およそ3年間のコロナ禍で、かつてない危機に直面した飲食店。コロナ終息後の現在、飲食店は集客のためにさまざまな取り組みを行っているが、実際にはコロナ前と比べてコロナ後に売り上げが伸びた飲食店と減った飲食店があり、明暗が分かれているようだ。では、コロナ後に売り上げアップに成功した飲食店では、どんな取り組みが功を奏したのだろうか。また、売り上げが減った飲食店の経営者にはどんな後悔があるのだろうか。
飲食店を自己負担なく開業できる『トラナビ』(https://trust-navi.com)を運営する株式会社ムジャキフーズが、コロナ前後で売り上げが伸びた飲食店経営者とコロナ前後で売り上げが減った飲食店経営者の双方に対し「コロナ前後で売り上げが伸びた飲食店と減った飲食店の違い」について調査した。
コロナ禍における飲食店の経営状態
はじめにコロナ前後で売り上げが伸びた飲食店経営者とコロナ前後で売り上げが減った飲食店経営者の双方に、コロナ禍の経営状態を聞いた。
「コロナ禍の経営状態はどのような状態でしたか?」と質問したところ、『とても苦しかった(41.7%)』と回答した経営者が最も多く、次いで『やや苦しかった(39.8%)』『あまり苦しくなかった(13.3%)』『苦しくなかった(5.2%)』と続き、飲食店経営者の約8割がコロナ禍の飲食店経営は苦しかったと回答。コロナが飲食店に与えた打撃の大きさがうかがえる。
続いて、「コロナ禍での諸経費はどの程度負担に感じていましたか?」と質問したところ、『とても負担に感じていた(42.2%)』と回答した経営者が最も多く、次いで『やや負担に感じていた(40.4%)』『あまり負担に感じていなかった(12.7%)』『負担に感じていなかった(4.7%)』と続き、約8割の飲食店経営者が諸経費の負担が大きかったと回答している。中でも特に負担を感じた諸経費は何だったのだろうか。
「特に負担に感じた諸経費は何ですか?(上位3項目回答)※最大3つまで選択」と質問したところ、『人件費(66.2%)』と回答した経営者が最も多く、次いで『家賃(57.5%)』『食材費(43.4%)』『水道光熱費(20.4%)』『販促(広告・宣伝)費(11.5%)』『消耗品費(7.1%)』と続いた。やはり人件費や家賃といった大きくかかる固定費の負担が大きかったようだ。
コロナ後に売り上げはどのくらい伸びた?その要因は?
コロナ前と比べてコロナ後に売り上げが伸びた飲食店の経営者に「コロナ前と比べて、コロナ後は売り上げがどれくらい伸びましたか?」と質問したところ、『やや増加した(増加率10%〜50%未満)(56.3%)』と回答した経営者が最も多く、次いで『大幅に増加した(増加率50%以上)(33.7%)』『少し増加した(増加率10%未満)(10.0%)』と続いた。およそ6割の飲食店で10%~50%売上が増加しており、さらに約3割の飲食店は売り上げが大幅に増加したと回答している。では、具体的にはどのような取り組みが売り上げの伸びにつながったのだろうか。
「売り上げを伸ばすために始めた取り組みのうち、最も売り上げの伸びにつながったと思う取り組みは何ですか?」と質問したところ、『デリバリーサービスの拡充(27.0%)』と回答した経営者が最も多く、次いで『メニューの見直しや新商品の導入(26.4%)』『オンライン注文システムの導入・改善(19.2%)』『顧客への特別プロモーションや割引(10.2%)』『飲食店経営の見直し(6.6%)』『ソーシャルメディア広告の活用(5.2%)』と続いた。巣ごもり消費に対応したデリバリーサービス拡充が功を奏した飲食店が多いようだ。また、メニューを見直したり新商品を導入したりした結果、良い結果に結びついた飲食店も多いことがわかった。この他にも、売り上げにつながったと思われる具体的な要因を聞いたところ、次のような声があった。
■売り上げの伸びにつながったと思う要因とは?
