近年、担い手不足が深刻な建築・建設業界において、若き人材確保は急務となっています。業界の課題認知や興味関心を惹くため、一建設(はじめけんせつ)株式会社が2023年7月12日(水)に兵庫県立兵庫工業高等学校の建築科の高校生を対象に建築現場見学会と住宅設計体験会を開催しました。
今回は、その見学会と体験会の様子をレポートします。
■建築現場見学会と住宅設計体験会を開催した背景
一建設は、年間46,000戸以上の住宅を供給する飯田グループホールディングスの中核企業です。このたび、兵庫県立兵庫工業高等学校の建築科2学年の生徒35名を対象に「建築現場見学会と住宅設計体験会」を開催しました。
実施の目的は、担い手不足の建築・建設業界への興味をもつきっかけ作りにあります。国土交通省によると、建設業の就業者数は令和3年平均で485万人。ピーク時の平成9年平均から約29%減(※)となっています。
こうした背景から、同社は本見学会や体験会を通じて、将来の建築・建設業界を担う建築科の高校生に、実際の建築現場を見て・体感してもらう。さらに住宅設計を体験してもらうことで、新しい発見や気づきを得てもらうことをねらいとしました。
■建築現場見学会の実施内容と感想
当日の午前中は、建築現場見学会が行われました。
一建設の上原取締役は、冒頭で、「実際の現場を見ることによって、新たな発見や気づきがあると思いますので、ぜひ学んでください。また当社のような木造住宅に携わる仕事に興味を持って欲しいと思います」と挨拶しました。
造成工事、基礎工事、躯体工事などの見学のほか、現場監督や社員大工が高校生からの疑問に答える機会を設け、社員大工である北村さんが、プレカット材にビスを打つ実演も行いました。
生徒の感想と先生のコメント
見学後、生徒からは次のような感想が挙がりました。
「現場を初めて見たので、知ってるようで知らなかったことが多くびっくりしました」
「柱と梁がどういう構成でできているかを学べたのでよかったです」
「授業で習っているときはイメージしにくかったものが、イメージできてよかったです」
「このような見学会は貴重。開いていただけたのはありがたいです。今後もこのような機会があれば大切にしていきたいし、今回のこともしっかりと今後に活かしていきたいです」
「普段、教室で学んでいることと現場とのギャップに気が付き、どうすればよいか、何を学ばないといけないかを考える良い機会になったと思います。この見学会は非常に意味があるのでは(兵庫工業高等学校 油淺先生)」と話しました。
社員のコメント
社員からは、次のようなコメントが挙がりました。
「今回は3回目の開催ですが、高校生が現場に興味深く見学していた姿を見て、我々も開催してよかったと感じています。開催のきっかけは、高校生や専門学校生の方に、建築業界へ興味を持ってもらいたいという思いからでした。イメージと異なる実際の現場を見ることで、より興味を持ってもらえるのではと始めました。これからも、いかに学生さんに興味を持っていただけるかという点に注意して、工夫しながら続けていければと思っています(一建設 上原取締役)」
■住宅設計体験会の実施内容と感想
午後からは、住宅設計体験会が行われました。住宅設計の仕事内容の説明と、社員によるCADを使った住宅設計の実演の後は、生徒が実際に作図用方眼紙を使って、“自分の住みたい家”の住宅図面を作成しました。
生徒の感想と先生のコメント
体験後、生徒からは次のような感想が挙がりました。
「普段は教科書に載っているものを写していましたが、今回、自分で1から考えて設計するのが難しかったです。でも自分の好きな家が設計できて楽しかったです」
「人が居心地の良い空間を作ることを学べました。今後も人に幸せを感じてもらえるような空間を作りたいと思います」
「こういう経験が積めることによって、少しずつ建築が好きになって、施主さんが好きになって、どんどん愛情が生まれ、社会に貢献できる人間になってくれると信じています(兵庫工業高等学校 油淺先生)」と話しました。
社員のコメント
社員からは、次のような感想やコメントが挙がりました。
「皆さん若いだけあって、柔軟な発想でさまざまな間取りに挑戦されていたので自分自身としても大変参考になりました。今回、高校生の方と触れ合うことができピュアな気持ちになれましたので、今後も参加したいです(一建設姫路営業所 玉置所長)」
「学生さんたちは皆、建築がとても好きなんだなというのが伝わってきました。私がデモンストレーションをしているCADにかじりつく様子があったのですごく嬉しかったです。社会全体に良い影響を与える良い機会。もっと建築の良さを広めていきたいです(一建設設計部 多田部長)」
「生徒さんの笑顔はとても素敵だったので、我々としても得るものがありましたし、良い会だったなと思います。
今までただひたすら建物を建てる仕事をしていた社員も、見学会などで人に教える機会が得られたことで、誇りを持って、自分たちがやっていることは人に伝えられる素晴らしい仕事なんだと感じてもらえているのではないでしょうか。
今後も、労働力不足は継続する問題だと思いますし、建築に興味を持ってもらいたいという思いもありますので、どんどん全国の高校にお声掛けしていきたいと思っています(一建設経営企画部 江角部長)」
開催中、高校生や先生、社員の方々も素敵な笑顔が印象的でした。何より生徒が今回の会について貴重な機会と受け止め、感謝の気持ちで積極的に参加していたのが印象的でした。
今後も、さらに学生たちに建築業界の素晴らしさが伝わり、少しでも労働力不足が軽減されることを期待します。
※【出典】
国土交通省「最近の建築業を巡る状況について」
(参考:https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001493958.pdf)