「もし現代日本に“忍び”が今でも身を潜めているとしたら」
リアリティあふれる描写で映像化された忍者アクション『忍びの家 House of Ninjas』は、Netflixにて現在、独占配信中の作品です。
全8話となる本作は、2月15日(木)の配信以降「今日のシリーズTOP10」において、日本、インド、香港、タイなどを含む世界16の国と地域で1位を獲得。また世界92の国と地域でTOP10入りを果たすなど、大ヒットを記録中。勢いは衰えることなくさらなる広がりを見せ、配信2週目(2/19(月)-2/25(日))のNetflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)では1位を獲得!世界中を”忍者ドラマの新風”が席巻しており、まさに爆発級の人気で世界配信されています。
今回は、本作の主演・原案を務める賀来賢人さん、監督のデイヴ・ボイルさんに『忍びの家』制作の裏側についてお話を伺いました。
作品の“着想”
──「もし現代に忍者がいたら」という賀来さんの発想からこの作品が生まれたという風に聞いております。その発想の発端、きっかけを教えてください。
賀来賢人さん:作品を何か自分達で作りたいねっていうところから、今回4話5話を担当してる(原案の)村尾(嘉昭)さんと今井(隆文)さんと会話してる中で、僕は「忍者ものがやりたい」って言ったんです。
あるときに忍者村に行ったことがあるんですが、まずうちの子供がすごく楽しんでる。忍者っていうものに対して面白がってたんですが、それに加えて、外国人の観光客さんがめちゃめちゃ熱狂してたんですよ! 忍者村で!(笑) 本当に忍者のコスチュームを着て。
日本人からすると、忍者ってもうどこか当たり前の文化になってるというか、実は新鮮味がそんなになくなってきてるんじゃないかな……と思ってたんです。忍者村に行く前までは。
でも、むしろ、海外の方の目の輝きとか子供の目の輝きを見て、「いや、これはすごい文化というかカルチャーだよ」っていうのを感じたんですよね。実際、海外作品の方が、忍者作品にチャレンジしようとしてるじゃないですか。それもおかしいな、と思って。
──海外作品の方が忍者というものに対して積極的にアプローチしているように見えますね。
賀来:だったら日本初の忍者作品があって、「現代にもし忍者がいたら」みたいなのがあってもいいんじゃないかなって。更に家族っていうテーマをくっつけたらどうだ? と。僕は家族っていうテーマも描きたかったので。そうした話から、原案を作ったという流れですね。
──海外の方のその目の輝きから、おそらくデイヴさんに 繋がるところがあると思うんですけれども、お2人がタッグを組むに至ったいきさつを教えていただけますか。
賀来:原案を出して、Netflixさんに出したんです。そしたら──
デイヴ・ボイル監督:Netflixから僕に連絡があって、「忍者モノに興味がありますか?」って聞かれて。ちょっと驚いたんですけど、忍者モノは誰だって興味があるじゃないですか?
──そうですね(笑)。
デイヴ:それで、賀来さんたちからいただいた企画書を1回読ませていただんです。「現代に忍者がいるとしたら」っていうワクワク感が、土台として非常によく描かれてるから、非常に面白い。これは是非やってみたいなと。
シリーズの世界観やキャラクター、大体のストーリーの流れを決める「バイブル」というものが有るのですが、バイブルを作成するために、まずはいろんな忍者の歴史を調べたんです。ところが忍者ってルールがものすごく多いんです。お酒を飲んではいけないし、肉を食べてもいけない。恋愛とかに対する縛りもある。
現代の忍者がそういうすごく昔の価値観で、ルールを守りながら生きていくっていうのは、非常に難しいと思いました。
──制約だらけの生活を、現代に持ってきたら大変そうです。
デイヴ:そうした忍びの伝統を受け継いだまま、伝統に対する考え方がそれぞれ違う家族を描けたら面白い。そう思いながら作成したバイブルをNetflixさんに出したら、賀来さんを紹介していただいたんです。
──古くて厳格なルールが残っている「忍者」という仕組みを現代に投じたら、確かにいろいろなギャップや隙間が出てきそうですね。
賀来:面白いなと思いましたね。初めてそのバイブルを見た時に「この発想はなかった!」って。
