J-METALバンドのトップランナーとして国内外で活躍している「GALNERYUS」(ガルネリウス)。アニメ「HUNTER×HUNTER」「RAINBOW-二舎六房の七人-」「曇天に笑う」のエンディングテーマを担当するなど、 メタルバンドのレンジを拡げる活動をしており、「HUNTER×HUNTER」エンディング「HUNTING FOR YOUR DREAM」は海外メタルファン、アニメファンから幅広く聞かれ、 ストリーミングは5000万超えなど強い人気を誇っています。
発売中のデビュー20周年記念フルアルバム 『THE STARS WILL LIGHT THE WAY』や、活動で印象に残っていることなど、ボーカルのMasatoshi “SHO” Onoさんにお話を伺いました!
――20周年記念アルバムということで、ファンの方からの反響はいかがですか
毎回そうですけれども、GALNERYUSらしさをしっかりキープしながら、色々なチャレンジをして、応援してくれるファンの皆さんの期待は裏切らず、その上をいくようなアルバムになっていると思います。インストアイベントをやらせていただいたのですが、今回も満足していただいている感じで、嬉しいコメントもいただいています。新しい曲を考えて、アレンジして、リフを作って、演奏していって、僕もバンドの一員なのですが、ものづくりの姿勢に毎回感動しています。
――SHOさんは楽曲によって作詞も担当されていますが、どの様に進めていくのですか?
ギターのSYUくんとキーボードのYUHKIさんがメロディーを作って、詞はSYUくんとYUHKIさんと僕で書いていて、本作ではTAKAさんも歌詞を担当している曲があります。僕一人で歌詞を書く時には曲を渡されて、こういうテーマでお願いしたいと言われるのですが、例えば『FINALLY, IT COMES!』では、希望をテーマに、 基本日本語で決めの部分に英語があるとありがたいな、というオーダーをもらいました。一度書いてみて、見せて、直しをもらったりしながら完成していきます。歌詞を書くことはもちろん難しいですけれど、それだけその曲の歌詞と向き合える時間もあるので、レコーディングの時も歌いやすいですね。自分で歌詞を考えていないと、覚えるという作業が必要になるので、また違う大変さがあるのです。僕が加入した頃に比べると、レコーディングもすごく合理的になっていると感じています。僕が加入した頃は定まっていないことが多かったんですけど、最近はデモからコーラスも入った状態で渡されるので、ありがたいです。
――「希望」というテーマで歌詞をお願いされたとして、その解釈もそれぞれで、テーマが大きいほど難しそうだなと想像するのですがいかがですか。
怒りや希望というテーマはこれまでもたくさん書いてきて、あとはどういう言い回しにするか、新しい表現が出てくると良いんですけどね。この言い回しは前も使ったよねとか、そういうところで悩むんですよね。かといって、 あまり日常で使わないような言葉を羅列してもピンと来ない。何作か前は「もう歌詞が書けない」という歌詞を書きましたけどね(笑)。
年齢と共にテーマに対して感じることは変わってきて、視点も異なってきた感覚はあります。同じ「希望」をテーマにしても、20歳の時と今では違うだろうと。
――世の中への目線も変わりますよね。
専門学校で講師をしているのですが、生徒の子に見せてもらった歌詞とかすごく良いんですよ。すごくシンプルに書かれているんですけど、とても良いんです。ただ、これはきっと彼女が20歳っていう年齢で素直に書いているから良いのであって、その歌詞を僕が書いたら、ちょっと幼いんじゃない?となるかもしれない。年相応に、これまでの経験と感覚で書くしかないなと思いますね。
GALNERYUSは歌詞に関しての 許容範囲が広いと思っています。GALNERYUSに入ったばかりの頃に歌詞を頼まれて、一人称は俺にするべきなのか、僕でいいのか。相手はお前なのか貴様なのか悩みました。その時に、「いや、無理しないで僕でいいですよ」と言われて。メタルなんだけど、そこまで強い言葉じゃなくても良いんだという許容の広さにほっとしました。バラードを歌う時も、普通に歌うとソロの小野正利っぽくなってしまう気がするけれど、「大丈夫です。小野正利で歌ってください」と言ってくれる。
