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坂本龍一さん監督楽団演奏会に生前、楽曲共同制作したウクライナ人バイオリニスト出演


2025年の『東北ユースオーケストラ演奏会』が東京で開催された。このオーケストラは坂本龍一が東日本大震災の復興支援のために設立したもので、今回は彼をテーマにした特別な公演が行われた。バイオリニストのイリア・ボンダレンコが坂本龍一と共作した「Piece for lllia」を演奏。この曲はウクライナ紛争の被害者支援として制作されており、大きな感動を呼んだ。朗読で参加した吉永小百合も、坂本への追悼と平和へのメッセージを強調した。イベントでは音楽の力が平和と共感を生むことを改めて示された。

「坂本龍一の芸術世界『東北ユースオーケストラ演奏会2025』」でバイオリンを演奏するイリア・ボンダレンコ

23年3月28日に71歳で亡くなった音楽家の坂本龍一さんが、東日本大震災で被災した東北の復興支援を目的に13年に立ち上げ、音楽監督を務めた「東北ユースオーケストラ」が21日、東京・サントリーホールで演奏会を開いた。

8回目の開催となった「東北ユースオーケストラ演奏会」は、今回「坂本龍一の芸術世界『東北ユースオーケストラ演奏会2025』」と題した。演奏会には、坂本さんと生前、親交があったウクライナのバイオリニスト、イリア・ボンダレンコ(23)が来日し、坂本さんと共同制作した「Piece for lllia」を演奏した。

同曲は、22年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、被害を受けた子供や家族の人道支援のため、寄付を募ったボンダレンコの活動を知った坂本さんが、SNSで連絡し、やりとりしながら制作。ボンダレンコが、ウクライナの防空壕(ごう)から演奏した映像をYouTubeで配信し、全世界で大きな反響を呼んだ。

坂本さんは、22年3月26日に同所で開催した東北ユースオーケストラ演奏会で、コロナ禍で中止された20年公演のために書き下ろした「いま時間が傾いて」の演奏後、ロシアのウクライナ侵攻について言及した。同曲が「鎮魂の音楽ですけども」と説明した上で「聴くと3・11とともに、どうしてもウクライナのことを思い浮かべちゃう。もちろん、自然災害と戦争とは違うものだけれど、鎮魂という意味では共通しているところがある」と続けた。さらに「失ったものに対する懐かしさ、残念な気持ち、郷愁、鎮魂は、音楽を作る人間の心の根っこにある気が、ずっとしている」と、反戦と平和への思いを語っていた。

ボンダレンコは「Piece for lllia」について「自分にとっても、ウクライナの人にとっても、意味があるメロディで、旋律の1つ、1つに意味がある」と評した。その上で「坂本さんから(『Piece for lllia』を)いただいた時、悲しみと同時に心の内側からの温かさを感じた」と感謝。東北ユースオーケストラ演奏会で演奏した思いを聞かれると「このような大きなステージで、すばらしいオーケストラと共演できるのはすばらしい。演奏することで、坂本さんが精神的な先生になっている気がした」と語った。

坂本さんと海外で朗読を行うなど親交が深く、16年から朗読で参加する吉永小百合(80)が、8回目の朗読を行った。終演後、日刊スポーツなどの取材に応じた吉永は、ボンダレンコとの共演について「今日の曲は素晴らしかった。聴いていて胸がいっぱいになりましたし、坂本さんも喜んでいると思う」と笑顔で振り返った。ウクライナの現状に関し直接、聞くことはしていないというが「音楽は、とても強いもの。(ボンダレンコが)来てくださったことで、とても伝わっていると思う。ウクライナをはじめ、いろいろなところで、つらい思いをしている人々に対して、できるだけの温かい気持ちを持っていくことが、とても大事だと思っています」と訴えた。

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