──ただ、忍者はファンタジーに近い存在でもありますから、安易に日常にファンタジーを組み込むとチープになる恐れもあります。そこをうまく補い、リアルにしてくれている要素として、アクションがあると思いました。
あのクラブでの長回しのアクションシーンは、めちゃめちゃ凝っていましたし、並々ならぬこだわりを感じましたがいかがでしょう。
“殺す”アクション
賀来:デイヴとも、アクション監督の田渕(景也)さんと話してたのが、 まずワイヤーとかCGとかそういうことじゃなくて。そのクラブのシーンだったら、人はたくさん居るんだけど、人にバレないように動けるアクションをする、ってことが重要になります。
ほんとにもうこの(数㎝の)距離での打ち合いなんだけど、ちゃんと“効いてる”。でも派手じゃない。“本当に殺す”やり方でやるっていう。
──アサシン(暗殺者)ですよね。
賀来:そうそう。だからなんて言うんだろうな。 ボーン! っていうド派手なのが好きな人ももちろんいますけど、今回はそうじゃない。分かる人に分かる、一番効果的なアクションを田渕さんと追求してた感じがありますね。だから自分たちでやる必要があったし。
──すごい。あそこはなんかものすごいこだわりを感じたんで。 監督も、演じる賀来さんとしても、アクションのところはかなり苦労されたんではないですか。
デイヴ:演出サイドより、俳優さんたちのほうですよね(笑)。 だって、俺たちはもう練習しなくていいから。見てる側ですからね。もう、すごく大変そうでした。 「もう1回行こう」とか言ったら、すごい顔された。
賀来:(爆笑) こういうアクションのタイプ、あんまやったことなかったんで。
──そうなんですね。
賀来:もっと派手な感じが多かったんです。
──見せるアクションの方が今まで多かった、と。
賀来:そうですね。だから今回は面白かったですね。最小限に抑えるみたいな動き。あのクラブシーンはそれを象徴してますよね、確かに。
──“殺す”ことに特化したら、動きは派手じゃなくなる分、作品として映えづらくなりますし、大変ですね。
賀来:うん。で、それをクラブでやってるっていうのが、またギャップなのかな。
デイヴ:はい。で、それが撮影の3日目だったという。
──え! そうなんですか。
賀来:あははははは!
──結構序盤な。
賀来:序盤も序盤でしたね。
──あんなハードなシーンを撮影3日目に持ってきた理由はあるんですか?
デイヴ:スケジュールですね。現実問題というか
賀来:(爆笑)
楽曲の“ギャップ”
──ギャップがすごいなと思ったことのもう1つに、あの音楽の使い方がありました。選曲の着想点はどんなところでしたか?
デイヴ:この作品の大きなテーマは、やっぱり温かい家族の話。でもアクションとか、がっつりとハードな要素もあるじゃないですか。そして、忍びは昔の価値観で生活しているので、タイムレスな、時代と矛盾しているような音楽は適切だと思いました。だから、そのギャップが狙いだったんですよ。
そのギャップを、よりよく表現するためには音楽の使い方が非常に大切だなって思いましたし、それを賀来さんともずっと話してました。音楽をどう使ってこの作品のトーンを表現できるかと。
だから、撮ってる時に楽曲のプレイリストを作ったんですよ。で、編集に入ったら、この曲がいいだろうっていう って思ったところをプレイリストから選んで当ててみたりしたら、やっぱりギャップのある音楽の使い方は、“効く”んです、僕には。がっつりアクションの時にちょっと切ない感じの曲とか。そんな発想からでしたね。
賀来:僕、編集室で見ていて、1話の最後のクラブのシーン、ハルの目が合ってあの曲が流れた時、拍手しました。
──あのシーン、すごく良かったです。 プレイリストを共有した上で空気作りをする、ってものすごくいいアイデアですね。
デイヴ:やっぱり文字だけで伝わりにくい雰囲気もあると思うんですよ。
賀来:多くを語らない。
──無駄な説明よりも、アクションと音楽で全てが伝わるってことですね。忍者モノってこれまでにも作品がたくさんありますが、デイヴさんの発想で非常に新しい表現がなされていますね。
賀来:そうなんですよ!
デイヴ:今までの忍者モノとかに敬意を表しながら、ちょっとの新しさ──今までと違うんですよっていう表現の仕方を探ってみたとき、やっぱり音楽の力は大きかったなと思いました。
──忍者というものを表現するうえで、「絶対外しちゃいけないところ」「押さえておきたいポイント」ってどんなところだと思いましたか?
