物価が上昇を続ける情勢化において、賃上げの機運も高まっている。しかし、東京商工リサーチによる2023年12月の調査では、2024年の賃上げが2023年を超えそうという回答は1割にとどまり、中小企業では賃上げができそうにないという回答が大企業の約2倍となった現実がある。
そんな中、福利厚生の食事補助サービス「チケットレストラン」を国内に展開する株式会社エデンレッドジャパンは、福利厚生サービスを活用して実質手取りをアップさせることを「第3の賃上げ」と定義。クラウドサービス「freee福利厚生」を展開するフリー株式会社と手を組み、「#第3の賃上げアクション」プロジェクトを発足させた。
2024年2月6日には、「#第3の賃上げアクション」ローンチ発表会が実施。プロジェクト立ち上げの背景や、実際に福利厚生による実質賃上げを導入している企業を交えたトークセッションが行われた。
本社をフランスに構えるエデンレッドジャパンは食の福利厚生サービス「チケットレストラン」を国内に展開しており、全体の導入企業は100万社、利用者は6000万人を超えるという。福利厚生の非課税枠内では1人当たり月の上限は7000円となっており、従業員負担は半額のため食事や飲食物が実質半額になるサービスだ。「チケットレストラン」に対応したコンビニやレストレンにてカード1枚で簡単に利用できるサービスで、対応するチェーン店も誰もが知るブランドが並んでいる。
ローンチ発表会ではエデンレッドジャパン 代表取締役社長 天野総太郎氏が登壇。「#第3の賃上げアクション」プロジェクト立ち上げの背景について天野氏は「人材不足・流出の課題、物価高の上昇の急激な推移といった状況の中で、どのようにして賃上げを実施するのかという大きな問題があります。
政府は昨年を上回る賃上げの水準を経済界に要求していますが、企業側も前向きに取り組んでいるものの過度な賃上げによるリスクには慎重になっている」と前置きした上で「チケットレストランも2021年度の約4倍にニーズが拡大しており、従業員満足や人材の確保・定着などのため、福利厚生を戦略的に導入する企業が増えていますが、給与還元ではなく手取りを実質的にアップする福利厚生についての認知はまだまだ少ないです」と語る。
そんな状況の中で「福利厚生の実質賃上げ効果を伝えていくことは、社会的意義があるのではないか?」との想いからプロジェクトを立ち上げたとのこと。福利厚生サービスを活用して実質手取りを増やすことは、従来のシンプルな定期昇給や基本給の引き上げではなく企業側にとっても節税につながるため、従業員と双方にメリットがあるという。また、福利厚生サービスの活用は中小企業にとっても少額からトライできるため導入障壁も低いこともポイントだと語られた。
続いてエデンレッドジャパンとともに共同発起人となったフリーより、HR事業部 社宅事業責任者の相澤茂氏が登壇。「freee福利厚生」のサービス紹介とプロジェクトの参画経緯が説明された。
クラウド会計ソフトfreeeをはじめ、個人事業主やスタートアップ企業のバックオフィス支援を行なっている同社が手掛ける「freee福利厚生」では、借上げ社宅サービスを展開。従業員が借りている賃貸物件の家賃を従業員が直接支払うのではなく、法人として借りたうえで従業員に家賃の一部を現物支給として貸し出すという仕組みだ。
従業員側は給与から家賃の一部が減額されることで、社会保険料・税金分が圧縮されて手取り額が実質的に増えることになる。物件を法人として所有する「社有社宅」ではなく、すでに従業員が住んでいる物件を法人が借り上げることができることも、導入しやすいメリットとして語られた。
その上で実質的な手取りアップにはつながるが、将来受給できる年金額が下がる可能性などデメリットもあることも挙げられ、従業員側が福利厚生の一環として選択できる制度であることがポイントとして紹介された。
