日本でも広まりを見せつつあるりんごのお酒「サイダー」。りんごの芳醇な香りとフルーティーさが飲みやすく、注目を浴びています。
先日、渋谷に「サイダー」の名前を冠するお店がオープンしたと耳にしました。お店の名前は「CIDER SHACK(サイダーシャック)」。サイダーだけでなくクラフトビールも取り扱っているとのことで、さっそく行ってきました!
左から、土肥泰士さん、ちゃぁりぃさん
クラフトビールとサイダーとたこ焼き。
ユニークな組み合わせに驚きながらも、ふたりと話しているうちに、ただならぬこだわりを感じることに。ただ飲むだけじゃない体験ができるお店「CIDER SHACK」をご紹介します!
たこ焼きの提灯が掲げられたお店
CIDER SHACKは、2020年6月1日にオープンしました。渋谷駅から恵比寿方面に向かって徒歩約8分、並木橋交差点のそばにあります。明治通り沿いに歩くと、木樽をモチーフにしたロゴが描かれた白い看板と赤いたこやきの提灯が見えてきます。
こじんまりとした店内は、木材が多く使われていて落ち着く雰囲気。入り口のそばに2人用のソファー席が1つ、その前には大きな木樽がテーブル代わりに置かれています。店内奥に向かって伸びるカウンター席が8席あり、一人でも気軽に過ごせそうです。もちろんお友達と仲良く並んで座るのもOK。
入り口そばの冷蔵庫には、約40種類の瓶入りのサイダーやシードルとベルギービールが並んでいます。どうしてベルギービールなのかを尋ねると、「ベルギービールが好きなんですよ(笑)」との答えが。自分が納得したものしか提供しないというこだわりの片鱗が垣間見えたところで、提供するサイダーやクラフトビールについてさらに深掘りして聞いてみました!
造り手の代弁者であるために
CIDER SHACKでは「自分達で造り手の代弁ができること」にこだわり、主に国産クラフトビールとイギリスから輸入しているサイダーや国産のサイダーを提供しています。クラフトビールについては、今後は海外のビールを扱うかもとのこと。
ビールやサイダーの注ぎ口(タップ)は11タップあり、クラフトビールとサイダーが半々くらいでつながっています。カウンター中央にはハンドポンプ(ガスで押し出さないタイプの注ぎ口)も2基ありますが、現時点ではまだ使っていないそう。タイミングを見ながら、ハンドポンプ提供のリアルエールやサイダーも検討予定とのこと。
クラフトビールのビアスタイル(ビールの種類)は、ビター、ピルスナー、ペールエールなどヨーロッパ系を中心に、バランスのよいラインナップを考えているそう。提供サイズは、グラス(税込800円)、パイント(税込1,100円)の2サイズ(銘柄により追加料金あり)。
常設で提供しているのは、クラフトビールでは、大山Gブルワリー(鳥取)、TDM1874 ブルワリー(神奈川)、松本ブルワリー(長野)の3社。サイダーでは、Ross On Wye(ロスオンワイ、イギリス)、Son of the Smith(サノバスミス、長野)の2社。
常設している理由は、ちゃぁりぃさんが働いたことがある大山GブルワリーとTDM1874 ブルワリー、イギリスで修行したRoss On Wyeなど、縁があるだけでなく、考え方や味を信頼しているから。そして、松本ブルワリーやSon of the Smithは、コンセプトや考え方に共感したから。
いずれの醸造所も、どのようなコンセプトで造っているのか、どのように飲んでもらいたいのか等、明確なビジョンを持って取り組んでいるところばかりで、自分達がしっかりとビジョンの解釈や共感ができていないビールやサイダーは取り扱わないと決めています。
そこまでこだわるのは、「ちゃんと情熱やこだわりを持って造っているビールやサイダーを紹介したい。」「造っている人達の言葉や想いをお客さんに伝え提供したい。」「日本でサイダーとシードルが区別されずに提供されてしまっている現状を変えたい。自分たちが体験したことや学んだことを伝えて、「サイダー」のことを知ってもらいたい。」との想いから。
サイダーとシードルは違うんですよ!
「サイダーとは、りんごで造った発泡性のお酒のこと。シードルとも呼ばれます。」という説明を耳にしたことも多いのではないでしょうか?私もそのように思っていましたが、ちゃぁりぃさんと土肥さんによると、その説明は正しくないのだとか。
国、造り方(製法)、概念、りんご、考え方、文化、飲み方までも違うそう!
簡単にお伝えすると、サイダー(cider)は、イギリスの伝統的な製法(野生酵母による発酵)や文化にのっとって造られたもの。一方、シードル(cidre)はフランス発祥で、製法はさまざまあり、もともとはワインのセカンドとして始まったもの。イギリスやフランス以外にも、さまざまな国でりんごの醸造酒は造られていて、それぞれの文化があります。
詳しくは、ぜひお店できいてください。サイダーについて熱量高く、おもしろいお話をしてくれますよ。
Ross On Wye『Ball’s Bittersweet Cider』(500mlボトル、税込1,300円)
お店を出すことを決めたのはイギリスで!