賀来:僕が完成作を見て思ったのは、やっぱり「忍者は忍者であって、スパイではない」ってことですね。忍者っていう“ジャンル”である、と。
あの苦無(くない:武器のひとつ)とかの小道具もそうなんですけど、今回ちゃんと誰が見ても「忍者」って思えるあのルックスになったことが、僕は良かったなって改めて思いましたね。
撮影入る前は「ここまで忍者ぽくしていいのかな」とか思ってた部分も正直あったんですけど、でもやっぱり忍者なんですよ、彼らは。忍者であることはやっぱ忘れちゃいけないなっていう。さっきデイヴが「敬意を表す」と言った意味と同じように、この作品のシンボルであるべきだし。
デイヴ:そうそうそう。
賀来:それをこのチームで最後まで突き通せた、っていうのは、大きかったですね。
チームの“幸せ”
──全体を通して、この作品は古いものと新しいものがちゃんとしっかり馴染んでいる感じがしました。
秘密を隠しながら生きるっていうのは、ヒーローの宿命にすごく馴染み深い設定でもあると思うんですけど、その守らなければいけない秘密の先にあるのは、守りたい存在があるからだと思うんですね。
お2人が守りたいと思っているもの、大切にしたいと思っているものについてお聞かせください。
賀来:今回、プロデューサーっていうクレジットで入らせていただいたし、主演という立場にありますけども、このチームを守りたいって、心の底から思えたのは初めてかもしれないです。
やっぱり、責任もあるし「このチームで勝ちたい」って思ったし、うん、なんか、ほんとに、ま、色々大変なこともあったけど、みんながこの作品に……なんて言うんだろうな、ワクワクしてるのが、すごく伝わってきたんですよ。で、なんか、全員から「助けてあげよう」っていう気持ちも感じたし、何より楽しそうだったんだよね。みんなが。
デイヴ:すごく楽しい現場でした。
賀来:なんか、それが僕はすごくグッと来て。このチームで世界で戦いたいし、勝ちたいなって思いました。
デイヴ:僕はこの作品のストーリーや個性、ストーリーのトーンを守る役割だと思っていたんですけど、どっちかっていうと、守る方じゃなくて、守られている方だな、ってちょっと感じたんですよ(笑)。日本で一流のスタッフの皆さんに守られたと感じますね。
賀来さんがプロデューサーとして入っていましたが、僕も賀来さんも好き嫌いとか好みが非常に似てて「同じものをこう作ろう」としていることはチームとして感じていました。だから、とても守られながら、クリエイティブでいられたって。非常に監督としてラッキーだなって思いました。
──幸せな時間がそこにあったんですね。
デイヴ:まあ、大変なこともありつつ。
──さっきも、ちょっと「大変なことが」なんて言葉が出ましたが。
賀来:(笑) それはあります。あります。
デイヴ:それはどんな作品でも当然あります。(笑)
──言える範囲で、その大変だったエピソードを。
賀来:あはははははは。
デイヴ:言えない(笑)。もう言える……言えることは1つもない。
賀来:あははははははは!! でも、トータルで楽しいのが勝ってるんで。
デイヴ:それは非常に珍しいことですよね。
賀来:やっぱり……すごい、こういう大きな作品を作ることにおいて、大変なことって多いんだなって、すっごい勉強になりました。でも改善点もわかったし、やらなきゃいけないこともわかったし。次に生かせます。
デイヴ監督の“変化”
──(取材時)僕はまだ全部見てない状態なので、聞くべき質問かどうかちょっとわかんないですけど、“続編”とかってのは……?
賀来:ね。はい。やる気は満々です。
デイヴ:ぜひ、これからもこの忍者の世界の風呂敷を広げていきたいなと。
──いいですね!忍者だけに!
