2017年に第157回直木賞を受賞し、累計発行部数56万部を超える佐藤正午によるベストセラー小説「月の満ち欠け」(岩波書店刊)。著者・佐藤正午の最高傑作と名高い純愛小説が実写映画化、2022年12月2日より全国公開中です。
切なすぎる愛の奇跡を描いた本作。大泉洋さん演じる小山内と柴咲コウさん演じる妻・梢の娘・瑠璃を演じた菊池日菜子さんにお話を伺いました。
――本作とても楽しく拝見させていただきました。大変豪華な俳優さんとの共演となりましたね。
脚本をいただいてからは、錚々たるキャストの皆さんと共演することはいったん忘れて、脚本に集中しようと頑張りました。でも、だんだん撮影の日が近づいてくるにつれて「明日は柴咲さんと初めてお会いするんだ」などと考えてしまって。私がクランクインする前に、柴咲さんの撮影現場を見学させていただいたのですが、あまりにも美しくて感動しました。ご挨拶させていただいた時もすごく優しくて。感謝の気持ちでいっぱいになりました。
――瑠璃と母の梢は強い絆で結ばれていますよね。
私自身も母とすごく仲が良くて、友達みたいになんでも話せる存在でありながら、母としてとても尊敬しています。母には一生敵わないと思うほどです。柴咲さんは本当に優しくて、私がどうでも良い話をしても、いつも温かく聞いてくださりました。私が撮影で少し悩んでいた時もそれをすぐに感じ取って駆け寄ってくださったり。とにかくたくさん助けていただきました。
――大泉洋さんとの共演はいかがでしたか?
大泉さんには以前ご挨拶をしたことはあったのですが、共演させていただくのは初めてでした。大泉洋さんは、ずっと「大泉洋さん」なんです。私が小さい頃から見てきた楽しくてあたたかい大泉さんでした。ホームパーティのシーンでは、楽しい雰囲気を作るために、大泉さんが娘さんの話をしてくださったりして。すごく楽しかったですし、目の前で大泉さんのお芝居を見れたことはとても勉強になりました。
――大泉さんの演技からはどんな学びを得ましたか?
セリフ1つにしても、役への入り方が私とは比べ物にならないくらいすごくて。「こういう感情があって、こういう言葉を出す」という気持ちをしっかり持っていらっしゃるので、お腹の底からセリフが出てきているんだなと感じました。撮影がはじまる前にも、出演者の皆さんとお話ししたり、雰囲気を和ませてくださる気遣いが素晴らしくて。現場でのふるまいに関してもとても勉強になったので、私もそんな俳優さんになりたいと思いました。
――菊池さんが演じた小山内瑠璃という役柄に対しては、どの様な印象を受けましたか?
ただの女子高生ではない小山内瑠璃という人物をどう表現しようかと、正直すごくすごく悩みました。話を読み進めると、どんどんシリアスな展開になっていきますが、家族と一緒にいる時はとても幸せな時間で、瑠璃ちゃんは家族が大好きな普通の女の子であることには変わり無いので、その時々の感情に嘘が無い様に、素直に表現しようと思いました。
――涙を流すシーンが切なくてとても素敵でした。
あのシーンは、涙を流すという指定は無かったのですが、瑠璃ちゃんの色々な感情があふれてきて自然と涙が出ました。それを監督が良いと思ってくださったようで、綺麗な日の光が入る別日に撮り直しをしたんです。でもその時には涙が出なくなってしまって。その様子を見た監督がスッと私の近くに来て、脳に直接語りかけるかのような優しい静かなトーンで「この時の瑠璃はこういう気持ちで」と語りかけてくださったんです。そのおかげで無事に涙を流すことが出来ました。
――とても素晴らしいシーンの裏には、そういった監督の演出があったのですね。
廣木監督が撮られたNetflixの『彼女』がすごく好きで、いつか廣木監督の作品に出演したいと思っていたので、今回本当に嬉しかったです。本作にも、私がいち観客として魅せられた廣木監督らしい映像美と、人間の描き方の素晴らしさが溢れているので、ぜひ多くの方に観ていただきたいです。
――菊池さんがお気に入り、好きなシーンはありますか?