イギリス滞在中の写真(画像提供:CIDER SHACK)
ちゃぁりいさんは、イベントや仕事でサイダーに関わることが増えるにつれ、サイダーのことをちゃんと知りたいと考え、修行先も宿も決めずに航空券と車だけ購入して、イギリスへ渡ったという超行動派。
まずはロンドンでサイダー調査を行いましたが、都会では野生酵母でつくられる伝統的なサイダー(リアルサイダー)には、なかなか出会えなかったそう。ならば伝統的なサイダーを造っている現場に向かおうと、名産地のひとつであるヘレフォードシャーへ。ヘレフォードのパブで出会った地元のおじさん達と話し、サイダーミュージアムのことを知ります。
そのミュージアムでは歴史や造り方の解説だけでなく、ヘレフォードシャーのサイダーが何十種類も販売されていたそう。「数が多すぎて何を選べばいいかわからないな。とにかくサイダーメーカーに行きたい!」と考え、ヘレフォードシャーのサイダーメーカーの案内地図の中から、営業時間とフィーリングで一軒のサイダーメーカーを選び向かうことに。そのサイダーメーカーさんとの出会いから、修行先となる「Ross On Wye」にご縁が繋がり、半年間を過ごしました。
トイレにはイギリスでの思い出の一部がぎっしりと貼られています。ぜひサイダー片手に、ちゃぁりぃさんの体験談もきいてみてくださいね。
一方、土肥さんはクラフトビールにはまり、日本国内やイギリスやベルギーなど海外のブルワリーとビアバーを巡り、ビールの伝道師として活動を続けていた人で、静かな熱意を持つ理論派。日本ビール検定(通称びあ検)1級を所持しています。開業前は、会社員をしながら、埼玉・戸田にある「Craft beer &Bistro Dining O’VAL」で修行していました。
店名の由来となった小屋(画像提供:CIDER SHACK)
サイダーとビールにこだわった“たこ焼き屋さん”とは?
ずっと気になっていたのは、表の「たこ焼き」と書かれた赤ちょうちん。どうしてたこ焼きなんでしょう?リアルサイダーを気軽に楽しんでもらいたい。
肩肘はらずCIDER SHACKで過ごしてもらいたい。
そんなお供として、たこ焼きはピッタリ!ということで、たこ焼きを提供しているそう。開業すると決めたときから構想に入っていたのだとか。
ビールとたこ焼きのペアリングは、言わずもがなですよね。そして、サイダーとの相性というと、だしの風味はワイルドイースト(野生酵母)とマッチし、甘酸っぱいソースはりんごの風味とマッチするので、こちらも最高なんだそう!
たこ焼きは、スタンダード(6個)が600円、3種類の味が選べる700円、18個だとちょっとお得な1,500円(いずれも税込み)です。お試しあれ。
今回は、大山Gビールの『ピルスナー(パイント、税込1,100円)』と『たこ焼き(6個、えびごま油、わさび醤油、めんたいマヨ)』をオーダーしました。
たこ焼きはふわふわで、1個が大きく食べごたえがあります。だしが効いてるので、そのままでもおいしいくいただけます。熱々のたこ焼きをフーフーしながら口にいれ、そこにピルスナーを一口。とても華やかな香りが鼻に抜け、心地よい炭酸と控えめな苦みでするすると飲めます。おかわりしたくなる組み合わせです。
続いては、Son of the Smithの『PICKERS’ DELIGHT(グラス、税込1,200円)』をオーダー。Son of the Smith(サノバスミス、長野県大町市)は、2人のリンゴ農家のジョイント&ジプシーサイダリー(サイダーを造る醸造所)として始まり、2020年4月には最近自社工場での操業を開始したそう。
「PICKERS’ DELIGHT」は、りんごはシナノスイート、浅間クチーナ、フジ、土着固有品種を使い、ラガー酵母で発酵させ、モザイクとネルソンソーヴィンでドライホップをおこなったサイダーです。
にごりのあるきれいな黄色。グラスに口を近づけると、フレッシュなりんごの香りで、思い切り吸い込みたくなります。口に含むと、少し酸味があり、りんごの蜜のような甘さも感じます。微炭酸で甘すぎることはなく、さわやかにゴクゴク飲める一杯。個人的には、たこ焼きのめんたいマヨ味との相性が抜群でした!
ふたりと話すことが一番のおつまみに
理論派の土肥さん、超行動派のちゃぁりいさんのふたりが切り盛りするCIDER SHACK。
オープンしたばかりですが、サイダー好きの人やクラフトビール好きの人だけでなく、近所の人も足を運ぶお店です。ひとりでも、グループでも、気軽に立ち寄ることができます。
ドリンクメニューには説明が書いてありません。遠慮なく、ふたりに色々ときいてください。熱意を込めて教えてくれますので。ふたりと話しながらビールやサイダーを飲んでいると、時間が経つのが早いかも。
CIDER SHACK(サイダーシャック)
〇住所:東京都渋谷区東1丁目27−9 奥山ビル 1階
〇TEL:03-6450-5680
〇営業時間
【月~金】17:00~24:00(L.O. 23:30)
【土日祝】15:00~24:00(L.O. 23:30)
〇定休日:不定休
※現在、東京都や国の要請等に応じて営業しております。営業時間や定休日は、来店前にSNSで確認してください。(記事公開時点)
〇座席数:10席
〇支払い形式:キャッシュオン
〇喫煙・禁煙:禁煙
〇お子様連れ:子供可、ベビーカー入店可
〇Facebook:CIDER SHACK
〇Instagram:cider.shack