賀来:風呂敷を広げる(笑)。
デイヴ:この表現は実は(賀来さんを指さす)。
賀来:すごいんですよ。僕が使った日本語をすぐコピーして、自分のものにするんです。彼が日本に来た時、日本語は喋れたんですけど、正直なところ結構コミュニケーション大変だったんですよ。
でもこの撮影で、ネイティブジャパニーズになったんです。完璧な。
デイヴ:モノマネで。なんか面白い表現聞いたら、それを使ったら、もう一生忘れないですから。そういう作戦でちょっと勉強しました
──クリエイティブですね……! 賀来さんは今回、原案そしてプロデューサーとしての立場と、役者としての立場、両方あったので大変だったのではないですか。
賀来:プロデューサーと言っても、お金回りとかは他の方にお願いしてたのでそこまでではなかったです。言いたいことを言えるポジションを手に入れた感じですね。今まで役者としてやってた時は、 自分だけのことに割とフォーカスしたんですけど、今回は全体のクリエイティブに関与してました。
だから、現場中にもデイヴと「あのシーンこうだよね」とか話し合って。そしたら、デイヴが新しく書き直して、それを僕がまた日本語で書き直して、みたいな、そういう作業も現場中にしてました。
まぁ普通に考えたら大変だったと思うんですけど、僕は毎日楽しかったんで、そんな苦じゃなかったですね。ただ、終わった後にはもう完全に放心状態になりました。(笑)
──全てが燃え尽きて、燃え尽き症候群に。
賀来:そうですね。しばらくなりましたね。
──監督は大丈夫でしたか? 終わって一区切りした時に燃え尽きなかったですか。
デイヴ:体重が半分ぐらいになってます。
賀来:わはははははは!(大爆笑)
──大変なことじゃないですか、それ。
デイヴ:まあまあまあ。でも、それは長い期間の撮影で当然のことだと思う。
──いやいやいやいや。
賀来:当然じゃない(笑)。
──普通半分にならないです。リアルに燃えてるじゃないすか。
賀来:いやぁ、燃えてましたね。
デイヴ:あー、でも幸せでしたよ。撮りたいものは撮れましたので。それはチームのみんなが、同じものを作ろうとしているっていう幸せがいちばん大きかったかなと思います。みんなは私たちが狙っていたギャップを描きたくて毎日現場に来たりしてたから、それは演出家としては何よりも幸せな状況です。
二人の語る“見どころ”
──なるほど……! いろんな大変なことも、楽しいこともたくさんあった中で、見どころや印象的なシーンってありますか? 難しいとは思いますが。
賀来:すごく印象的だったのは、3話の最後の……
デイヴ:同じ。同じ。
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※ネタバレのため、詳細は伏せます※
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賀来:あそこは色々あったんだよね。ほんとに。
デイヴ:ほんとに、あの、現実問題とか、……ま、色々あったんですけど、最後の賀来さんと〇〇さんが対峙する時のシーン、あれを撮るにはもう1時間ぐらいしかなくて。めっちゃ急いでも1回しか撮れなかったんです。だから「これ大丈夫か」って思いながら撮ったら、もう、すごく印象的なシーンになってて。自分で言うのはアレですけど、毎回観るとワクワクします。
賀来:すごい緊張感! それと同時に、もう絶対、誰もミスれねえ! っていう。
実は、日光と場所の問題があったんです。 暮れちゃうと、もうできないってなっちゃってて。それで1時間リミットだったんです。
──やば。
賀来:加えて、その前にハルと〇〇〇と〇〇〇、あの3人の動きについて、 どうしても話し合わなきゃいけないシチュエーションがあったんです。そこでも結構みんなの意見を言い合って、「ああしよう」「こうしよう」「いや、こうだ」みたいな。もうそれも全部やった後に、最後に残された時間は1時間みたいな状況。間髪入れず「はい!行くよ!」みたいな感じで、すごい、もうみんな超集中して撮り終わって「よっしゃあああああああああああ!」みたいな(笑)。
なんかあの時、結構チーム感強かった。
デイヴ:強かったですね。みんな終わったら、生き生きしてる顔で帰りました。
──もう1回観よう……。いや、あそこは確かに演者の皆さんの力量であそこまでの完成度に高めてるってのは思ったんですけど、それ以上にそういう事情があって、皆さんの緊迫度がめちゃめちゃ高かったっていう裏があったんですね。凄い。先ほども“続編”やる気は満々ということでした。
賀来:まだまだね、描いてないストーリーがたくさんあるので、僕たちはやり続けたいですね。
デイヴ:まだまだ、風呂敷広げる余裕があります。
賀来:そうだね(笑)。
──広げきったところを見たいです。今日はありがとうございます。
賀来:はい。観ていただいてありがとうございます!
──とんでもないです。もう続きが気になってしょうがない!!
デイヴ:ありがとうございます。お疲れ様でした!
Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」
出演:賀来賢人 江口洋介 木村多江 高良健吾 蒔田彩珠 吉岡里帆・ 宮本信子 ・田口トモロヲ 柄本時生 嶋田久作 ピエール瀧 筒井真理子 番家天嵩 山田孝之
原案:賀来賢人 村尾嘉昭 今井隆文
監督:デイヴ・ボイル 瀧本智行 村尾嘉昭
脚本:デイヴ・ボイル、山浦雅大、大浦光太、木村緩菜
エグゼクティブ・プロデューサー:佐藤善宏(Netflix)
プロデューサー:神戸明
制作プロダクション:TOHOスタジオ
製作:Netflix
配信:Netflixにて独占配信中