
<第38回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原音楽出版社協賛)>
第38回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞が12月28日に発表され、実写日本映画の興行収入(興収)記録を22年ぶりに塗り替えた「国宝」が作品賞、李相日監督(51)の監督賞、吉沢亮(31)の主演男優賞はじめ、史上最多の6冠に輝いた。
助演女優賞は「国宝」はじめ、多くの話題作に出演した瀧内公美(36)が初受賞した。
瀧内は「うまくなりたい一心で可能な限り出演させていただきました」と多忙だった1年を振り返った。主演級の立ち位置だった「敵」(吉田大八監督)や「レイブンズ」(マーク・ギル監督)から、対極の母親像を演じ分けた「ふつうの子ども」(呉美保監督)と「ゆきてかへらぬ」(根岸吉太郎監督)。そして今年を代表する2大作「国宝」と「宝島」(大友啓史監督)の両方にだだ1人出演して強烈な印象を残した。
-5作品が対象となりました
瀧内 いただいた役はワキでも、自分の中では常に主役なわけです。だから4番バッターのつもりで打つぞという気持ちで立ってきました。あくまで主役をじゃましない、気持ちのいい形で。難しいですけど、いつもそこを目指しています。「敵」は吉田大八監督がご自分で「やりたい」と思われた作品だそうで、そこに呼ばれたことがまずうれしかったです。(主演の)長塚京三さんは対峙(たいじ)した瞬間からもうその役にしか見えなかったですね。それはもう演出とかでは難しい領域ですね。
-瀧内さんが登場すると、とたんになまめかしい空気になりました
瀧内 そう思われたらうれしいですね。吉田監督からの演出でもありましたし、意識してやりました。
-「ゆきてかへらぬ」は
瀧内 ハードな役でしたけど、どんな難シーンでも淡々と進められる根岸吉太郎監督の姿がまず感動的でしたし、湖でのロケでしたけど、その空気をすべて切り取る感じの撮影でした。
-「レイブンズ」は
瀧内 憧れの浅野忠信さんの相手役でずっとご一緒できました。長い時間頑張っていれば、こんなご褒美もいただけると(笑い)。マーク(・ギル監督)が明るい人で、助監督の方もしっかりしていて細かい日本人的な機微まで伝えてくださり、楽しい現場でした。
-「国宝」は
瀧内 撮影が1日でした。後半だったので、座組は出来上がっていて、もの作りに真摯(しんし)な空気を感じました。どれだけギアを上げなきゃいけないかは分かっていたつもりですが、李(相日監督)さんは、私がその空気に慣れるまで、何度もリハーサルを繰り返してちゃんと待ってくれました。
-役作りの環境としては「宝島」は対照的でしたね。
瀧内 沖縄に行かせていただいて、そこでの撮影だったので、沖縄の人たちがエキストラも含めて非常に協力的でした。当時のことを知ってるおばあたちだったりが、いろんな話をしてくれたり。Aサインバー(米軍向けの飲食店)の女性が私の役でしたが、そこで実際に働いていた方のお話も聞けました。それはそれは参考になりましたね。
-「ふつうの子ども」は
瀧内 個人的には一番好きです(笑い)。(監督の)呉美保さんに出会えたのは私の財産です。
-これだけ題材に幅があると演じ分けるのもたいへんですね
瀧内 原作があれば、まず読む。脚本では原作から何を抽出しているかを読み取る。ワキなので何を主軸に与えていかなくてはいけないかを探って、その上で自分は何を伝えたらいいかを考える。脚本を読んでいると、イメージが湧いてくるので、こういうキャラクターで行こうかなあ、と。
-現場では
瀧内 脚本は仕上がっているものばかりなので、監督が物語を紡ぎたい方なのか、絵(映像)で見せようとしているのか、監督の過去作もなるべく全部見ておくので、何となく想像ができます。あとはスタッフさんと話してカット数を聞いたりしながら、監督のクセを探っておきますね。
-作品選択は
瀧内 来た順です(笑い)。やりたくないなと思うことはないですね。うまくなりたいんです。うまくなるためには数をこなさなきゃならない。だから、スケジュールが合う限りは。
-25年は、NHK連続テレビ小説「あんぱん」など、ドラマも含めて大車輪でした。複数の作品の撮影が重なることもあったと思います
瀧内 スタッフさんが変わり、ヘアメークや衣装で作り上げていただけるので、確かに最初はフワッとした感じはあるのですが、そんなに無理なく、その作品に入っていける気がします。やっぱり演じることが好きなので楽しい気持ちの方が強いです。
-そもそも演じることってどこが楽しいのですか
瀧内 その役だから言えることってあるじゃないですか。みんな心の中にひた隠しにして日常を生きている。でも、劇中の役にはそれを言わなきゃいけない瞬間があって、言っちゃいけないことを言う。それがおかしみになったり。それが面白いんです。
-お話を聞いているとNGなんて出さない感じがします
瀧内 いや、出しますよ。例えば「シバのおきて」というドラマで犬がうますぎて(笑い)。こちらに走ってくる姿があまりに素晴らしすぎて、やっぱり演技は動きが大切だなあ、と見とれてしまったんです。それで、すっかり自分のセリフを忘れてしまいました。
-デビューのいきさつは
瀧内 母親が映画が大好きで、よく映画館に連れてってくれたんです。中学生の頃から憧れを持ったんですね。メリル・ストリープとアン・ハサウェイの「プラダを着た悪魔」とか、カッコイイなと思ってました。大学には教員免許を取るつもりで通っていたんですけど、実習に通う途中の道で映画撮影をしていて、とっても楽しそうに見えてエキストラに参加したんです。そうしたら、それが本当にあまりに楽しかったものですから。大学では4年間勉強したんですけど、本屋さんでデビュー雑誌を買って、その最初のページにあった会社に応募してこの道に入りました。
-デビューから13年。苦しい時期はありましたか
瀧内 デビュー間もないころはオーディションに落ち続けて、仕事がないことが、表現する機会がないことがつらかったですね。
-今は対照的にお忙しいですけど、息抜きの時間は
瀧内 やっぱり映画を見ることですね(笑い)。やりたいことをお仕事にすると、それがないときは本当に辛いのだと、改めて思います。【聞き手・相原斎】
◆瀧内公美(たきうち・くみ)1989年(平元)富山県生まれ。14年「グレイトフルデッド」で映画初主演。19年「火口のふたり」でキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞。21年「由宇子の天秤」で日本映画批評家大賞主演女優賞となった。昨年のNHK大河ドラマ「光る君へ」では源明子役を好演。今年のNHK連続テレビ小説「あんぱん」では師範学校の熱血教師役で存在感を示した。
