての指で握る持ち方でも、人差し指を刃の背に添える持ち方でもかまいませんが、子どもが小さい場合は指を揃えて握る方が持ちやすいでしょう。
⒋ 切り方を教える
食材を押さえる手を猫の手(軽くグーにした形)にし、包丁をすっと前に押すようにして切らせます。
丸刃、プラスチック刃などの場合は切れにくいこともあるので、その場合は上から押さえつけるように切らせてみましょう。押し付けて切る場合は大きな力が加わりますのでより注意しましょう。
おすすめの子ども用包丁は?
未就学児にお勧めの包丁
ヤクセル こども安全包丁
平刃の包丁に少しだけギザが付いた仕様の包丁です。押すだけでは切れず怪我をしにくい設計になっています。ちゃんと刃付けをしていないので、切るというよりは柔らかい食材をつぶすという感じでしょうか。豆腐やチーズなどを切る事ができ、初めての作業としての役割レベルです。グリップ部にガードが付いているのでより安心。切れ味はほとんどないので、固いものは切れません。
小学校低学年(6歳~10歳)
グーテ子供用包丁
包丁の側面に動物のイラストが描かれており、食材をおさえる側の手が動物のイラストのグーの手を自然と真似するようで、怪我をしにくいようです。ちゃんと刃付けをしてありそれなりに切れます。キュウリやニンジン・大根などの少し固めの食材でもよく切れます。
小学校高学年〜にお勧め(8歳~12歳)
プロセイバー ペティナイフ13㎝〜15㎝
個人差や経験値にもよりますが、料理経験1年以上ある小学年なら子ども用包丁では物足りなく感じるのではないでしょうか?大人用のペティナイフを持たせても良いかと思います。
(刃先が尖っているので注意するように伝えてください)
▶︎PRO-SABER プロセイバー オールステンレス ペティナイフ 15cm
大きくなれば誰しも包丁を使って料理をする機会があるでしょう。子どもの成長を喜びつつも、安全に使い方をマスターさせるなら子ども用包丁を選んでみるのもおすすめですよ。
話を聞いた人:株式会社池商 池田義明さん
池田さんが代表を務める株式会社池商は1983年に創業したキッチン用品専門店。約3200名の料理研究家会員とネットワークを持ち、キッチン用品セレクトや料理教室とコンタクトをとりながら調理道具の研究を行っている。キッチン用品メーカーとの新商品開発なども行っており、多くの人にキッチン用品の適切なアドバイスを行っている。