・より簡単に注文できるような工夫をした(40代/女性/兵庫県)
・全部のメニュー対応でテイクアウト可能(40代/女性/大阪府)
・提供時間の短いメニューを増やす(60代/男性/大阪府)
コロナ後に売り上げが下がった経営者はどんなことで後悔している?
続いて、コロナ前と比べて売り上げが減少した飲食店の経営者に、どのくらい売り上げが減ったのか聞いた。「コロナ前と比べて、コロナ後は売り上げがどれくらい減りましたか?」と質問したところ、『やや減少した(減少率10%〜50%未満)(48.1%)』『大幅に減少した(減少率50%以上)(37.7%)』『少し減少した(減少率10%未満)(14.2%)』と続いた。最も多かったのは10%~50%程度売上が減少したという回答だったが、およそ4割ほどは50%以上と大きく減少している様子が窺える。
「売り上げを伸ばすために始めたものの、上手くいかなかったと思う取り組みは何ですか?(複数回答可)」という質問に対しては、『デリバリーサービスの拡充(40.8%)』と回答した経営者が最も多く、次いで『メニューの見直しや新商品の導入(40.4%)』『オンライン注文システムの改善(27.0%)』『飲食店経営の見直し(21.1%)』『顧客への特別プロモーションや割引(19.7%)』『ソーシャルメディア広告の活用(16.9%)』と続き、ここでもデリバリーサービスの拡充が最多で、次いでメニューの見直しや新商品の導入という結果が出た。デリバリーサービス拡充や新メニューを売り上げにつなげられた飲食店と、逆に失敗した飲食店で明暗が分かれる結果となったようだ。
■売り上げの減少に伴い後悔していることは?
・普段から余裕を持って資金繰りをしていれば少しは耐えられたのではと思う(40代/男性/岐阜県)
・経費を削れるところは、無駄なく削っておけばよかった(50代/男性/神奈川県)
・メニュー開発を早い時期から改善し、顧客のニーズに合ったラインナップにしておくべきだった(50代/女性/長崎県)
安定した経営や売り上げに必要なものとは?
最後に、再度双方に「安定した経営や売り上げを伸ばしていくために必要だと思うことを教えて下さい(複数回答可)」と質問したところ、『運転資金に余裕を持った状態での経営(45.9%)』と回答した経営者が最も多く、次いで『経費・固定費の削減(42.3%)』『飲食店経営における知識と実践経験(37.0%)』『マーケティング戦略の立案・実行力(28.9%)』『安定した人材採用(21.8%)』『食材価格の安定(仕入れ業者との信頼関係)(16.7%)』と続いた。
コロナ禍において諸経費で苦労した経営者は多く、資金に余裕を持った経営の大切さを痛感した方は多いかもしれない。やはり、経費削減やマーケティング戦略など、経営者として先を見越した飲食店運営が重要なのではないだろうか。
調査概要:「コロナ前後で売り上げが伸びた飲食店と減った飲食店の違い」に関する調査
【調査期間】2023年10月3日(火)〜2023年10月9日(月)
【調査方法】リンクアンドパートナーズが提供する調査PR「RRP」によるインターネット調査
【調査人数】1,023人
【調査対象】調査回答時にコロナ前後で売り上げが伸びた/減った飲食店経営者であると回答したモニター
【モニター提供元】ゼネラルリサーチ
今回の調査結果から、多くの飲食店においてコロナ禍の経営状態は悪かったことが明らかになった。特に諸経費の捻出については、非常に負担を感じた経営者が多いようだ。だが、コロナ禍には同じような経営状態であったにもかかわらず、デリバリーサービス拡充や新メニューの開発によって売り上げを伸ばした飲食店もあれば、一方で同じ取り組みをしても上手く売り上げにつながらなかった飲食店があることもわかった。
飲食店経営において売り上げを伸ばすための戦略等を仕掛けていくことも重要だが、運転資金に余裕をもてるような経営や経費を削減するなどの守りの部分がしっかりしていれば、コロナ禍のような不測の事態への対応や、資金的な余裕から取り組みも上手くいく確率も上がるのではないだろうか。