歌詞も歌い方も、曲によっては強く、曲によっては自分のままで歌って、色々な表現が出来て面白いなと思っています。
――なるほど、確かにメタルだと「お前ら!!」みたいな煽りであったり、強さを求められているのかもと思ってしまいそうですよね。
僕はこういうキャラだから、「お前らかかってこいよ」的なMCなんて出来ないよ、と。でも「そのままでいいんですよ」と言ってくれる懐の広さがある。たまに言う時もあるのですが、その後自分が恥ずかしくなったりします(笑)。
――GALNERYUSはSHOさんのボーカルはもちろん、皆さんの演奏もものすごくテクニカルだと思うのですが、ガチガチに世界観を決めていくのではなく許容があると言うところがとても素敵ですね。
SYUくんと初めて会ったのは今から24年前かな。加入の話があった時に、俺でいいのかな?と思いながら、GALNERYUSに対してはすごくテクニカルなことをやっているという印象がありました。でもそれは、必然性があって、楽曲で表現したいことがあるからそのためにテクニカルなことをする必要があるんですね。別に「俺らすごいだろう」ということはしないバンドだなと。
また専門学校の話になりますが、20歳の生徒さんで、その経験の中では上手いと思うんだけれど、彼は自分に自信もあるので、歌もどちらかというと「技術を聞かせようとする歌」なんですよ。「こんな高い声出るぜ」とか、「こんな節回し出来るぜ」みたいなところがある。でも大切なのはそうでなくて、「こういう歌い方をしたい」「こんな表現がしてみたい」と思った時に、「そのためにこれが出来なくてはいけない」と技術を磨く必要が出てくる。手段と目的が逆になっていることって若い時はよくあるんです。
GALNERYUSは技術的には超絶的なことをしているんだけど、嫌味な感じがしないなって加入前に思っていたんです。加入後も、あくまで表現したいもの、伝えたいものがあって、そのために技術を使っている。そこが素晴らしいなと思っています。
そして、褒め言葉としてすごくメロディー自体がすごくキャッチーでポップなんです。そこがメタルだけれど聴きやすくて、アニメのテーマソングに使用していただける所でもあるのかなと思います。
――おっしゃるとおり、J-METALとしてコアなファンも楽しませながら、アニメの主題歌として幅広い方が親しんでいることも素晴らしいですよね。
僕も昔アマチュアのヘビーメタルバンドをやっていたので、ヘビーメタルというジャンルを考えた時に、 数年に1枚アルバムを出して、ツアーと言っても東名阪くらいかなと思っていました。でも毎年アルバム作るし、バンバン海外に行くし、本当に精力的なバンドだなと思います。
専門学校の生徒たちは若いので僕の「You’re the Only…」という曲を知らないのですが、GALNERYUSに入ってすごく尊敬されました。2011年にはソロの方でアニメ『HUNTER×HUNTER』の主題歌を歌わせていただいたら、新入生から後光が差した様に崇められて。でも4ヶ月くらい経ったらただのオヤジだとバレるんですけれど、作品の力ってすごいなと思います。
――海外にもたくさんのファンの方がいらっしゃいますね。国によっての盛り上がりの違いは感じていますか?
意外かもしれないのですが、中国や東南アジアにもたくさんメタルファンがいるんですよ。またツアーでお邪魔しますけれど、日本と同じ様にアツく盛り上がってくれますし、それぞれのソロパートがとても盛り上がるんですよね。ギターソロなんかでもメタルっ子たちが食い入る様にその技術を見ている。ヨーロッパはライブっていうもの自体をパーティーのように捉えていて、瓶ビールを片手に楽しんでいる。以前ヨーロッパツアーでのドイツで、僕がありったけのハイトーンで叫んでみたんです。アジアだとすごく喜んでくれるのだけど、ドイツは無反応でしたね(笑)。俺のこの声じゃ、パワフルにはジャーマンには敵わないんだって思いました。フランスでもスペインでも叫んでみたんですけど、 やっぱり技術よりもみんなで盛り上がりたいという気持ちが強い様に感じました。
――面白い違いですね!ありったけのハイトーンというのは想像するだけでパワフルでカッコ良いですが、小野さんの体力の秘訣はどんなことにありますか?
