定年退職後に必要となるだけでなく、子どもの就学や自分の病気など、いざというときに貯めておくと安心の貯金。でも、貯めようと思ってはいるけど、なぜかなかなか貯まらないという方もいるのではないでしょうか?今は「貯金ゼロ」状態だけど、できれば早々に脱出したい!そんな方に向けて、どうすればお金を貯めていけるのか、ファイナンシャルプランナーの稲村さんに教えてもらいます。
※この記事では調査データの結果以外では単純にお金を貯める「貯金」という表現を、調査データを説明する箇所ではそのほかの金融資産も含めて貯めている「貯蓄」という表現を使っています。
実は結構いる?貯金なし世帯
「貯金ゼロ」というのは恥ずかしくてまわりに言えないという人も多いと思いますが、実は金融広報中央委員会の調査によると、「全世帯で3割以上が貯蓄なし」(※)。3人に1人ほどが貯金がない状態ということですね。
※参考:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2019年)
年代別「貯金なし」の割合
年代別にみると20代は約半数、老後目前の60代では約3割が「金融資産非保有」、つまり貯蓄がないとデータで出ています。
・20歳代…45.2%
・30歳代…36.5%
・40歳代…40.5%
・50歳代…37.2%
・60歳代…29.8%
年収別「平均貯蓄額」は?
貯蓄をしていない人が意外と多いことがわかりましたが、平均の貯蓄額はどうなっているのでしょうか?
二人以上世帯と単身世帯(一人暮らし)に分けて、年収別の平均・中央値の貯蓄額をみていきましょう(※)。
※参考:金融広報中央委員会「金融資産と負債」
<二人以上世帯>
<単身世帯>
二人以上世帯において「収入はない」と回答した世帯の平均・中央貯蓄額が、年収300万円未満載世帯より多いのが気になりますが、これは定年後の世代が「収入はない」世帯に含まれているため。退職金などで貯蓄額が増えることなどが理由と思われます。
なお「平均」は単純に合計金額を人数で割り戻したものですが、「中央値」は数字を小さい順から並べたときの真ん中にくる値のことで、実態に近い数字ともいわれています。
平均値だと極端に少ない人や多い人の数字も含めた値になるため、貯金の目標を立てる際は、まずは中央値を参考にするのがおすすめです。
「貯蓄貯なしが3割以上いるなら自分も大丈夫」と思われたかもしれませんが、こうやって平均・中央値の貯蓄額をみると、貯めている人はきちんと貯めていることがわかりますね。
では、貯金なし組から脱出するためにどのようにすればいいのでしょうか?
「貯金なし」な人に共通していること
まず貯金のできない人はどのようなタイプなのでしょうか?5つの項目をチェックしてみましょう。
□余ったら貯めればいいやと貯金を後回しにする
□将来に必要な費用を具体的にイメージできていない
□ご褒美と称した買い物・外食などが多めである
□通帳にいくら入っているかわからない
□クレジットカードや電子マネーなどで月にいくら使っているかを把握できていない
ひとつでもチェックがあれば「貯金なし」組に近いタイプです。目的をもって貯めようと意識しないとお金は貯まりません。
「貯金なし」脱出ステップ
ここからは、貯金が全くない人が今後貯金をしていくための3ステップをお伝えしましょう。
ステップ①貯める目標を決める
なんとなく貯めたいというぼんやりした想いでは、貯めるモチベーションが保てません。「●年後に家を買うので〇円」など、まずは、貯める目標を決めましょう。
なおいきなり「1年後に500万円」など壮大な目標にすると、収入によっては挫折する確率が高くなるので、張り切りすぎは要注意です。また「30年後に2,000万円」のようにざっくり決めた目標も、現時点から遠すぎてしまい挫折しがちです。
目標金額をかかる期間で割り戻して、「1カ月あたりいくら」など、現実的に意識できる目標金額にせっていしておきましょう。
ステップ②収入と支出を把握する
月々の貯める金額を決めたら「すぐ貯めよう」となるかもしれませんが、そもそも毎月の収支が赤字なら貯金を続けることができません。収入と支出を把握して、目標の貯金が可能かどうかを検証しましょう。
収入は給料明細を見ればわかります。一方で1カ月の支出は、キャッシュレスが進んでいるため把握するのが難しくなってきています。
キャッシュレスでの支払いを利用している場合は、原始的な方法ですが、現金、クレジットカード、電子マネーなど、支払い方法を問わず使った金額を手帳やカレンダーに毎日記入してみましょう。これで日々使う生活費が把握できます。
また毎月固定費として支払っている家賃・住宅ローン・水道光熱費も、1カ月のおおよその金額を書きだしてみましょう。
この2つの合計額が1カ月の生活費です。収入よりも1カ月の生活費が多ければそもそも貯金はできないので、支出を見直して貯金できるやりくりに改善しましょう。
ステップ③貯まる仕組みを作る
貯められる家計にできたら、貯金スタートです。ここで一つ注意。お金が余ったら貯めていく流れにすると使いすぎてしまった月は貯めることができません。
これを防ぐために、銀行から自動で引き落としになる「オート定期預金」や勤務先で給与天引きされる「財形貯蓄」など、自動的に引き落とされて「先取り貯金」できる仕組みを設定しましょう。
先取り貯金をすると、必ず貯金でき、残った資金で家計のやりくりをするので支出をセーブすることもできます。
「貯まる家計」へ改善して、貯金なしから脱出!
貯金する習慣が身につくと、どんどん「貯まりやすい家計体質」になっていきます。貯金がない人の割合をみてホッとしたままだと、いつまでも「貯金なし」組から脱出できません。
1. 目標を立てる
2. 収支を把握して貯められる家計に整える
3. 先取りで自動的に貯まる仕組みをつくる
この3ステップで、今日から「貯金ある」組の仲間入りを果たしましょう。