相澤氏も「大企業からスタートアップへ転職した際、待遇面の悪さから周りの人から止められた経験がある」と自身の経験談を語りつつ、「転職経験者の入社決定に大きく影響する事柄として、労働条件以外には福利厚生の制度が整っていることがトップに挙げられています。法定外福利厚生費には、大企業と中小企業で大きな差がありますが、事業やミッションをはじめ働く人に共感して会社を選べる社会にという理念のもと、法定外福利費の中で割合が多い社宅に注目して、借上げ社宅サービスによって実質手取りを増やす取り組みをしています」とプレゼンをした。
「freee福利厚生」サービスでは、物件契約や管理会社への連絡など企業側のデメリットとなる運営コストを削減するため、仲介代行をしているとのこと。エデンレッドジャパンが掲げた「#第3の賃上げアクション」には「賃上げにもさまざまな選択肢があることを広く知ってほしい」という想いから参画を決定したことが語られた。
続いて実施されたトークセッションでは、「#第3の賃上げアクション」の賛同企業であるアイシーティーリンク株式会社・株式会社ハートコーポレーション・株式会社YOUTRUSTのメンバーを交え、カスタマー視点でのプロジェクトの魅力や、福利厚生の拡充を導入したきっかけが紹介されていく。
アイシーティーリンク 取締役副社長の吉野真吾氏からは「小さい会社なので本格的な福利厚生に最近取り組み始めました。ランチ代の節約を社員がやっていたことがきっかけで経営課題として改善する方法を探していたところ、エデンレッドジャパンさんのサービスを見つけてすぐに契約しました」と導入の経緯が紹介された。
第3の賃上げを実施した効果として「IT業界では慢性的な人材不足に悩まされています。大手や待遇の良いところへの転職も日常的に行われており、第3の賃上げを採用の武器にすることで、すでに継続して利用している社員が辞めることなく100%継続しています」と人材確保はもちろん離職率の低下にもつながっていることが語られた。
介護事業を手掛けるハートコーポレーション 常務取締役の岡嵜将志氏は「介護業界の人材定着のため、チケットレストランを導入しました。継続率は100%で利用が生活の一部になっているという声が上がっています。口コミによる採用効果にも期待していますし、介護業界は賃上げが構造的にしづらいため人材の定着に貢献してくれるのではと思っています」と話す。
同じく第3の賃上げを実施した効果については「従業員のために会社がこういうことをしてくれているという効果をしっかりと感じられるものだと思っています。賃上げは嬉しいものですが生活水準も同時に上がっていくものなので、福利厚生の選択によってメリットを感じやすいものを選ぶことが大事なのでは」と所感を述べていた。
スタートアップ企業のYOUTRUST 経営企画部 人事労務G リーダーの加藤マキ氏は「平均年齢が若い組織の中で福利厚生を大企業と同じように充実させたいと考えたとき、会社側と従業員の双方にメリットがあるということで導入しました。借上げ社宅制度を活用していますが、新卒や若い年齢層の従業員に喜ばれています。(スタートアップのため)人材確保が事業成長に直結するので、エンゲージメント強化とともに採用の強化にもつなげていきたい」と展望を語った。
福利厚生を活用することで、企業側にも従業員側にもメリットがある「第3の賃上げ」の導入実例を交えた発表会ののち、改めてエデンレッドジャパンの天野氏に話を伺う。「賃上げに加えて第3の賃上げアクションをハイブリッドに実施していただくことで、より従業員の方の満足度が高まるのではないかと思っています。
我々サービスを提供する側としては、サービスのレベルを上げることやUI・UXを改善していくことで、人材に関するサービスに投資することによって得られるリターンを可視化していくこと。そうすることによって、もっと企業側が福利厚生に投資をしてくれる時代になっていくのではないかなと思っています」と想いを語ってくれた。
福利厚生を活用することで、従業員満足度も上げつつ実質的な賃上げを行える「#第3の賃上げアクション」プロジェクト。賃上げというベースも意識しつつ、こういった形での賃上げができることは、これからの日本でもより一層注目したいポイントだ。
エデンレッドジャパン「#第3の賃上げアクション」プロジェクト:
https://edenred.jp/the3rd_chinage