有村架純さん演じる瑠璃と、目黒蓮さん演じる三角哲彦が部屋の中で会話しているシーンがすごく好きです。月明かりに照らされている2人が美しくて、色々な方に観ていただきたいとても素敵なシーンです。お2人だからこそ出る大人の恋愛感がすごく出ていて、脚本が何倍にもふくらんだ素敵な映像になっていたので感動しました。
私が出演しているシーンでは、最後の方に怖いシーンがあります。こういったシリアスなお芝居をすることがはじめてで、自分自身も特に緊張感を持って取り組んだので注目していただきたいです。
――最後に改めて、本作『月の満ち欠け』の魅力を教えてください。
ただのラブストーリーでは無い、たくさんの愛が描かれている物語です。恋愛、家族愛、友情など、様々な愛が交差しているお話で、自分を重ねることが出来るストーリー、シーンもあると思います。私は台本を読んだ後に原作を読んだのですが、どちらにも違う魅力がありますので、ぜひ映画を観た後は原作も楽しんでいただきたいです。
――ちなみに菊池さんが好きな本、最近読んで面白かった本はありますか?
最近読んだのは「死にたくなったら電話して」(李龍徳著)と、「静かに、ねぇ、静かに」(本谷有希子著)です。「静かに、ねぇ、静かに」がすごくお気に入りで、今は本谷有希子さんの本を読み進めています。自分ではなかなか言えないような人間の感情が描かれていて、スッキリします!
――本谷有希子さん、私もすごく好きなのでその気持ち分かります。最後に、菊池さんが今ハマっていることや、楽しいことを教えてください!
お笑いがすごく好きなのですが、今ちょうど賞レースの時期で(※取材時)色々な変動が起こっているので見逃せません。毎日ドキドキしながら速報を見ています。好きな芸人さんは「Aマッソ」さんで、単独ライブや舞台に行くのが幸せです。
――鋭い視点がお好きなんですね!素敵です。今日は本当に楽しいお話をありがとうございました。
撮影:オサダコウジ
ヘアメイク:猪股真衣子(TRON)
スタイリスト:松川総
衣裳クレジット:
ワンピース ¥41,800
ニット ¥15,400
カーディガン ¥41,800
全てジョン スメドレー(リーミルズ エージェンシー)
靴 ¥79,200
パラブーツ(パラブーツ青山店)
【ストーリー】
”もう一度逢いたい”と願う純粋な想いが、27年の時を超えて奇跡を起こす––
仕事も家庭も順調だった小山内堅(大泉洋)の日常は、愛する妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃のふたりを不慮の事故で同時に失ったことで一変。 深い悲しみに沈む小山内のもとに、三角哲彦と名乗る男(目黒蓮)が訪ねてくる。事故に遭った日、小山内の娘が面識のないはずの自分に会いに 来ようとしていたこと、そして彼女は、かつて自分が狂おしいほどに愛した“瑠璃”という女性(有村架純)の生まれ変わりだったのではないか、と告げる。 【愛し合っていた一組の夫婦】と、【許されざる恋に落ちた恋人たち】。 全く関係がないように思われたふたつの物語が、数十年の時を経てつながっていく。 それは「生まれ変わっても、あなたに逢いたい」という強い想いが起こした、あまりにも切なすぎる愛の奇跡だった——。
映画『月の満ち欠け』大ヒット上映中
大泉 洋 有村架純 目黒 蓮(Snow Man) 伊藤沙莉/田中 圭 柴咲コウ
菊池日菜子 小山紗愛 阿部久令亜 尾杉麻友・寛 一 郎 波岡一喜 安藤玉恵 丘みつ子
原作:佐藤正午「月の満ち欠け」(岩波書店刊)
脚本:橋本裕志
監督:廣木隆一
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