僕ね、基本的には体力が無いんですよ。なのでGALNERYUSに入る時も、お客さんを煽ったりパワフルなMCは出来ないですよと言っていたくらいで。歌うためのパワー、体力はあるんですね。自分でもなぜか分からないのですが、自分にとって負担の少ない 歌い方だったり、発声というものに自然に行き着いたのだろうなと思います。
20歳の時、自分が50歳を過ぎたらどんな感じなんだろうと思っていて、周りを見渡しても60歳近くでポップスとかロックを歌っている人って当時はいなかったから、きっと自分も50歳までは歌えないだろうなと思っていたのですが、意外と歌えていますね。
これは結果論にはなりますが、ソロ活動で30代、40代を過ごしていたら、50代になって今のように歌えてなかったかもしれないと思うんですね。GALNERYUSに入って人前で本気で歌うステージが1年間に30回ぐらいあって、GALNERYUSのおかげで、皆さんに懐かしがられてテレビ番組で歌う機会もいただいたので、きっと歌う力は衰えていないんだろうなと。
――先ほどもお話伺いましたが、講師として若い方と触れ合うことも刺激をもらいそうですね。
今の音楽って本当に多様性にあふれていて、歌も技術的に僕の世代よりも高度だと思います。歌唱を料理に例えることが多いんですけど、 昭和歌謡は僕が持ち合わせている調味料でなんとかできるんですよ。食べたら「これは醤油と砂糖かな?」とかなんとなく分かる。でも今の楽曲は調味料が分かったとしても、どのくらいの配合で作らられているのか分からないし、調味料自体が分からないことも多いです。僕は純粋に歌うことしか教えられないですし、技術的にはみんなの方が持っていたりするから、僕が教えるのはおこがましいのだけれど、声の発声の仕方、声をどう使うのかということを教えています。
若い方の歌を聴いていて一つ思うのは、これはYUHKIさんと話していたのですが、スタジオに入っていない、家で録音しているから声が小さいんですよね。それで音楽として成立しているのならば良いのだけど、僕なんかはやっぱり思い切り大きく歌おうぜと思ってしまう。
例えば、生放送で歌を聴いた時にMrs. GREEN APPLEの大森元貴さんはすごく素敵な歌い方をするなと思いました。さっきのGALNERYUSの話と通じますけれど、技術をひけらかしているわけではなくて、本人が気持ち良くて必然性がある歌い方が素敵だなと。あとはSuperflyさんも初めて聴いた時に感動しましたし、秦基博さんも。声が強い人が好きなんだなと思います。
あと、LiSAさんの『紅蓮華』という曲を皆さん歌うのですが、あれだけレンジが広い曲を、「自分は歌えます」というアピールで歌う方が多いのですが、LiSAさんとお話する機会があった時に「これだけ広い音域を出していてすごいですね」と言ったら「そうなんですか?」といった回答をしていて、本当に歌の上手い人ってそういうの気にしないんだなって思いました。
――SHOさんも相当な音域をお持ちだと思うので、そんな方から見ても今名前を挙げてくださったアーティストさんはすごいのですね。
僕はずっとハイトーンボイスだと言われていますけれど、若い時は、歌えば歌うほど出るから出しているみたいな所もあって。この年になって振り返ってみると若い時のあのハイトーンは出ないですね。だからこそGALNERYUSのボーカルとして、色々な表現の幅に挑戦していきたいと思いますし、色々なことにチャレンジ出来ることがすごく楽しいんです。
――今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!
◆GALNERYUS Official Web Site:https://www.galneryus.jp [リンク]
◆GALNERYUS公式X:https://x.com/GALNERYUSOFFIC2 [リンク]